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Placoparia tournemini
本種はイベリア半島一帯で広く産出する。 近縁種まで含めれば、チェコや英国、さらにモロッコでも多産するので、かなりの成功を収めた種類だといえる。 体制も一風変っていて、カクカクした感じの肋のある胸部や、弧を描くように丸まった尾部のトゲ、顆粒に覆われた目のない頭部など、一目でそれとわかるほど特徴的だ。 今回手に入れた標本は、小さいけれども色合いや質感がシックで、フランス産の美点がよく出ているように思う。 全長:22mm
Traveusot Fm. MORD La Dominelais, Britany, Francektr
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Ectillaenus giganteus
本種はフランスのほか、スペインやポルトガルでも産出する。 イベリア半島一帯から広く産出するといってもいいだろう。 私はあのへんのものはフランス産で集めたいと思っているので、手頃な標本が入手できたのはよかった。 それともうひとつ、この標本のいいところは、目の存在が確認できることだ。 だいたいにおいて自在頬が欠けている標本が多いので、いったい目があるのかないのか明確でなかったが、これを見てギガンテウスには目があることがはっきりした。 ちなみに、チェコで産出する近縁種の Ectillaenus katzeri だが、こちらは確かに目がないので、盲目三葉虫の仲間に入れてもいいだろう。 英国の Ectillaenus perovalis も調べてみたが、これは目があるのかないのかはっきりしなかった。 全長:61mm
Unknown MORD Bain de Bretagne, Francektr
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Asaphus kowalewskii
FFストアによれば、けっこうな人気種らしい。 そういえば、SPPLにも本種だけは十分すぎるくらいの在庫がある。 まあ、それだけありきたりなので、とくに欲しいとも思わなかった。 ところが、ちょっとしたきっかけで手に入れてみると、なるほどこれが人気があるのも頷ける。 なんということはないけれども、いつまでも見ていられる。 飽きがこない。 見れば見るほどそのフォルムに引き込まれる。 この標本は本体が母岩の端に寄りすぎていて、標本箱の縁に当って目が折れる危険性があるので、紙粘土で母岩を延長した。 これだけやっておいて、ようやく安心して眺めることができるようになった。 ところで、日本人ならだれでもこれを見るとカネゴンを連想するわけだが、私はカネゴンの回を見逃していて記憶にないので、このたびアマプラで視聴してみた。 古いことは古いが、まったく古びていない。 傑作也。 全長:47mm
Asery level MORD Vilpovitsy quarry, St. Petersburg region, Russiaktr
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Pseudobasilicus lawrowi
全長45㎜の子供個体。 母岩とのマッチングはいいし、形も整っているので、小さくても気にならない。 考えてみれば、私のもっているロシア三葉虫は小さいものばかりだ。 理由は簡単で、そうでもなければとても手に入れられないほど、ロシア三葉虫は高価なのである。 Pseudobasilicus は昔は Ptychopyge の仲間に入れられていて、たしかに見た目もよく似ているのだが、どういうわけかいまは Pseudoasaphus の仲間に入っているようだ。 また Pseudobasilicus にも二種類あって、P. lawrowi と P. planus とを比較すると、前者のほうが頬棘が太くて長い、額の小さい角のような突起が明瞭、頭蓋前方が細長い、尾板の畝がカーブしている、などの違いがあるとのこと(SPPLの図鑑による)。 あと余談だが、本種の名前の元になった Basilicus というのは、イギリスで産出する三葉虫で、ソルターの画期的な論文「英国の三葉虫」でも大きく扱われている。 かなり大型化する種のようで、tyrannus の種小名が示すとおり、威風あたりを払うといった風情だ。 (追記) ソルターの本から Basilicus tyrannus の画像を追加しました。
Aseri Horizon MORD Volkhov river, St. Petersburg region, Russiaktr
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Ogygiocarella debuchii
最初に発見された三葉虫で、当時はカレイと間違えられたという。 全三葉虫のうちでももっとも有名なもののひとつなので、私もいくつか買い求めたが、けっきょく手元にはこれしか残らなかった。 サイズは97mm で、保存状態はまずまずだが、本種においては、標本自体の古さがある種の魅力になっている。 これに昔の書体で書かれた古びた手書きの標本カードがついていたら最高なのだが。 産地情報はいちおう下に記したが、ウェールズの地名は読みがむつかしくてなかなか覚えられない。 (補足) Ogygiocarella には debuchii と angustissima の二種類ある。 尾板の畝が12止まりだったら debuchii、13から16あったら angustissima で、後者のほうが新しい地層から出るらしい(R. Kennedy説)。
Llandelian Stage, Llanffawr Mudstone Group MORD Builth Inlier, Wales, UKktr
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Scotoharpes spaskii
18㎜、オルドビス紀、ロシア産。 Harpes の仲間はいくつか買い求めたが、手元に残ったのはこれひとつだけ。 サイズのわりに目が大きいのは若い個体だからだろうか。 胸節はそれでも18あって、すでに成体と変らない(最多で20節)。 この標本はやや反り気味だが、そのために小さい尾板まで観察できるのはありがたい。 ハルペスの仲間は、部分化石なら世界のあちこちから産出するが、完全体が出るのはほぼモロッコとロシアに限られる。 そういう意味でも本種は貴重だ。
Aseri Level MORD Vilpovitsy Quarry, St. Petersburg region, Russiaktr
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Hoplolichas plautini
Terataspis を別格とすれば、本種ほど怪獣を連想させる三葉虫はほかにない。 なかにはサボテンのように全身がトゲで覆われているのもある。 本来ならもっともてはやされてもいいような気がするが、あまり人気がなさそうなのは、同類のHoplolichoides が多産するためだろうか。 手持ちの標本は、形はともかくとして、外殻を覆う顆粒が非常に不気味で、その不気味さがじつに心地よい。 不気味で、しかも心地よいという、アンビヴァレントな三葉虫。 この標本は到着時にツノが折れていたの修復した。 ほかにもちょっとしたかすり傷はあるが、100ドルで買えたのはある意味ラッキーだった。
Aseri Horizon MORD Volkhov river, St. Petersburg region, Russiaktr
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Neseuretus tristani
オルドビス紀、フランス産。 カリメネの仲間で、頭の前方に飛び出したクチバシのような突起が特徴。 状態はあまりよくないが、これでもフランス産のなかではましなほうだ。 好意的な目で見ればフランスらしいシャビーでシックな味わいがあるように思うのだが、どうか。
unknown MORD Ecalgrain, Francektr