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Henry Cow “Unrest”
ラスボスは後からやってくる。漸くHenry Cowの登場です。プログレ初心者の私としてはファースト・アルバムは入手していなかったので、それのミックス違いでリリースされたセカンド・アルバム”Unrest”を紹介します。Henry Cowは当時、ケンブリッジ大学の学生だったマルチ奏者のFred FrithとTim Hodgkinsonによって1968年に結成された英国の実験音楽グループです。結成から10年間は色々メンバーの移り変わりがありましたが、Chris Cutler (Dr), John Greaves (B), Lindsay Cooper (Bassoon, Oboe)は重要な位置にいました。彼等は反商業主義的なスタンスでいましたが、メインストリームの音楽産業とは手を切っていなかった為、その分、自由に実験的なことが出来てたそうです。当時はプログレの中に入れられてましたが、早晩、その枠に収まらず、追随者も許しませんでした。Henry Cowのバンド名は、長い間、米国の作曲家Henry Cowellから取ったとされてきて、その都度、メンバーは否定しています。Timによれば、当初はIn The Airと名乗ってましたが、特に意味はないそうです。1968年10月にHenry CowはAndy Powell (B), David Attwooll (Dr), Rob Brooks (G)が加わり、同年12月までこのラインナップで演奏していましたが、その後、Fred, Tim, Andyのトリオになります。その頃、Andyはキングス・カレッジで音楽について勉強しており、そこの常駐作曲家Roger SmalleyはSoft Machine, Captain BeefheartやFrank Zappaと言ったバンドから音楽の新しい文脈に晒されており、またRogerは彼等に、ロック・グループのために長く複雑な曲を書くというアイデアを吹き込んでいます。この頃、バンドはFredがB, AndyかDr, TimがOrganを担当し、数多くのライブをやっていました。1969年4月になると、Andyはバンドを脱退し、Fred (Vin)とTim (Kbd, Reeds)と言うデュオになっています。その後、二人はJohn GreavesにBとしての加入を説得し、仮のDrとしてSean Jenkinsも誘い、後の8ヶ月はこのクインテットで活動します。1971年5月にMartin DitchamがSeanと交代してDrを務めます。このメンツでも、Glastonbury Festival に出演しています。 1971年7月にMartinが脱退し、同年9月まではDr不在だったのですが、漸くChris Cutlerが、Drで加入して鉄壁のクインテットになり、そして彼等はロンドンに引っ越します。Henry CowはJohn Peelに気に入られ、1972年2月に所謂John Peel Session (正式名称はBBC Radio 1)に出演しています。1972年4月に、Henry CowはRobert Walkerのプロデュースで、Euripidesの”The Bacchae (バッコスの信女)”の音楽を担当しますが、これがハードワークで、この時期に木管楽器担当のGeoff Leighがメンバーに加わります。そして彼等は、Kensington Town HallとLondon経済大学でそれぞれ、Cabaret VoltaireとExplorers' Clubと言うのイベントをやりますが、この時にDerek Bailey, Lol Coxhill, Ivor Cutler, Ron Geesin, David Toop, Lady June & Smith.を招聘しています。特にDerek BaileyとLol CoxhillはHenry Cowを気に入ったみたいで、色んな面でサポートをしてくれるようになります。1973年4月にJohn Peel Sessionに出演した時、Virgin Recordsは彼等に興味を持ち、同年5月に契約を結びます。その2週間後に、Henry Cowはデビューアルバム”Legend (Leg End)”の録音に、OxfordshireのVirgin Records所有のManorスタジオにて取り掛かります。この時の録音作業もかなりのハードワークであったみたいですが、スタジオの扱い方が漸く分かってきて、この体験が大いなる収穫となります。なおこの時に録音された"Nine Funerals of the Citizen King"と言う曲は彼等の明確な政治的声明であったようです。一方、Virgin RecordsはFaustとの英国ツアーを計画してます。この時、Henry Cowはシェイクスピアの”Tempest”に基づいた演劇の為の音楽の準備を始めています。1973年12月にオランダ・ツアー中にGeoff Leighが脱退してしまい、代わりにクラシックの素養のある木管楽器奏者のLindsay Cooperが加入します。”Unrest”の録音は良い経験となり、LPの片面分は直ぐに出来ましたが、もう片面分はスタジオ曲過程の開発に多くの時間を割きました。1974年5月に、彼等はCaptain Beefheartと英国及び欧州ツアーをしていますが、この時に、彼等は単なるロックバンドに成り下がり、毎晩同じ曲を演奏していることに不平不満を感じるようになって、討論の結果、Lindsay Cooperを脱退させることになってしまいます。その後、1974年11月に Slapp Happy (Anthony Moore, Peter Blegvad, Dagmar Krause) は、セカンドアルバムを作成するにあたり、Henry Cowを誘いましたが、出来上がったアルバム”Desperate Straights”はほぼほぼSlapp Happyの作曲したアルバムとなり、2つのグループは全く似てはいないことに万人は驚いたそうです。それが縁で2つのバンドは合体します。まだまだ続きますが、バイオグラフィーはこのくらいにしたおきます。あと、Henry CowはRock In Oppositionと言うフェスに参加しており、これが一つのジャンルにまで認知されていきます。 それで、本作品”Unrest (不安)”ですが、それ程「不安」な音楽ではないです。あっ、それよりも初めに、この時のメンバーはTim Hodgkinson (Organ, Alto Sax, Clarinet, Piano), Fred Frith (G, Vln, Xylophone, Piano), John Greaves (B, Piano, Vo), Chris Culter (Dr), Lindsay Cooper (Bassoon, Oboe, Recorder, Vo)で、鉄壁の布陣です。内容はカンタベリー系プログレの一つの完成型と言えば良いでしょうか。複雑な展開を示す楽音が並んでいます。マルチ奏者が多いので、個々の楽器の音は判別出来ませんが、こう言う音楽は正座して聴くよりも流しっぱなしして聴いた方が、その良さが分かるようにも思えます。アコースティックな音楽も、偶には良いですよね?(最近は電子音楽ばかり聴いていましたから) 時々と言うか頻繁にスリリングな掛け合いがありますが、その間にはリリカルな旋律も。こんな音楽はどうでしょうか?(特にA3”Ruins”は長尺で聴きご耐えがありますね。) [full album] https://youtube.com/playlist?list=PL0ED24F132D2B290D #HenryCow #Unrest #RedRecords #VirginRecords #AvantRock #FredFrith #TimHodgkinson #ChrisCulter #LinsayCooper #JohnGreaves #RockInOpposition #Acoustic #SlappHappy
Avant-Garage Rock Red Records (Virgin Records) 不明Dr K2
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Heldon “Heldon: I (1974) Electronic Guerilla”
最早、集めているに等しいHeldonのファースト・アルバムです。私の持っている盤は、元々Richard Pinhasの個人レーベルDisjunctaから1974年にリリースされた音源をリマスターしてCobraから1979年にリリースされたブツです。この時の参加メンバーは、Richard Pinhas (AKS Synti, G), Alain Renaud (G), Patrick Gauthier (Piano, VCS3), Georges Grumblatt (Synthy VCS3), Coco Roussel (Dr), Pierrot Roussel (B)で、A面1曲目にはRichardの恩師にして、20世紀の大哲学者Gilles Deleuzeの朗読が入っています。もう何度も書いていますが、Richardの音楽は、(Gilles Deleuzeの)哲学とSF文学のごった煮から抽出されたもので、それを実践するのがHeldonであった訳です。全体を支配するAKS SyntiとVCS3のシンセ音が、もう気持ち良過ぎます。それに絡むロングトーンのギターも素敵です。この後もメンバーの入れ替えはありますが、Richardがいると言う一点で、Heldonは成り立つと言うことです。そこら辺は、Robert FrippとKing Crimsonの関係に近いでしょうか。この頃はまだ音が未整理なところもありますが、当時、これだけのシンセを使ったバンドは限られていますね(まあ、独逸のクラウトロック系のバンドは別として)。私は仏語は全くダメなので、Gilles Deleuzeの朗読で何を語っているのかはよくわかりませんが、この曲が、このアルバムのハイライトですね(A面一曲目ですが 笑)。裏ジャケにデカデカと載っているのがGilles Deleuzeでしようか?まあ、ゴリゴリの哲学者が、ロックに参加すると言うのも、今ならあり得ますが、当時としては異例だったのでしょう。まあ、それはそれとして、兎に角、電子音楽の中毒性がこのアルバムにはあります。そんなことを思い出させてくれる作品になっています。皆さんも、このシンセ中毒になってみて下さい。ではでは。 https://youtu.be/XS0WuJrp_4I #Heldon #ElectronicGuerilla #Cobra #ElectronicMusic #Synthesizer #RichardPinhas #GillesDeleuze #Disjuncta #FirstAlbum
Progressive, Electronic Cobra 不明Dr K2