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Circles “More Circles”
これまた、「謎のクラウトロック」で、Dierk LeitertとMike Bohrmannと言うマルチ奏者から成るデュオCirclesを紹介します。先ずは、簡単なバイオグラフィーを、クラウトロックのガイド本”Crack In The Cosmic Egg”の著者のAlan Freemanのライナーノーツから紹介していきます。1970年後半〜1980年には、多くの「ポスト・クラウトロック」なる独逸のバンドが出てきた訳ですが、その殆どが地下活動をしており、小さな自主制作レーベルやDIYでレコード等を出していた為、リスナーにまで届きにくかった訳で、Circlesもそんなバンドの一つでした。Circlesは、1983年に、独のFrankfurtで、Dierk Leitert (Synth, Sequencer, Drs, B, G, Vo, Sax, Flute)とMike Bohrmann (G, B, Synth)のマルチ奏者の2人によって結成されており、時にゲストが参加していたとのことです。この手のバンドは、Cluster, Harmonia, Lilienthalと言った1970年代の音楽を1980年代に持ち込んで、新たな音楽を目指していました。その為か、Circlesは、最初はMichael RotherのギターワークやCamera Obscuraのアンビエントなどからも影響を受けていましたが、時代的には、Throbbing Gristle, Nurse With Wound, Ilitchなどの現代的なグループとの共通点が見られるようになってきました。Circlesは、彼等自身の小さなレーベルEinhorn Musicから自分達の作品やポスト・ニューウェーブの作品をリリースしています。また彼等は、別ユニットもやっており、Kofler & LeitertやDas Organisierte Chaos (DOC: このバンドはリズムセクションも強化したサイケなスペースロックを演っているそうです。私は未聴)がそうです。彼等は活動期には3枚のアルバムをリリースしており、その内のセカンド・アルバムが、今回、紹介する”More Circles”で、1984年作です。因みに、ずっと後(2016年)になって、独レーベルBureau Bが、未発表音源集集”Structures”をリリースしています。 それで本作品について紹介したいきましょう。この作品は1983年10月〜1984年4月に作製されています。Dierk LeitertとMike Bohrmannの2人のデュオの他に、A4 “Tripletwin”ではGerd Poppe (Drs)が、B1 “Trio Atonale”ではBuschi B (Trumpet)がゲスト参加しています。まあ、全体の印象としては、クラウトロックと言うよりも、1980年代前半の地下音楽(ノイズやアンビエント、或いははちょっとした実験的音楽)を想起させますね。そう言う意味では、Harmonia, Cluster, Fripp/Eno, Nurse With Wound, Throbbing Gristle, Chrome, Eroc, Heldon, Conrad Schnitzlerなんかとのミッシング・リンクとも言えそうですし、もっと言えば、日本のD.D. Recordsと言ったプログレとニューウェーブやインダストリアル・ミュージックを繋いだ地下カセットレーベルなんかの作品にも共通点があるようです。全体的にはシンセの音が多いですが、ギターやテープ或いはリズムマシンなどの音も聴かれ、ポップと実験の間を行き来してます。そう言う耳で聴くと、本当に面白い音楽だと思います。色んな音楽の要素や手法が取り入れられており、自由な発想で曲が作られているので、全編楽しめます❗️こんな音楽が埋もれていたなんて!スペインのMental Experienceが発掘してくれたのは、本当に有り難いです。なので、皆さんも是非聴いてみて下さい! A2 “Several Steps Leading Through Different Rooms” https://youtu.be/fOO2_cn0N74 A4 “Tripletwin” https://youtu.be/k1ZOdQNiR2o B2 “Tranquilo Gonzales” https://youtu.be/k1ZOdQNiR2o #Circles #MoreCircles #EihornMusic #MentalExperience #Post-Krautrock #SecondAlbum #1984 #DierkLeitert #MikeBohrmann #Electronic #Guitar #Muti-Instrumentalist #Industrial #ProgressiveRock #Ambient #German #Duo
Krautrock, Experimental Mental Experience (Einhorn Music) 3707円Dr K2
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The Nazgûl “s/t”
これまた、謎な作品です。元々、The Nazgûlは、独逸のバンドらしいのです。この作品は、関係者であるMad TwiddlerことTony Robinsonが1975年以来、独逸ケルンにて、彼の個人レーベルPyramideからリリースする為に尽力してきたのですが、実際には、1997年にCDとして独逸のPsi-Fiレーベルからリリースされています。そして、The Nazgûlの音楽は、コズミックかつクラウトロック的でアヴァンギャルドなものだそうでしたが、長い間、無視されてきました。そこで聴かれるヴォイスは、T.G./Psychic TVのGenesis P-Orridgeに匹敵する位、ダークで移ろい易いものであったそうです。まあ、それは置いておいて、先ず、The Nazgûlのメンバーと担当楽器を紹介しておきます。Frode (Drs, Perc, Gong), Pippin (Perc, Bells, G, Trumpet), Gandalf (Perc, Synth, Organ, e-Piano, B, G)の3人で、皆、偽名のようで、先述のRobinsonは録音を担当していたとのこと。また、本作品のライナーノーツを書いているAlan Freemanによると、メンバーのFordeは、Robinsonと一緒にDzyanの作品”Electric Silence”に関わっていた、実験的パーカッショニストPeter Gingerのことだと言っています。そして、Pippinは、Robinsonのコラボ・プロジェクトFuerroteやソロで知られていたNeil Andersenだろうとのこと、Gandalfは、恐らく「スタジオの魔術師」と呼ばれていたTony Robinson自身のことみたいです。この作品が録音されたのが、1970年代中盤であり、その頃と言えば、クラウトロックと同時にインダストリアル・ミュージックも交錯していた時期ですし、また、1960年代〜1970年代の地下サイケで活動していたGroupe de Recherches Musicalesの音楽に近いと評されていました。更には、Kluster, Karlheinz Stockhausen, Taj-Mahal Travellers, Nurse With Wound, Throbbing Gristle, Lustmord, Cozmic Corridorsとの共通点や同様のコンセプトを想起させるものだとか。そんな「謎」なThe Nazgûlの唯一の音源が、今回、スペインのレーベルMental Experienceの尽力で、リマスターしたヴァイナルとして再発されたと言う訳です。 それで内容なんですが、A面B面とも2曲づつと言う長尺の曲から成ります。クラウトロックと言うよりも、アブストラクトな実験ノイズ・ミュージックと言った趣きです。A1 “ The Tower Of Barad-Dûr”は、時に弦楽器の弦を爪弾く音も聴こえますが、基本的にはダーク・ドローンのような不穏な低音が支配している曲です。A2 “Shelob's Lair”は、多分ベースの音が単一の音程を弾き、それとオルガンの音がノンビートでせめぎ合っており、そのバックにパーカッションらしき音が聴こえると言う構造の曲。もう不穏でしかないよぉ。次にB面にいきます。B1 “The Dead Marshes”は、一番「音楽的」な曲で、ディレイを効かせたパーカッションと弦楽器(?)の音が鳴り響き、トランペットが唸りを挙げており、延々とジャムっています。そう言う意味では、まだクラウトロック或いはフリー・ミュージック的とも言えますね。B2 “Mount Doom”は、シンセの電子音なのでしようか、のたうち回る低音が、初期インダストリアルっぽく、そこに不明瞭なヴォイスらしき音やノンビートのパーカッションの音が絡み、結果として、「ダーク・アブストラクト・ノイズ」とも呼べるような曲に仕上がっています。後半はリチュアルにも展開しています。まあ、しかしながら、こんな音楽をクラウトロックとしては提示は出来ないように思いますよ❗️もはや、早過ぎた「インダストリアル・ミュージック」と言っても良い位ですから。そこら辺に興味のある方は、是非とも聴いてみて下さい(因みに、LPにはDLコードが付いていますよ)❗️ https://youtu.be/9vqvjw4pJI8 #TheNazgûl #MentalExperience #Pyramid #Psi-Fi #Krautrock #NoiseMusic #Industrial #Abstract #Reissue #Remastering #Forde #Pippin #Gandalf #PeterGinger #NeilAndersen #TonyRobinson #GermanBand
Experimental / Drone / Industrial Mental Experience / Pyramid (Psi-Fi) 3707円Dr K2
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Asmus Tietchens “Geboren, Um Zu Dienen”
独逸の電子音楽/実験音楽の生き証人にして多作家Asmus Tietchensが、何と!あのスペインのDiscos Esplendor Geometricoがからリリースした作品”Geboren, Um Zu Dienen”が登場です。Asmusの場合、どこから出しても驚かないですが、これは盲点でた。彼のバイオグラフィーは前回、書いてありますので、そちらを参考にして下さい。今回は、スペインのインダストリアル・マスターEsplendor Geometricoのレーベルからと言うことなのか、全体的に無機質で所謂「インダストリアル」な音作りをしています。ホワイトノイズを用いたリズムや機械音を思わせるシンセ、ループし、律動するシーケンスなど、徹底していますね。またB4には童謡「蝶々」のカバー”Deutsches Kinderlied”が入っています。Asmusは活動歴が長過ぎて、かつ電子音楽なら何でも出来るスキルがあるので、時代時代や作品によって内容が異なることから、どうも正体が掴み辛いです。そう言う理由からか、日本では今ひとつ人気が無いようにも思えるのですが、どうなんでしょう?(因みに私が初めて聴いたのは、全編、カセットテープのスクラッチ音だけからなる作品でした) 今回のタイトルは「生まれよ!奉仕する為に!」と言う意味深なものですが、どうなんでしょう?ジャケ写の胎児のミイラに関係あるのでしょうか? そんなことを夢想しながら聴くのも面白いかも。独逸電子音楽界において、作品量やそのクオリティではAsmusとConrad Schitzlerはやはり別格ですね。あっそれから、Asmusの絶対信頼を受けているプロデューサーOkko Bekkerは本作でも関わっています。もし、インダストリアルと電子音楽とのミッシングリンクに興味がある方は、是非とも聴いて欲しい一枚です。どうですか? “Mein Erstes Erlebnis” ~”Zu Viele Dicke Kindern” https://youtu.be/gY0Uzlh-iUI “Zweites Maschinentraining” https://youtu.be/7e1Q6G72wPQ #AsmusTietchens #Geboren,UmZuDienen #DiscosEspledorGeometrico #Industrial #ElectronicMusic #Rhythm #MissingLink #OttoBekker
Electronic, Experimental / Industrial Discos Esplendor Geometrico 不明。Dr K2
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Florian Fricke “Die Erde Und Ich Sind Eins - I Am One With The Earth”
出ました!ジャーマン・ロックの最左翼Popol Vuhの首謀者Florian Frickeのソロアルバムです。元は独逸のLorck Publication Münchenから出ていたものをスペインのWah Wah Recordsがリマスターして再発しています。最初こそ、Moog Synthを使ったスペーシーなサウンドを提示してましたが、その後は反電子音楽的なアプローチを行なってきたPopol Vuhです。Florianはアコースティック・ピアノで作曲するようになり、そのような方向に向かったのだとか。簡単に彼のバイオグラフィーを少々。彼は、子供の頃からピアノを習っており、ピアノで作曲もしていました。18歳の時、ある種の新しいフリージャズのような音楽を志向、同時期に、アマチュアの短編映画を撮ったり、そのサントラを作ったりしています。その時に後に彼のプロデューサーとなるGerhard Augustinとミュンヘンで会っています。そして、1967年に独逸映画監督のWerner Herzogと出会い、Florianは1967年作の最初映画”Lebenszeichen”に出演、その後は1972年作”Aguirre, the Wrath of God (アギーレ/神の怒り)”や1976年作”Heart of Glass (ガラスの心)”、 1979年作”Nosferatu (ノスフェラトゥ)”などにサントラを提供しています。1970年に、Florianは、Holger TruelzschとFrank Fiedlerと共にPopol Vuh(この名前はK'iche(キチェ)族の神話Popol Vuhから取られています)を結成、G/DrのDaniel Fichelscherも加わりますが、亡くなるまでFlorianがリーダーでした。また、Florianは独逸のバンドともコラボをやっています。1972年にはTangerine Dreamの作品”Zeit”で、またAmon Düül IIのRenate Knaupとも共作しており、1973-1974年では、Danielと一緒に、以前Popol VuhのギタリストですあったConny VeitのバンドGilaのメンバーとしても活動しています。1970年代初頭、Florianは音楽療法に集中しており、その療法を「身体のアルファベット」と呼んでいました。また元メンバーであったFrank Fiedlerは、カメラマンでもありましたが、彼と一緒にIsrael, Lebanon, Mesopotamia, Morocco, Afghanistan, Tibet及びNepalなどのスピった場所で映像撮影を敢行しています。しかしながら、2001年に、Florianは、57歳の若さで、ミュンヘンで心不全により亡くなっています。以上が彼のバイオグラフィーです。 それで、本作品ですが、初めて聴いた時、これは「声明」だと感じました!多分、声を素材に組み立てたのでしょうが、曖昧模糊或いは茫漠とした音像が聴き取れます。特にA面片面を全部使った曲”Gruppenseufzen Zur Versöhnung Der Erde Mit Dem Menschen”で著明です。確かにアンビエント「風」ではありますが、それにしては重いですね。独逸語が分かれば、ブックレットを介して、そのコンセプトが少しは分かるのかなとは思いますが、いかんせん読めないので、単なる感想文になってしまうことをお許し下さい。B面には2曲が収められていますが、2曲目の”Song Of The Earth”で漸く弦楽器の音が聴けますが、それまでの曲では基本的に多人数の声のみで曲が進行していきます。そこに何らかの「永遠性」みたいなモノがあるようにも感じます。ここら辺に、流行りかけていた電子音楽からワールドミュージックにシフトした彼の独自性も垣間見えますね。万人受けする音楽ではありませんが、チベットの音楽とかに興味のある方は一度聴かれた方が良いでしょう!しかし、スペインのレーベルWah Wah Recordsは渋い所を突いてくれますねぇ。侮り難しです。 ”Gruppenseufzen Zur Versöhnung Der Erde Mit Dem Menschen” https://youtu.be/1Jkd-8mlBVM #FlorianFricke #DieErdeUndIchSindEins #IAmOneWithTheEarth #WahWahRecords #LorckPublicationMünchen #PopolVhu #Voice #声明 #WorldMusic
Krautrock / Ritual Wah Wah Records (Lorck Publication München) 3900円Dr K2