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Nash The Slash “And You Thought You Were Normal”
またまた来ました、加の「1人Residents」或いは「覆面ヴァイオリニスト」ことNash The Slashを入手しました!今回は、5枚目のアルバム”And You Thought You Were Normal”です!ですが、オリジナルではなく、再発盤なので、2枚組となっており、かつD面にはエッチングが施されていると言う、ちょっとお得なブツです。Nash The Slashのバイオグラフィーについては、既に書いてありますので、そちらをご参照下さい。今回も、元のアルバムは、彼自身のレーベルCut-Throat Recordsから1982年に出ていますが、私が購入したのは、先述のように、同じ加トロントのレーベルArtoffact RecordsとStorming The Baseとからの再発盤で、LP片面分ボーナストラックが付いており、かつD面にはエッチングが施されています。ボーナス・トラックと言う意味では、Bandcampのが一番多いのかな?今回も彼1人で制作されているようです(クレジットには書いてありません)。LP1にはA面5曲/B面6曲が、LP2にはC面4曲が収録されています。それでは、各曲をご紹介していきましょう。 ◼️LP1: ★A1 “Normal” (3:30)は、ディストーションを掛けたMandolin (彼はGを使わず、電気Mandolinにディストーションを掛けていますので、以下「DE-Mandolin」と表記)にディスコなマシンドラムとシンセが乗ってきて、時にSEなシンセ音も加わる曲で、シンプルなコード進行ですが、中々聴かせてくれます。 ★A2 “Pretty Folks” (3:32)は、いきなり彼の独特のVoとSynth-Bから始まりますが、強力なマシンリズムにシンセが乗ってきて、すぐさま、彼のポップな世界に引き込まれます。鉄琴も良い味を出しています。 ★A3 “The Hypnotist” (4:09)は、忍び寄るシーケンス・ベースにシンセやDE-Mandolinが乗るインスト曲ですが、ディレイを掛けたE-Vlnを弾きまくっており、一瞬「お前はHeldonか⁈」と突っ込みたくなります。 ★A4 “Citizen” (3:56)では、四つ打ちマシンリズムに、美麗なシンセと彼の切迫詰まったVoが入ってきて、極上のシンセ・ポップを楽しめます。間奏はDE-Vlnかな? ★A5 “In Search Of Prey” (2:16)は、太いSynth-Bのシーケンスとマシンドラムに、浮遊感あるシンセとピコるシンセが被ってくるミニマルなインスト曲です。 ★B1 “Dance After Curfew” (3:49)では、E-Vlnの爪弾きと重いリズムで、タイトルを繰り返す変調Voが入ります。あと彼は、DE-Mandolinを弾いているようです。手弾きシーケンスも冴えています。 ★B2 “Animal Jamboree” (4:06)は、重い持続音に「動物の鳴き声」風シンセが加わり、次第にリズムも入ってきて盛り上がるインスト曲です。 ★B3 “Remember When” (2:43)は、DE-Mandolinとシンセの浮遊から始まり、やがて手弾きシーケンスとシンセによるメロディも加わりますが、何処か悲しげな雰囲気です。 ★B4 “R.S.V.P.” (3:58)は、目まぐるしいシーケンスと彼のVoとストリングス・シンセから成る曲で、緩急の付け方が上手く、全く聴き飽きません。寧ろ、ダウンする音階パートがカッコ良いです。 ★B5 “Slag” (0:35)は、SE的シンセによるスケッチで、宇宙戦艦ヤマトの艦内のような感じです。 ★B6 “Memories” (3:33)は、ややアフリカンなマシンリズムに、重く暗めのシンセによるメロディが乗る曲ですが、これも悲しげなインスト曲になっています。 ◼️LP2: ★C1 “Vincent's Crows” (5:04)は、優しく悲しげなVoと、そのバックのゆったりしたマシンリズムと優しいシンセとSynth-Bから成る曲で、DE-Mandolinも冴えています。間奏のソロはE-Vln? ★C2 “Stalker” (5:18)は、切迫したシーケンスとSE的シンセに始まり、強靭なマシンリズムとDE-Mandolin及びシンセから成るインスト曲で、アレンジの上手さが良く分かりますし、カッコ良いです! ★C3 “Lake Ontario Suite (PT.1)” (1:24)は、優しく淡いシーケンスとシンセのメロディに溶ろけそうな小曲です。 ★C4 “Lake Ontario Suite (PT.2)” (2:04)は、Tangerine Dreamっぽいシーケンスに、軽めのマシンリズムと明るいシンセから成る曲で、本アルバムの最後に最適だと思います。 ★D: エッチング加工 本作品では、彼のVoが入っている曲が少なく、ちょっと残念な気もしましたが、逆に、インスト曲だと、演奏能力やアレンジ力がもろ分かってしまいますので、その意味では、彼の音楽の才能を存分に楽しむことが出来ましたし、それはそれで良かったと思います。まぁ、いつもの「Nash The Slash節」なんですが、一聴して分からせてしまう程の完成度とエキセントリックなアレンジが炸裂していますね。彼のトレードマークのE-Vlnが入っていたかどうか迄は分かりませんでしたが、それでも、やはり彼のポップネスをビンビン感じられ、傑作だと思います。もし、多少なりとも興味を持った方は、一度聴いてみてはどうでしょうか? https://youtu.be/-SrzEbbQ_vc?si=g1cd_ApEUnnC6aBC [オマケ: B1 “Dance After Curfew” live 1985] https://youtu.be/S6VKC1QXq1o?si=yf-M6Q3hMZk1IWt3 [BandcampのURLも貼っておきます] https://nashtheslash.bandcamp.com/album/and-you-thought-you-were-normal #NashTheSlash #AndYouThoughtYouWereNormal #ArtoffactRecords #StormingTheBase #2017年 #Cut-ThroatRecords #1982年 #Reissue #Remastering #2LPs #Etching #5ThAlbum #Electro #SynthPop #ElectricViolin #DistortedElectricMandolin #Synthesizers #JamesJeffreyPlewman
Synth Pop / Experimental Pop Artoffact Records / Storming The Base €13.95Dr K2
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Saboten (サボテン) “Floor Et Satie (フロアとサティー)”
サボテン、覚えている方はいるでしょうか?1980年代初頭の日本で、「サティーをエレキバンドで弾いたらどうなるか」を実践したデザイン/美大生の女子4人によるロックは、当時は衝撃的であった/衝撃的な程「下手な」バンドであったと思います。彼女らは、1982年にはファースト・アルバム”サボテン”を突然段ボールのレーベルFloorから出し、その後、1984年に、自身のレーベルSabot RecordsからEP “いつもある”を、1992年にもSabot Recordsからセカンド・アルバム”目覚める”を、2002年にはいぬん堂からサード・アルバム”つづく夢”をリリースしています。とDiscogs上は記載されていますが、コンピ等への参加や海外でのリリースなどを含めると録音物はもっとあるようです。実は、英国を代表する即興Sax奏者Lol Coxhillとの共演(その一部は、仏NATOのErik Satieのカバー集にも収録)や、英国出身米国在住のFred Frithによるプロデュースでのコンピ・アルバムへの参加も果たしており、また、突然段ボールの故蔦木栄一主催の日本カセット・テープ・レコーヂングからも、彼女達の自信作でもあるカセット作品”Let’s Satie”を出しています。と言う訳で、このセルフ・コンピ・アルバムが出たのが、もう既に10年前な訳ですが、私自身は何故、このアルバムを購入する気になったのかは忘却の彼方です。なので、知識の整理も兼ねて、ライナーノーツなどから、サボテンのバイオグラフィーを先ず書いてみます。元々は、法政大学哲学科在学中に絵の学校にも通っていた松本里美と武美大デザイン科在籍の田邊厚子が知り合って、お互いが先ず、楽器(松本はGを、田邊はDrs)を購入したことから端を発します。その後、田邊の中学時代の同級生で、日芸彫刻科在籍の宮川いづみがBで加入。3人共、ピアノは弾けますし、楽譜の読み書きもできましたが、宮川の加入で、彼女が弾くErik Satieの”Sports Et Divertissements (スポーツと気晴らし)”に触れ、Satieをピアノじゃなくてエレキバンドで演った方が、Satieの面白さに繋がると決断し、分担譜面割りを始めます。その後、早稲田大の風間正江 (G)と知り合い、4人組として、オリジナルのインスト曲も作り始めます。この頃はまだバンド名も無かったようですが、宮川の知り合いの突然段ボールの故蔦木栄一にデモテープを聴かせたところ、偉く気に入られ、1981年の突段企画のオールナイト・コンサートに出演を誘われ、その際にバンド名がサボテンになったとのことです。その時には、サボテンは通常の4ピース・ロックバンドの形態でしたが、全ての楽器をメロディ楽器として演奏、また歌詞も松本が書いていたようです。その後、先述のように、1982年にファースト・アルバムをリリースしています。当時の彼女達の演奏は、ストイックに楽曲をプレイしているのですが、時にはステージに背を向けて輪になって演奏したり、スカスカの音や変拍子でノン・グルーヴの特有のリズム感などを体現しており、The SlitsとかThe Raincoats或いは、ESGやCaptain BeefheartやThe Shaggsなどが引き合いに出されていました。しかし、彼女達は初めからコピーバンドでは無かったので、突然変異だったのでしょう。ただ、当時は下手くそバンドと揶揄されていたようですが、後のオルタナ/Lo-Fiバンドの先取りをしていたのかもしれませんね。その後、風間が脱退し、3人で録音したのが、EP “いつもある”で、更に、田邊が脱退し、代わりにグンジョーガクレヨンの宮川篤がDrsで参加して、2002年にアルバム”つづく夢”を出しています。 と言うのが、サボテンのバイオグラフィーになりますが、本作品では、過去の音源をKoichi Hara氏がミックスし直して、リマスタリングしており、オリジナルとはまた異なった感触に仕上がっているとのことです。それで、先ず各面のクレジットについて、先に表記しておきます。LP1はファースト・アルバム”サボテン”全曲を収録しており、メンバーは、松本里美 (G, Lead-Vo, Back-Vo), 宮川いづみ (B, Synth [Korg]), 田邊厚子 (Drs), 風間正江 (G, Lead-Vo & Back-Vo [A1-A3, B1-7])で、ゲストに蔦木俊二 (G [A1, A2, A4, B4], Perc [B1])が参加しています。LP2C面は、カセット作品”Let’s Satie”からで、メンバーは、松本里美 (G, Harmonica), 宮川いづみ (B, Piano), 田邊厚子 (Drs), 風間正江 (G [C3, C5])で、ゲストにLol Coxhill (Sax [C3, C5])が参加しています。録音場所/日時は、ややこしいですが、C1前半とC3後半が1992年録音で、C1後半が1985年4月4日渋谷屋根裏で、C3前半が1982年録音で、C2とC4が1983年9月29日早稲田大学で、C5が1981年荻窪Misty Music Studioでの録音となっています。なお、C面は、C3前半”Enteraku”を除いて、全てErik Satieの曲です。LP2D面の内、D1とD2はEP “いつもある” (1984年: Studio 246)からで、D3はアルバム”Non Position” (2002年: Gok Studio[1984年録音])からで、D4とD5は、アルバム”目覚める”(1992年作: Studio Parkside)からコンパイルされており、メンバーは、松本里美 (G, Vo), 宮川いづみ (B, Synth [Korg]), 田邊厚子 (Drs)となっています。D3はFred Frithのプロデュースです。また、LP1A/B面とLP2D面の内、D2だけがErik Satie作曲で、残りは全てオリジナル曲です。では、各曲を簡単に紹介していきますね。 LP1: From “Saboten”(1982) A1 “エメラルドの山彦 (Emerald Echo)”は、そんなに下手だとは思わなかったです。Voも元気一杯だし。 A2 “ヘビ使いのうた(The Snake Charmer's Song)”は独逸語/日本語の歌詞と曲の構成が面白い! A3 “低い椅子 (The Low Chair)”では、シンセの単音弾きのイントロから、何だか不思議な構成とミックスの曲が始まります。Voもキュート。 A4 “余計な予感 (Useless Foresight)”でも同様に、GもBもDrsも歌っており、曲の構成も緻密で秀逸!インスト部分が特に良い。 B1 “Accel”は、一転、何だか各楽器が緩〜く崩しての演奏によるインスト曲です。テンポも段々速くなります。 B2 “日の丸 (The Rising Sun)”も インスト曲で、それぞれの音の構成とミックス・バランスが不安定です。 B3 “エテンラク (Etenraku)”は、元は雅楽の演目「越天楽」で、ダブっぽいけど、レゲエ調ではないファットなBとそれぞれが主張を繰り広げるインスト曲です。 B4 “Knee Guitar”も、Bに導かれ、何かベンチャーズっぽいインスト曲ですが、決定的に何かが違います! B5 “彼女 (She)”では、シンセの大胆な導入もあるのですが、各人が勝手に弾いているような錯覚に陥ります。 B6 “ヨロコビ (Pleasure)”は、てんでバラバラな印象のインスト曲で、即興では?と勘違いしそう! B7 “馬(Horses)”は、本作では珍しく、Bのリフが延々と刻まれるインスト曲で、意外な一面です。 LP2: From “Let's Satie!” (1992) C1 “食欲をそそらないコラール~インプロヴィゼーション (Choral Inappétissant/Unappetizing Chorale – Improvisation)”は、ハーモニカのイントロから、いきなりフリーキーな即興演奏に移行していく短い曲です。 C2 “ブランコ (La Balançoire/In A Swing)”では、規則的なリズムの上に、Coxhillの素っ頓狂なSaxに乗りますが、フリーキーなGやのほほんとしたピアニカが良い塩梅です! C3 “エテンラク~海水浴 (Etenraku – Bain De Mer/Sea Bathing)”は、同じ曲とは思えない程のカッコ良いビート曲に連続して、ピアノの演奏へと交代。 C4 “競馬 (Les Courses/Race)”は、B7をモチーフにしたような一定のBのリズムの上に、CoxhillのSaxが跳ねていますが、中盤のGとの掛け合いは必聴!しかし、これ、本当にSatieの曲か? C5 “タンゴ (Tango)”は、ラジカセ録りなのか、荒い印象ですが、割とBがしっかりしてます。そして段々テンポは速くなります。 その他: D1 “未来の記憶 (Memory Of The Future)” (1984)では、最早、意味不明なインスト部分を含んで、落ち着いたVoの聴ける楽曲になっていますが、やはり全体の構成は凄いです! D2 “ゴルフ (Golf)” (1984)は、Satieの曲とは思えない位、ナンセンスかつ複雑な曲構成になっています。これは必聴! D3 “箱庭 (Miniature Garden)” (1984)は、複雑に聴こえる曲構成に漸く演奏能が追いついてきた感もあり、拍子の変化や転調が凄いです。そこにキュートなVoも。 D4 “自転車 (Bicycle)” (1992)は、アンビエントかつミニマルな曲で、Voのメロディは全くフリーです! D5 “島の生活(Island Life)” (1992)も、Voの無い部分では、各パートは全くフリーの如く演奏しています。 ふーぅ、やっと本作品をレビューしてみました。個人的には、インスト曲の方が好みかな? とにかく、演奏能力が乏しいにも関わらず、曲の構成は複雑で、これを全部譜割して演奏しているのか❗️と思うとちょっとビックリしてしまいます。Satieの曲自体よりも面白いかも! LP1: From “Saboten”(1982) A1 “エメラルドの山彦 (Emerald Echo)” A2 “ヘビ使いのうた(The Snake Charmer's Song)” A3 “低い椅子 (The Low Chair)” A4 “余計な予感 (Useless Foresight)” B1 “Accel” B2 “日の丸 (The Rising Sun)” B3 “エテンラク (Etenraku)” B4 “Knee Guitar” B5 “彼女 (She)” B6 “ヨロコビ (Pleasure)” B7 “馬(Horses)” LP2: From “Let's Satie!” (1992) C1 “食欲をそそらないコラール~インプロヴィゼーション (Choral Inappétissant/Unappetizing Chorale – Improvisation)” C2 “ブランコ (La Balançoire/In A Swing)” C3 “エテンラク~海水浴 (Etenraku – Bain De Mer/Sea Bathing)” C4 “競馬 (Les Courses/Race)” C5 “タンゴ (Tango)” その他: D1 “未来の記憶 (Memory Of The Future)” (1984) D2 “ゴルフ (Golf)” (1984) D3 “箱庭 (Miniature Garden)” (1984) D4 “自転車 (Bicycle)” (1992) D5 “島の生活(Island Life)” (1992) [LP1 “Saboten”オリジナル・アルバム] https://youtu.be/LVTLtkhHyts?si=copfvux2-5jFCZik LP1 A1 “エメラルドの山彦 (Emerald Echo)” https://youtu.be/sRdv-LWbvBE?si=iAmDeUVu1o9YnMG4 LP2 D2 “ゴルフ (Golf)” (1984) https://youtu.be/JxOag0Q4m_s?si=s7uAkIBAOLpUcZy2 LP2 D3 “箱庭 (Miniature Garden)” (1984) https://youtu.be/fZvi00MSyDQ?si=XvB0ef_ZZ4XXr5F_ LP2 D4 “自転車 (Bicycle)” (1992) https://youtu.be/GFMVDjlMbUY?si=5iTS_eqwnj9jAyUi #Saboten #サボテン #FloorEtSatie #フロアとサティ #EMRecords #SelfCompilationAlbum #Reissue #Remastering #1982年-1992年 #IndieRock #PostPunk #Lo-Fi #Piano #ErikSatie #蔦木栄一 #EiichiTsutaki #Floor #日本カセット・テープ・レコーヂング #NipponCassetteTapeRecorzing #松本里美 #SatomiMatsumoto #宮川いづみ #IzumiMiyakawa #田邊厚子 #AtsuoTanabe #風間正江 #MasaeFuma
Rock / Post Punk EM Records 不明Dr K2
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My Dad Is Dead “….And He's Not Gonna Take It Anymore”
これは何で買ったのかな?聞いた事もない名前です。My Dad Is Deadとは、バンドとかではなく、ソロ・アーティストMark Edwardsのことです。今回、ご紹介するのは、彼の実質ファースト・アルバム”...And He's Not Gonna Take It Anymore”(その前にカセット・アルバムが出ています)。それで、Edwardsと言うかMy Dad Is Deadについて調べてみました。My Dad Is DeadはMark Edwardsの録音プロジェクトとして、1984年にOhio州Clevelandで始まりました。2011年までに、12枚のフル・レングス・アルバムを出しているベテランです。その後、彼は北カリフォルニアで、Chapel Hillと言うバンドを結成しています。もう少し詳しく言いますね。彼は元々、1980年代初頭まで、Thermos of HappinessやRiot Architectureでドラムを担当していましたが、1984年に両バンドは解散。同年8月から、彼はギターを練習し、My Dad Is Dead名義で活動を始めます。最初の頃は、ドラムマシンにギター&ヴォーカルと言うスタイルでライブをやっていました。因みに、彼が24歳の時に両親は他界しており、それにちなんでのネーミングだとのことです。My Dad Is Deadは、最初にカセット・アルバム”My Dad Is Dead”を1985年に出した後、1986年に、正式なファースト・アルバムとして、本作品でもある”...and He's Not Gonna Take It Anymore”をSt. Valentine Recordsからリリースしています。その後、セカンド・アルバム”Peace, Love and Murder”をBirth Recordsからリリースした後に、1988年初頭に、Homestead Recordsと契約し、”The Best Defense”, “Let's Skip The Details”, “The Taller You Are, the Shorter You Get”と3枚のアルバムを出しています。因みに、アルバム”Let's Skip The Details”では、初めて、Edwards以外のミュージシャン(Chris Burgess, Doug Gillard, Jeff Curtis, John McEntire, Matt Swanson, Scott Pickering, Shayne Ivy)と一緒に作製し、それで、フルのバンドとしてツアーを敢行しています。1990年に欧州や英国ツアーをやっており、それが縁で、英国ツアーの時に、BBC Radio 1のJohn Peel Sessionにも参加しています。同年末にはMy Dad Is Deadは、ダブル7㌅”Shine”をリリース。これは後に、Scat Recordsが再発しています。1991年には、アルバム”The Chopping Down the Family Tree”を、1993年にもアルバム”Out of Sight, Out of Mind”をリリース。1995年には、Emperor Jones/Trance Syndicateとのスプリット”For Richer, for Poorer”を出していますが、その後、Edwardsは、短いツアーを終えた1997年末に、Web上で、バンドの解散をアナウンスしています。2002年には、Vital Congからアルバム”The Engine of Commerce”を出しており、また、2005年には、Edwards自身のレーベルUnhingedから、アルバム”A Divided House”を、2009年にもアルバム”A New Clear Route”を出していますが、結局、2011年にMy Dad Is Deadは正式に解散しています。大体の流れはこのようになります。 それで、本作品なのですが、先ず、LP1は、My Dad Is Deadのファースト・アルバム”...And He's Not Gonna Take It Anymore”の再発で、1985年10月〜1986年1月に録音されたもので、LP2は、そのアルバムの前にカセットで出していたセルフ・タイトルの作品(1985年3〜6月にEdwardsとTim Gilibrideによって、Fostex 4 Track recorderで録音)をリマスタリングしての再発となっています。それでは内容を紹介していきましょう。先ずはLP1ですが、G, B, Drs, Voは全てEdwardsが一人で演っているとのことです。初っ端のA1 “Talk To The Weatherman”のギターのドライなリフからして米国独特の砂っぽい感じで良いです。この曲では生ドラムを使っているのでしようか? まあ、そんな技巧が上手いと言う訳では無く、シンプルな曲が多いのですが、米国臭さが沁みます。A2 “The Quiet Man”やA3 “Mary Jane”はドラムマシンを使っていますが、一人でやっているからか、垢抜けてないところが、また良いです。A4 “Black Cloud”は、生ドラムの使用もあって、コード進行やアレンジが凄くカッコ良いです。A5 “Say Goodbye”も生ドラムで、ヘビーなインスト曲で、少しだけSonic Youthっぽいかな? A6 “40 Hours”は一転、ガレージっぽくて、ザラついたギターの音色と切羽詰まったヴォーカルがグーです。B1 “Anti-Socialist”は、またドラムマシンを使っていますが、その為か結構印象が変わります。B2 “It's Easier...”は、またまた生ドラムで乗り切る曲で、米国っぽい部分とJoy Divisionっぽい部分のブレンドが良い塩梅です。B3 “My Head”やB4 “Death Of A Salesman”はドラムマシンのビートが心地良いです。B5 “In Your Mind”では枯れたギターの音色が沁みますね。B6 “Statistic”はドラムマシンで、どこと無くコード進行がJoy Divisionっぽいんですが、アレンジで明るくしているように感じます。B7 “Mother And Child”は、生ドラムと猪突猛進な曲ですが、サビのところはカッコ良いし、途中のブレイクでハッとさせられます。 次にLP2ですが、先述のように、ファースト・アルバムの前に録音したデモ音源集のような位置付けで、曲も、LP1と重複するものもあります。また、Edwards以外に、Tim Gilibrideも参加しているようです。C1 “Statistic”, D2 “The Quite Man”, D3 “Anti-Socialist”, D4 “Mary Jane”はそれぞれ、B6, A2, B2, A4のデモ・ヴァージョンです。C2 “Too Many”はドラムマシンと生スネアで色を付けたインスト曲で、心地良いです。C3 “The Entrepreneur”は結構、ゴリゴリにギターを弾いて、ロックしている曲。C4 “Innocent”は、ドラムマシンを使いながら、ギターとヴォーカルの掛け合いが面白い曲。C5 “Last Call”はギターから始まる曲で、生ドラムを使ったスロー・バラード調です。唯一、コーラスのある曲。C6 “Roughneck”もギターで始まる元気一杯なインスト曲で、最後フェイドアウトします。D1 “Indiana”はライブ録音なのか?残響がカッコ良いインスト曲です! D2, D3, D4はデモ・ヴァージョンなのですが、録音場所の残響からか、結構印象が変わりますね。D5 “Rut”もドラムマシン使用で、何やら中近東風な雰囲気があるようなインスト曲。D6 “Waste”はまるでポストパンクな曲で、ドラムマシンも生ドラムも無しです。D7 “Back Away”は隠しトラックかな?ドラムマシンの逆回転にギタードローンが乗っかる結構、実験的な曲で、ビックリです。 と言う訳で、一通り、聴いてみましたが、初め、ジャケ写やデータでソロで全部やっているとかを見てて(何となくカントリー&ウエスタンの弾き語りなんかを勝手に想像していました)、ん〜これはあんまり面白くないかもなぁと思っていたのですが、予想を裏切って、ドラムマシンや生ドラムとギターとベースそしてヴォーカルでここまで面白い音楽が出来るとは❗️とビックリしました。やはり米国地下音楽界は侮れませんね。My Dad Is Dead自体は何枚もアルバムを出していますが、この再発盤は絶対聴いた方が良いですよ‼️さあ、レッツらゴー! LP1 A2 “The Quiet Man” https://youtu.be/u-dCtEIvxWU?si=rIcAHMNtOhiPAroW [LP1 ”...And He's Not Gonna Take It Anymore” full album “] https://youtu.be/tDQYvfDuvFI [LP1 & LP2のBandcampのURLを貼っておきます] https://mydadisdead.bandcamp.com/album/and-hes-not-gonna-take-it-anymore-expanded-edition #MyDadIsDead #AndHesNotGonnaTakeItAnymore #ScatRecords #St.ValentineRecords #USUnderground #MarkEdwards #SoloProject #Reissue #CassetteAlbum #Remastering #PostPunk #IndieRock #TimGilibride #DrumMachine #Drums #Guitar #Bass #Vocal
Indie Rock / Post Punk Scat Records (St. Valentine Records) 2000円Dr K2
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Can “Tago Mago”
またCan祭りですね。今回は、永遠の名作とも言われているCanの3枚目のアルバムにして、2枚組の大作”Tago Mago”を紹介したいと思います。この時のメンバーは初期の最強の5人で、Holger Czukay (B), Jaki Liebezeit (Drs), Michael Karoli (G), Irmin Schmidt (Organ, e-Piano)そしてDamo Suzuki (Vo)から成ります。それで、本作品は、A面3曲、B面とC面1曲ずつ、D面2曲と言うように、割と長尺の曲か多いですね。A1 “Paperhouse”はややミドルテンポから始まったと思ったら、アップテンポになり、強靭なハンマービートをぶつけてきます。それに対抗するダモ鈴木のヴォーカルやKaroliのギター/Schmidtのオルガンとの摩擦熱で一気にヴォルテージが上がります。そして、A2 “Mushroom”に移行していきますが、ここでのドラムの音は極めて硬質かつ冷徹なハンマービートで、感情的なヴォーカルとの対比が興味深いです。そして、爆発音と共にA3 “Oh Yeah”は、ハンマービートとオルガンの持続音に逆回転のヴォーカルが乗り、曲が進みますが、やがて、日本語で「、、頭のイかれた奴、虹の上からしょんべん、我等が◯◯と呼ぶ、、、」と聞こえてきて、ダモ鈴木っぽいなあと感心している内に曲は唐突に終わります。そしてB面へ。B “Halleluwah”は、Canの音楽を語る上で、最も重要な曲であり、彼等の開発したハンマービートが延々と続き、そこにダモ鈴木の呪文のようなヴォーカルが乗ると言う基本構造から成っていからです。そして、この曲は催眠的でもあります。約18分半も収録されていますが、最後がフェイドアウトしていることからも、多分、録音の時はもっと長くセッションしていたのではないかと思われます。A面B面は、特にロックのフォーマットのせいか、ガレージ・サイケ色が強いですね。次に、LP2に行きます。C “Aumgn” は、B面とは一転、うめき声のようなヴォイスと様々な楽器/非楽器の音にディレイを掛けて、延々とビートの無い「音のアッセンブラージユ」から成る実験的な曲です。これも、Karlheinz Stockhausenのお弟子さんだからこそ成立するCanのもう一つの側面であり、重要な要素だと思います。後半のLiebezeitの鬼迫に迫るドラミングとSchmidtのオルガンは一聴の価値ありです。更にD面へ。D1 “Peking O”は、はちゃめちゃなリズムボックスとヴォイスを使い方が返って潔い位の無茶振りな曲ですが、最後の方になって、ハンマービートが聴こえてきた時は少し安心しました。D2 “Bring Me Coffee Or Tea”はまたいつものCan節に戻りますが、Karoliはアコギを弾いてますね。それでも、結構、盛り上がって、無事着陸して終わります。このアルバムでは、前半(LP1)は、ロックバンドとしてのCanがハンマービートを発明した範疇での実験を、後半(LP2)は実験音楽をロックのイディオムで実践するとどうなるか?を具現化しているのではないでしょうか? そう言う意味では、Canと言うバンドを多面性を余す事なく表した作品とも言えるでしよう。また、忘れてはならないのが、ダモ鈴木の言語感覚です。一瞬にして単語の意味を拡張してしまうのは、彼の天賦の才能です。そう言うことも含めて、2枚一度に聴き通すのは辛いかもしれませんが、Canを知りたいのであれば、是非とも体験すべき一作品ですね‼️ A1 “Paperhouse” (7:29) A2 “Mushroom” (4:08) A3 “Oh Yeah” (7:22) B “Halleluwah” (18:22) C “Aumgn” (17:22) D1 “Peking O.” (11:35) D2 “Bring Me Coffee Or Tea” (6:47) A3 “Oh Yeah” (Live) https://youtu.be/bRMSjidUB_o [full album] https://youtube.com/playlist?list=PLjtxOIF4SP1lP4Jk6gCK8veiM7q5O4kSL #Can #TagoMago #SpoonRecords #UnitedArtistsRecords #Reissue #Remastering #Krautrock #HammerBeat #Garage #Psychedelic #ExperimentalMusic #Avant-Garde #ThirdAlbum #2LPs #HolgerCzukay #JakiLiebezeit #MichaelKaroli #IrminSchmidt #DamoSuzuki
Krautrock / Experimental / Psychedelic Spoon Records (UNITED ARTISTS Records) 不明Dr K2