トヨタ・スポーツ800

初版 2023/08/20 10:28

改訂 2023/09/17 16:04

このカタログは復刻版が出回るほど有名なカタログですが、これは当時物で本物です。

超軽量構造と空気抵抗の少なさで、非力ながら優れた性能を発揮したことで知られ、愛好者からは「ヨタハチ」の通称で呼ばれています。

本田技研工業が1963年(昭和38年)から生産した、ホンダ・S500に始まるSシリーズとは好敵手として並び称され、1960年代の日本製小型スポーツカーの秀作として評価が高いです。

当時トヨタが生産していた最小のモデルである大衆車パブリカのエンジンとシャシを流用することを前提に、トヨタの系列会社の関東自動車工業で1962年(昭和37年)で開発に着手しました。

当初は「パブリカ・スポーツ」の名称で開発が進められ、非力なパブリカ用エンジンで高性能を確保するため、航空機さながらに徹底した軽量化と空気抵抗の抑制が図られました。このためオープンボディながら難易度の高いモノコック構造を採用し、市販型でも重量は僅か580 kg に抑えられています。

関東自動車工業の回流水槽で研究を重ねるなどして、空気抵抗の低減を目指したデザインを企図した結果、徹底して丸みを帯びた、全長3,580 mm ×全幅1,465 mm ×全高1,175 mm という小さな2シーターボディとなりました。空力対策としてヘッドランプをプラスチックでカバーしたその造形は同社の2000GTでのフォグランプ処理を彷彿とさせますが、実際には相似を狙った訳ではないようです。

メカニズムは、ほとんどのコンポーネントをパブリカからの流用、もしくは強化で賄っていました。フロントを縦置きトーションバー・スプリングのダブルウィッシュボーン独立、リアをリーフ・リジッドとしたサスペンションの基本レイアウトもそのままです。ブレーキもまだ前後ドラムでしたが、シフトレバーはフロアシフト化されていました。

パワーユニットは、当初、パブリカ用のU型(空冷水平対向2気筒OHV・700 cc)エンジン流用が考えられていましたが、最高速度150 km/h 以上を企図した性能確保には非力であり、約100 cc の排気量拡大とツイン・キャブレター装備によって、790cc、45ps(エンジン形式は2U型)としました。それでもまだ非力でしたが、空気抵抗係数0.35を誇る超軽量空力ボディの効果は大きく、155 km/h の最高速度を達成しました。同時期にDOHCの高回転高出力エンジンを700 kg 級の車体に搭載したホンダ・S600とは、対極的な発想に位置します。

1965年(昭和40年)4月から市販されました。東京地区標準販売価格は59.5万円で、比較的廉価に設定されていました。ホンダS600の56.3万円と大差なく、当初から競合モデルとして考えられていたことが伺われます。

しかし、小型といえど2シーターのスポーツカーが大量に売れる程の情勢には至っておらず、日本国外への輸出もほとんど行われなかったため、1969年(昭和44年)10月の販売終了までの累計販売台数は3,131台に留まっています。

しかしこの車はもともと売るつもりで作った車ではなく、パブリカの開発が終わり、次のカローラが始まるまでの手慰みにやった実験的な作品に過ぎなかったといいます。パブリカのコンポーネントを流用したのも、製品化予定のない車には会社の設備を割けなかったためでした。しかし、1962年の東京モーターショーに出品したところ、思いがけぬ反響があったために、販売部門からの要望で製品化することになったという事です。輸出がなされなかったのも、当時の日本に合わせたパブリカのコンポーネントでは、アメリカの道路を高速で飛ばすような使い方に耐えられないと判断したためという事です。

旧い車のカタログやミニカーやレコードなどをコレクションしてきました。たくさんの方々に見てもらえたらいいなと思っています。
少しづつ展示して参りますので宜しくお願いします。 

Default
  • File

    tomica-loco

    2023/08/20 - 編集済み

    ヨタハチ

    File
    返信する
    • File

      kyusha_fan

      2023/08/20 - 編集済み

      こんばんは。私が子供の頃はたまに見てましたね。シルバーが多かったかな?どちらかと言えばホンダSシリーズの方が見てましたが…。同時期のマツダコスモスポーツはもっと見ませんでした。更にTOYOTA2000GTに至っては全く見る機会はありませんでした。TOYOTA2000GTは当時から国産のスーパーカーでしたね。車もスーパー、値段もスーパーでした。

      返信する
  • File

    とーちゃん

    2023/09/17 - 編集済み

     まさに、
    ライトウェイト・スポーツ
    ですね。

     サイズ的には、
    カプチーノと並べても
    大差がありませんね。

     タイムマシンがあったら、
    新車で手に入れたい 一台です。

     記憶違いだったらすみません、
    タルガトップの採用は、
    本家とされる ポルシェよりも
    早かったのでは?

    返信する
    • File

      kyusha_fan

      2023/09/17

      とーちゃんさんコメント有難うございます。
      そうですか。タルガはポルシェより先ですか。それは知りませんでした。私もこんな楽しそうな車欲しいですね。

      返信する
  • File

    sat-2019

    2023/09/17 - 編集済み

    トヨタの水平対向エンジンのスポーツモデルは、86が出るまでS800が唯一でしたね。
    初めて水平対向エンジン車と知ったとき「スバル以外でも作っていたんだ〜」と感心したことを思い出しました。

    返信する
    • File

      kyusha_fan

      2023/09/17

      sat-2019さんコメント有難うございます。
      そうですね。水平対向エンジンと言えば、ポルシェやスバルというイメージが強いですが国産車の他メーカーも昔から研究されてたんですよね。

      返信する