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綱不知海岸の高温石英/ベータクォーツ
青森県の今別町で舎利石探しの傍らに採取した高温石英です。 普通 "水晶" あるいは "石英" と聞いて真っ先にイメージする姿というと、恐らく先端の尖った六角柱の結晶が殆どだと思います。 しかし彼らのように柱面を著しく欠いた特徴的な結晶形の者も存在します。 それが約573~867℃の高温条件で晶出した『高温石英』です。 今別の海での遭遇率はうんと低く、そういった意味では舎利石よりも貴重な存在です。 思えば私が舎利石拾いを始めたのはホームグラウンドである近所の海岸で高温石英を採取していたことに端を発します。 波打ち際の砂利溜まりで高温石英を拾い集めていたときのこと。 ごくごく稀に『表面がブツブツ』『内部に半透明の核を有する』不思議なメノウを発見することがあったため選別して集めていました。 後に詳細を調べたところその特異なメノウは舎利石であることが判明。 感銘を受けた私は舎利石の本場である青森県今別町へ足を延ばすに至ります。 そして憧れの地で舎利石を採取する中、ごくごく稀に遭遇する特異な石英…。 まさかこんなところでも高温石英を拾い集めることになるとは思いもしませんでした。 遠く離れた地でもこの見慣れた両錘十二面体と対面できるのは本当に嬉しいです。
鉱物標本 7 SiO₂ 青森県テッツァライト
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H海岸の高温石英/ベータクォーツ
とある海岸で採取した高温石英です。 波の作用で摩耗が進んでおり、角が落ちたり完全な球形となった結晶がほとんどです。 ここに形の良いものだけを厳選しました。 普通 "水晶" あるいは "石英" と聞いて真っ先にイメージする姿というと、恐らく先端の尖った六角柱の結晶が殆どだと思います。 しかし彼らのように柱面を著しく欠いた特徴的な結晶形の者も存在します。 それが約573~867℃の高温条件で晶出した『高温石英』です。 H海岸は高温石英の産地としてはまったく無名の地。 ですが周辺の地質環境から見て高温石英が発見できてもおかしくないと思い調査をしてみたのでした。 結果はこの展示のとおりで、ここでもまた素晴らしい結晶に出会うことができました。 一粒だけ気になる個体があり、なんと結晶内部に黄色く蛍光するインクルージョンを内包していたのです。 水磨作用により表面が磨りガラス状になっているため内部を覗き見ることができませんが、たしかにブラックライトに反応する包有物が確認できました。 真っ黒な個体に続き、今度は蛍光物質を含む高温石英の発見ときました。 国産の高温石英も奥が深いです。
鉱物標本 7 SiO₂ 日本テッツァライト
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O川の高温黒石英/ベータモリオン
O川で採取した異質な高温石英で、不純物を多量に含んでいるらしい漆黒の結晶です。 普通 "水晶" あるいは "石英" と聞いて真っ先にイメージする姿というと、恐らく先端の尖った六角柱の結晶が殆どだと思います。 しかし彼らのように柱面を著しく欠いた特徴的な結晶形の者も存在します。 それが約573~867℃の高温条件で晶出した『高温石英』です。 国産で黒色の高温石英など聞いたことがなくまさに暗黒物質ですが分かっていることや感じたことを記載します。 【弱磁性】 僅かに磁性を有しておりネオジム磁石に吸い寄せられる様子が確認できます。 このことから不純物の一部には磁鉄鉱やチタン鉄鉱が含まれているのではないかと思います。 【色】 一見すると光を寄せ付けぬ黒色不透明ですが透光性があり、強い光にかざすと黄褐色に透過します。 そのためどこか黒曜石やカンラン石、あるいはスズ石のような印象を受けます。 【母岩】 母岩は何らかの変成作用を受けたと思われる岩塊で、河原でごく稀に拾うことができます。 外観から内部に至るまですべてが黒色でまるで高温で焼け焦げたかのような印象です。 ネオジム磁石が反応するため弱磁性があります。 ひどく風化していて素手でボックリと割れることもあり、その断面には件の結晶が顔を覗かせています。 母岩の表面や断面には黄褐色の斑晶がキラキラと輝いており、これらは結晶化に至らなかった石英と思われます。 以上のことからこの黒色は母岩に由来するものであることが伺えます。 なので彼らのことを理解するためにはまず母岩の正体を知ることが肝心だと思いました。 しかしサンプルを集めようにも河原で時おり採取できる程度の遭遇率で、しかも起源となる露頭が分かりません。 おまけに露頭を探そうにも付近はクマの生息域…単独での調査は危険です。 何かを研究することって大変なんですね。
鉱物標本 7 SiO₂ 日本テッツァライト
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O川の高温石英/ベータクォーツ
O川で採取した高温石英です。 以前採取したD川よりも圧倒的に粒が大きいのが特徴です。 ここに形の良いものだけを厳選しました。 普通 "水晶" あるいは "石英" と聞いて真っ先にイメージする姿というと、恐らく先端の尖った六角柱の結晶が殆どだと思います。 しかし彼らのように柱面を著しく欠いた特徴的な結晶形の者も存在します。 それが約573~867℃の高温条件で晶出した『高温石英』です。 O川はヤマメやイワナが生息しており、近隣では有名な釣りスポットとして知られています。 そんな場所で河原を低姿勢で這いまわり続ける私の姿はさぞ異質だったことでしょう。 釣り人からの応援もあって入手することができた珠玉の結晶たちです。 何よりも粒が大きく、それでいて透明度も高い。 不透明な個体も混ぜていますが、まるで茹でた里芋のようなぬるりとした質感が面白いです。 小粒な結晶はとても可愛らしく、相応に形状も整っています。 水磨作用により全体が磨りガラス状になった結晶など特にお気に入りです。 致命的な応力が加えられたのかクラッシュビーズのように白濁した結晶もあります。 大雨で川原が荒らされ、ひっくり返った低木の根本から見つけました。 どの結晶にも味があり一粒一粒にエピソードがあります。 今後もより面白い高温石英を求め、ひた向きに下向きに採取を継続して参ります。
鉱物標本 7 SiO₂ 日本テッツァライト
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シリマナイト/珪線石
シリマナイトはカイヤナイトおよびアンダルサイトと同質異像の鉱物です。 すなわち他の2種と化学組成は共通するものの、高温の環境下で生成されるためまったく異なる性質をしています。 「藍晶」のカイヤナイト、「紅柱」のアンダルサイトと違い唯一和名に色がありません。 シリマナイトにも青や黄色などカラーバリエーションは存在しますが、主成分はケイ酸アルミニウムであるため基本的には無色透明。 そのため多色性にも優れた両者と比較するとシンプルな印象を受けます。 私のシリマナイトもややグレイッシュながらほぼ無色透明で、他の2種のような鮮やかはありません。 しかしこの混じり気のない姿は美しいものであり、高潔な水晶のように胸の透く思いがあります。 結晶形も非常に整っており、対称性に優れた両剣型の結晶は見事としか言いようがありません。
宝石 鉱物標本 7 Al₂SiO₅テッツァライト
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まるで天然のヘキサゴンカット/O山地の高温石英
新たに発見した採取地、××川水系で入手した高温石英のひとつです。 縦横の大きさは6×7㎜ほど。 損傷により奇しくもヘキサゴン形のカットストーンに見えるというユニークな一粒です。 高温石英とは約573~867℃の温度条件で晶出した特殊な石英のことを指します。 通常の石英との違いはその外観に現れており、六角錘を2つ合わせたような形状が特徴となります。 今回採取したこちらの石は比較的透明度が高く結晶形も整っているのですが、残念なことに頂点部分が片方失われていました。 恐らくは急流を下る過程で幾度となく打ちつけられ、ついには割れてしまったのでしょう。 しかしその断口がテーブル面のように平坦であったため、高温石英特有の結晶形も相まり、まるで研磨された宝石を思わせるフォルムに仕上がっていたのでした。 こんな見た目なものですから、初めは誰かが指輪の石を落としたのかと思ってしまいました。 試しに仮留リングにセットしてみるとまさに宝石付きの指輪そのものです。 これぞ偶然が生んだ奇石。 欠点も極まるともはや芸術ですね。
宝石 鉱物標本 7 2020年テッツァライト
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チェンバーサイト/チェンバース石
原産地バーバーズヒルのライラック色チェンバーサイトです。 石の愛好者以外には全くと言っていいほど馴染みのない存在でありますが、テキサス州チェンバーズ郡で発見されたことに因んで命名された鉱物です。 結晶形はご覧のとおり、立方晶系と見紛うばかりの見事な四面体を成すのが特徴。 ピラミッドやテトラパックを思わせるユニークな形状をしていますが、当然ながらこれも人の手の加わっていない自然物です。 ましてや古代文明の人々が創造した遺物などでもありません。 正真正銘の天然結晶であります。 モース硬度は水晶と同等の7を有し、なおかつ透明で美しい外観をしているため宝石たり得る素質を備えています。 しかしながらこの石は如何せん小粒な原石が多く、研磨するには少々大きさの足りぬものばかり。 かく言う私のチェンバーサイトも数ミリほどしかありません。 いつかもっと大きくて見応えのあるサイズの結晶に出会いたいものです。
宝石 鉱物標本 7 2015年テッツァライト
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D川の高温石英/ベータクォーツ
普通 "水晶" あるいは "石英" と聞いて真っ先にイメージする姿というと、恐らく削った鉛筆のような先端の尖った六角柱の結晶が殆どだと思います。 しかし彼らのように柱面を著しく欠いた特徴的な結晶形の者も存在します。 それが約573~867℃の高温条件で晶出した『高温石英』です。 思えば2020年3月上旬。 雪の融け残る山間を訪れ、川底の砂泥からこの特異な結晶を見止めた瞬間から探求が始まります。 https://muuseo.com/tezzarite/diaries/11 それから長閑な谷川に通い詰めること数ヶ月。 最初の漁り場から上流1㎞ほどの範囲を探しまわり、ようやく数粒の理想的な結晶を見つけることができました。 まずは大きさ。 見つかる結晶は精々1~3㎜程度といったものが殆どでしたが、1枚目の標本は堂々た5ミリ級。 6枚目の上部に映っている結晶に至っては軸長6㎜にも達していました。 次に透明感。 実は5㎜以上の結晶にもちょくちょく遭遇したですが、そういった個体の悉くが亀裂もしくは不純物だらけ。 お世辞にも美しいとは呼べぬものばかりでした。 そんな中、大きさと透明度を兼ね備えた彼らは奇跡の存在であります。 加えて形状バランス。 結晶面のひとつひとつがほぼ均等な大きさで揃っており、結晶軸にも偏心がありません。 そのため上下の六角錐が鏡写しになっていると錯覚するほど対称性に優れています。 また多少の欠けこそあるものの致命的な欠損には至っておらずソロバン玉のシルエットはしっかり保たれています。 総じて様々な要素が小高く纏まった合格品。 かの有名な千本峠産にも匹敵する美結晶であると思います。 これまでは形が綺麗なのに極小サイズだったり、5㎜以上だけれど欠けが多かったり…といった調子が殆どであったものですから、見つけた瞬間は最高に嬉しかったです。 山が育み川が運んだ水の結晶。 恵んでくれた自然に感謝です。
宝石 鉱物標本 7 2020年テッツァライト
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ペトロレウムクォーツ/石油入り水晶
水晶(石英/クォーツ)といえば誰もが知る鉱物の代表格で、今日までに多種多様な種類が発見されています。 色によって宝石名が変わるだけでなく、内包する不純物によって呼び名が変わることもバリエーションが豊富となった一因です。 一例としてこちらの両剣水晶。 結晶化の過程で内部に鉱物油を包有したことから『石油入り水晶』などと呼ばれています。 この鮮黄色の液体はハイドロカーボンを主成分とするものとされており、紫外線を照射することで青白く幻想的な蛍光を放つのでした。 さらに液中には炭化物らしき固形物と天然ガスと思われる気泡が浮かんでおり、結晶を傾けるとコロリと動く姿が確認できます。 太古の遺物が外界から隔絶され変容することなく保存され続けた様はコールドスリープさながらであります。
宝石 鉱物標本 7 2014年テッツァライト