嘉永七年(1854年)作 村雨塗 吸物椀

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嘉永七年作の吸物椀です。箱書に「二拾客揃」と書かれていますが、私の手元には九客しかありません。元は十客入りの箱が二つあったものと思われます。パッと見には地味な塗りですが、よく見ると黒、茶、緑、黄色など様々な色漆が使われた手の込んだ塗りです。直径は11㎝とやや小型ですが、器胎も今の吸物椀ではまず見ない形で、画像4のように「糸輪はもちろん高台にまで変り塗を施す」という恐ろしく手間のかかるお椀になっています。こんな技術は世界中探してもどこにもありません。

「村雨塗」と書かれているので、「村雨」という名称の変り塗なのだと思われます。江戸期では塗師の名前が書かれていることは極めて稀ですが、作者は「清水重成」という方のようです。蓋裏には注文主と思われる松尾氏の名前と花押が書かれています。

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