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キュプライト仮晶マラカイト/孔雀石になった赤銅鉱
マラカイトは銅鉱床の侵食により生成される二次鉱物です。 例えば10円硬貨が錆びて緑青が生じるように、銅鉱物が風化されることで形成されます。 和名を孔雀石といい、その名のとおり孔雀の羽を思わせる豊かな緑色と模様が特徴です。 この発色は銅に由来するものであり、かつてはその鮮やかさから岩絵具や顔料といった着色剤に用いられていました。 こちらは赤銅鉱が風化し、やがて結晶全体がマラカイトへと変化した標本です。 マラカイトの結晶系は斜方晶系なので、本来であればこのような八面体に成長することはありません。 しかし元となった赤銅鉱が八面体結晶だったなら話は別です。 例え風化しても結晶の既形は残るためこのような「仮晶」という不思議なマラカイトができあがるのです。 私は自分の集める標本には整った結晶であることを求めています。 なので不定形塊状で産出することが多いマラカイトに関しては、この仮晶が私の嗜好を満たしてくれたのでありました。
鉱物標本 3.5~4 Cu₂CO₃(OH)₂ フランステッツァライト
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キプロスキュプライト/赤銅鉱
キュプライトはその名が示すとおり銅を含有する鉱物です。 化学組成はCu₂Oと不純物が少なく、なおかつ酸素原子1つに対し銅原子が2つ結合してることから高品位の銅鉱として扱われます。 英名はラテン語で銅を意味する"cupurum"に由来し、さらにcupurumは銅の古典的産地であるキプロスにちなむとされています。 まさか出会えると思わなかったキプロス産のキュプライト。 由緒ある古典的産地からの美しい結晶です。 昨今のキュプライトはロシア産の黒色不透明な標本が多く流通していますが、このアルマンダインガーネットのような色と透明感をキプロス産が備えているとは思いもしませんでした。 表面は酸化被膜にやや覆われていますが、それでも古典的産地の意地と底力を感じさせる素晴らしい一石でありました。
宝石 鉱物標本 3.5~4 2019年テッツァライト
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稲倉石鉱山の菱マンガン鉱/ロードクロサイト
遷移金属マンガンを主要成分とするため自色は春爛漫なピンク色。 このMnイオンに起因する色が最大の特徴であるためギリシャ語で "薔薇の色" を意味する『ロードクロサイト』という名が与えられました。 炭酸塩が単体の金属元素と結合していること。 そしてそれらが組み合わさり三方晶系という結晶構造を形成していることから、方解石を筆頭とするカルサイトグループに分類されています。 このグループの共通点として、明瞭な劈開性を有し、自形結晶・劈開片ともにしばしば菱面体を形成することが挙げられます。 そのため付いた和名が『菱マンガン鉱』。 菱鉄鉱や菱亜鉛鉱など、頭に "菱" が付く鉱物と同様の命名則であります。 こちらの石は、北海道の積丹半島に位置する『稲倉石鉱山』で産出した "桜マンガン" のカット石。 本来であればマンガンを目的に採掘される鉱石ですが、華やかな色調を見込まれて彼のように研磨が施されることがあります。 コロラド州やペルーを初めとする海外産の個体の方がより透明で煌びやかでありますが、このとおり国産の良品も柔和で愛らしいです。
宝石 鉱物標本 3.5~4 2015年テッツァライト