-
Nash The Slash “And You Thought You Were Normal”
またまた来ました、加の「1人Residents」或いは「覆面ヴァイオリニスト」ことNash The Slashを入手しました!今回は、5枚目のアルバム”And You Thought You Were Normal”です!ですが、オリジナルではなく、再発盤なので、2枚組となっており、かつD面にはエッチングが施されていると言う、ちょっとお得なブツです。Nash The Slashのバイオグラフィーについては、既に書いてありますので、そちらをご参照下さい。今回も、元のアルバムは、彼自身のレーベルCut-Throat Recordsから1982年に出ていますが、私が購入したのは、先述のように、同じ加トロントのレーベルArtoffact RecordsとStorming The Baseとからの再発盤で、LP片面分ボーナストラックが付いており、かつD面にはエッチングが施されています。ボーナス・トラックと言う意味では、Bandcampのが一番多いのかな?今回も彼1人で制作されているようです(クレジットには書いてありません)。LP1にはA面5曲/B面6曲が、LP2にはC面4曲が収録されています。それでは、各曲をご紹介していきましょう。 ◼️LP1: ★A1 “Normal” (3:30)は、ディストーションを掛けたMandolin (彼はGを使わず、電気Mandolinにディストーションを掛けていますので、以下「DE-Mandolin」と表記)にディスコなマシンドラムとシンセが乗ってきて、時にSEなシンセ音も加わる曲で、シンプルなコード進行ですが、中々聴かせてくれます。 ★A2 “Pretty Folks” (3:32)は、いきなり彼の独特のVoとSynth-Bから始まりますが、強力なマシンリズムにシンセが乗ってきて、すぐさま、彼のポップな世界に引き込まれます。鉄琴も良い味を出しています。 ★A3 “The Hypnotist” (4:09)は、忍び寄るシーケンス・ベースにシンセやDE-Mandolinが乗るインスト曲ですが、ディレイを掛けたE-Vlnを弾きまくっており、一瞬「お前はHeldonか⁈」と突っ込みたくなります。 ★A4 “Citizen” (3:56)では、四つ打ちマシンリズムに、美麗なシンセと彼の切迫詰まったVoが入ってきて、極上のシンセ・ポップを楽しめます。間奏はDE-Vlnかな? ★A5 “In Search Of Prey” (2:16)は、太いSynth-Bのシーケンスとマシンドラムに、浮遊感あるシンセとピコるシンセが被ってくるミニマルなインスト曲です。 ★B1 “Dance After Curfew” (3:49)では、E-Vlnの爪弾きと重いリズムで、タイトルを繰り返す変調Voが入ります。あと彼は、DE-Mandolinを弾いているようです。手弾きシーケンスも冴えています。 ★B2 “Animal Jamboree” (4:06)は、重い持続音に「動物の鳴き声」風シンセが加わり、次第にリズムも入ってきて盛り上がるインスト曲です。 ★B3 “Remember When” (2:43)は、DE-Mandolinとシンセの浮遊から始まり、やがて手弾きシーケンスとシンセによるメロディも加わりますが、何処か悲しげな雰囲気です。 ★B4 “R.S.V.P.” (3:58)は、目まぐるしいシーケンスと彼のVoとストリングス・シンセから成る曲で、緩急の付け方が上手く、全く聴き飽きません。寧ろ、ダウンする音階パートがカッコ良いです。 ★B5 “Slag” (0:35)は、SE的シンセによるスケッチで、宇宙戦艦ヤマトの艦内のような感じです。 ★B6 “Memories” (3:33)は、ややアフリカンなマシンリズムに、重く暗めのシンセによるメロディが乗る曲ですが、これも悲しげなインスト曲になっています。 ◼️LP2: ★C1 “Vincent's Crows” (5:04)は、優しく悲しげなVoと、そのバックのゆったりしたマシンリズムと優しいシンセとSynth-Bから成る曲で、DE-Mandolinも冴えています。間奏のソロはE-Vln? ★C2 “Stalker” (5:18)は、切迫したシーケンスとSE的シンセに始まり、強靭なマシンリズムとDE-Mandolin及びシンセから成るインスト曲で、アレンジの上手さが良く分かりますし、カッコ良いです! ★C3 “Lake Ontario Suite (PT.1)” (1:24)は、優しく淡いシーケンスとシンセのメロディに溶ろけそうな小曲です。 ★C4 “Lake Ontario Suite (PT.2)” (2:04)は、Tangerine Dreamっぽいシーケンスに、軽めのマシンリズムと明るいシンセから成る曲で、本アルバムの最後に最適だと思います。 ★D: エッチング加工 本作品では、彼のVoが入っている曲が少なく、ちょっと残念な気もしましたが、逆に、インスト曲だと、演奏能力やアレンジ力がもろ分かってしまいますので、その意味では、彼の音楽の才能を存分に楽しむことが出来ましたし、それはそれで良かったと思います。まぁ、いつもの「Nash The Slash節」なんですが、一聴して分からせてしまう程の完成度とエキセントリックなアレンジが炸裂していますね。彼のトレードマークのE-Vlnが入っていたかどうか迄は分かりませんでしたが、それでも、やはり彼のポップネスをビンビン感じられ、傑作だと思います。もし、多少なりとも興味を持った方は、一度聴いてみてはどうでしょうか? https://youtu.be/-SrzEbbQ_vc?si=g1cd_ApEUnnC6aBC [オマケ: B1 “Dance After Curfew” live 1985] https://youtu.be/S6VKC1QXq1o?si=yf-M6Q3hMZk1IWt3 [BandcampのURLも貼っておきます] https://nashtheslash.bandcamp.com/album/and-you-thought-you-were-normal #NashTheSlash #AndYouThoughtYouWereNormal #ArtoffactRecords #StormingTheBase #2017年 #Cut-ThroatRecords #1982年 #Reissue #Remastering #2LPs #Etching #5ThAlbum #Electro #SynthPop #ElectricViolin #DistortedElectricMandolin #Synthesizers #JamesJeffreyPlewman
Synth Pop / Experimental Pop Artoffact Records / Storming The Base €13.95Dr K2
-
Bill Nelson “A Catalogue Of Obsessions”
ちょっと気になり出したBill Nelsonのソロ作品を集めようかなぁと思って、思わず、ポチりました。本作品”A Catalogue Of Obsessions”は、1985年にリリースされた4枚組ボックス・セット”Trial By Intimacy (The Book Splendours)”の1部として制作されています。その他3作品として、このボックス・セットは、”The Summer Of God's Piano”, “Chamber Of Dreams (Music From The Invisibility Exhibition)”, “Pavilions Of The Heart And Soul”から構成されており、この時点では、全て未発表曲から成っており、また、先述のボックス・セットは、Nelsonの写真集”The Arcane Eye”とパックになっています。彼自身の言葉によれば、これらの作品は「音のスケッチ・ブック」であり、未発表曲集ではないとのことです。多分、思い付いたメロディをそのまま、宅録で曲らしく録音していったものを集めたと言う意味だと思います。なので、音質や完成度は敢えて無視してリリースされていたのだと思います。Be-Bop DeluxeからRed Noiseそして、ソロと言う風に変遷してきたBill Nelsonの1980年代の活動において、このボックス・セットは一つのエポック・メイキングな作品であり、それ故に、このアルバムもその1/4を構成しているので、重要な作品であることが理解出来ると思います。まあ、Nelson本人は、「音のスケッチ」と言っているので、このような短い曲のオンパレードになっているのだとは思いますが。内容としては、本作品には、両面10曲ずつ収録されています。それでは、各曲について紹介していきましょう。あっ、因みに、Nelsonは、3回結婚しており、現在の妻はYMOの高橋幸宏の娘Emikoさんです(あんまり関係ないですね、すまん!)。 ★A1 “Sex Party Six” (4:44)は、ゆっくり走る機関車のような電子リズムとミニマルなシーケンスになだらかなメロディの曲で、時々インドっぽくて牧歌的。 ★A2 “Wider Windows For The Walls Of The World” (2:16)は、やや金属質なリズムマシンとマリンバによる異国情緒漂う曲です。打ち込みのセンスが良い。 ★A3 “Time In Tokyo” (3:05)は、ややスローで、日本的と言うよりチャイナ的なメロディのエレクトロな曲ですが、YMOの「駄目な」部分を感じてしまいます。 ★A4 “Happily Addicted To You” (1:03)は、ハープのようなシンセのアルペジオとアコギの組合せが斬新な曲です。 ★A5 “Snakes With Wings” (2:09)は、スローでやや重めの曲で、シーケンスの上のサブメロ・シンセが心地良い。タイトルは「龍」のことかな? ★A6 “The Boy Pilots Of Bangkok” (2:29)は、機械的な音色リズムマシンに何となくYMOチックなメロディがちょっと残念な曲。でも打ち込みのセンスは良い。 ★A7 “Erotikon” (1:49)は、重めのリズムとシーケンスに針のようなメロディと緩やかなメロディの攻めが合いが面白い曲です。 ★A8 “Birds In Two Hemispheres” (1:45)も、嗚呼、YMO的だなぁと思ってしまうような電子音楽です。シンセ・ソロは良いのにぃ! ★A9 “Windmills In A World Without Wind” (2:24)は、ノンビートのアンビエントな曲ですね。電子音系クラウトロックっぽいかな?潜水艦の中のような感じ。 ★B1 “Love's First Kiss” (1:41)も、ゆったりとしたアンビエントな曲ですが、リズムなあって、女性のナレーション入りです。 ★B2 “Initiation Of The Heart's Desire” (2:01)は、アルペジオ・シーケンスが心地良い曲で、ややアンビエント風かな? シンセのメロも良い。 ★B3 “Edge Of Tears” (1:49)は、ゆったりとしたアンビエント風アレンジの優しい曲です。流れるようなリズムが心地良いです。 ★B4 “Test Of Affection” (2:28)は、弦楽四重奏を思わせるようなシンセのダビング音に乗せて、くすぐったいようなシーケンスと晴れやかなメロが効いた曲。 ★B5 “Words Across Tables” (1:51)は、逆回転のリズムマシンとシーケンスに合わせての、シンセのメロディが印象的な曲です。 ★B6 “A Promise Of Perfume” (3:09)では、リズムマシンとシーケンスとアコギの絶妙な組合せを堪能できます。 ★B7 “This Dangerous Age” (2:05)では、波状の多層化したシーケンスに合わせて、なだらかなシンセがソロを弾きまくります。 ★B8 “The Glass Breakfast” (1:53)も、弦楽四重奏的シンセに、SE的電子音と優しいメロディのシンセから成る曲です。 ★B9 “Talk Technique” (2:12)では、コチャコチャしたリズムマシンとシーケンスに柔らかいシンセのメロディと男児と男性Voがハマります。 ★B10 “The Last Summer For Dancing” (2:10)でも、逆回転リズムマシン同期の正回転スネアとシンセのメロが冴えています。凝ってる曲だなあ。 ★B11 “View From A Balcony” (1:55)は、静かな波の如く湧き上がる電子持続音とメロから成るアンビエントな小曲で、これでアルバムを締めています。 聴いた感じの総合では、A面は大体がYMOの陰がチラチラ見えるリズミックな曲が多い印象で、A面最後辺りからB面は、ゆったりしていて、リズムマシンを余り使用しないアンビエントな雰囲気が強いですね。個人的には、アンビエントな曲にはYMOっぽさが無いので、安心できます(YMOファンのリスナーさん、ごめん!)。まあ、Nelson自身がスケッチ的なアルバムと言っているように、曲はあくまでも思い付いたメロとかシークエンスを試して、そこに肉付けしましたと言う感じなので、これらの短い曲(の素)を更に発展は出来ると言うことなのでしょう。その意味では、多彩なアレンジで面白かったです。他の3部作も聴いてみたくはなりますね❗️ クレジット曲順 A1 “Sex Party Six” (4:44) A2 “Wider Windows For The Walls Of The World” (2:16) A3 “Time In Tokyo” (3:05) A4 “Happily Addicted To You” (1:03) A5 “Snakes With Wings” (2:09) A6 “The Boy Pilots Of Bangkok” (2:29) A7 “Erotikon” (1:49) A8 “Birds In Two Hemispheres” (1:45) A9 “Windmills In A World Without Wind” (2:24) B1 “Love's First Kiss” (1:41) B2 “Initiation Of The Heart's Desire” (2:01) B3 “Edge Of Tears” (1:49) B4 “Test Of Affection” (2:28) B5 “Words Across Tables” (1:51) B6 “A Promise Of Perfume” (3:09) B7 “This Dangerous Age” (2:05) B8 “The Glass Breakfast” (1:53) B9 “Talk Technique” (2:12) B10 “The Last Summer For Dancing” (2:10) B11 “View From A Balcony” (1:55) https://youtu.be/aK1_63mkfxY?si=BimtgPbeK-KLUg6i #BillNelson #ACatalogueOfObsessions #CocteauRecords #SoloAlbum #TrialByIntimacyTheBookSplendours #BoxSet #NewWave #ExperimentalPop #AllInstruments #TheSummerOfGodsPiano #ChamberOfDreams #MusicFromTheInvisibilityExhibition) #PavilionsOfTheHeartAndSoul #PhotoBook #TheArcaneEye #SoundingTheRitualEcho #Multi-Instrumentalist
Synth Pop / Experimental Pop Cocteau Records 2574円Dr K2
-
Lena Platonos “Balancers”
昔、仕事(学会出張)で、ギリシャに行ったことがありますが、その時に空港を降りて先ず感じたことは、「文字が全然読めん」と言うことでした。その位、ギリシャ語は全く読めなかったんです(まあ、今も読めませんが)。そんなギリシャの女性アーティストLena Platonos (Λένα Πλάτωνος)の過去作品のセルフ・コンピ・アルバムが、この”Balancers (Εξισορροπιστές)”です。しかし、これも謎物件で、なんでこれを買ったの?と自問しています。ただ、彼女は1980年代初頭から現在まで割とコンスタントにリリースを続けていますので、そこそこ有名なアーティストだと思います。それで、彼女についてちょっと調べてみました。Platonosはピアニスト兼電子音楽作曲家で、特に1980年代のアテネの電子音楽シーンではリーダー的存在だったそうです。また、ギリシャの放送局Hellenic Broadcasting Corporation (ERT)の子供向け音楽番組 "Lilipoupoli"に参加していたので、有名だったそうです。もう少し詳しく書きますね。彼女は、ギリシャのCrete生まれで、父親が有名なピアニスト兼作曲家であり、彼女自身も2歳からピアノを習っています。その後、彼女は、アテネ音楽院に進み、18歳でプロのピアニストになっており、1963年にはKatie Papaioannouコンテストで一等賞を受賞しています。その後、彼女は国外での修行の為、ウィーン音楽芸術大学、それからベルリンにも進学します。そこで、彼女はロックやジャズ、東洋の音楽にも触れるようになります。その後、指揮者コースの為に一旦帰国しますが、Heracles Triantaphyllidisと彼のバンドDNA(No New Yorkのバンドではないです)と協力する為に、1975年に再びベルリンに行きます。最終的には、1978年に帰国して、彼女の夫Dimitris Marangopoulosと共に、先述のERTの第3放送で働くことになります。この時のディレクターManos Hatzidakisとも知り合いになり、これが縁で、彼女は、″Lilipoupoli″を放送することが出来、そこで流される音楽の歌詞や作曲を担当することになります。それとは別に、彼女は、作詞家Marianina Kriezis, ”Lilipoupoli”でも一緒だったSavina Yannatou及び歌手Yiannis Palamidasの協力の元、1981年にファースト・アルバム”Sabotage”を出します。このアルバムは、ギリシャ語で歌われており、またギリシャ録音の最初のシンセ作品となります。しかし、実は、このアルバムの前に既に完成していた作品があり、それは、詩人Kostas Karyotakisによる13篇の詞に、彼女が音楽を付けたもので、便宜上、セカンド・アルバム”Karyotakis - 13 Songs”となっています。その翌年、12曲のミニマルかつエレクトロニックなアレンジを施したサード・アルバム”Manos Hatzidakis ’62″を出しています。その後にリリースした3枚のアルバム″Sun Masks″ (1984年作), ″Gallop″ (1985年作, ″Lepidoptera″ (1986年作)は、彼女が、電子音楽、実験的な手法、オーケストレーション及びギリシャ語の歌詞への方向転換を決定づけた代表作となります。これらの作品は、ミニマル・ミュージックでもあり、声には電子フィルターが掛けられ、印象的なKbdが多用される音楽形態となっています。上記3つのアルバムの制作中も、Gianni Rodariの詩に子供用の音楽を付けたアルバム”The Sound and its Errors″を出したり、1986年には、他のギリシャ人音楽家Michalis GrigoriouやVangelis Katsoulisと共に、アルバム”Music for Keyboards″を出していたりもします。1989年には、アンデルセン童話に基づいた子供向けオペラ作品”The Emperor’s Nightingale″を出したり、より落ち着いてダークなアルバム”Spasimo Ton Pagon (The Breaking of the Ice)” (1989年作)と“Mi Mou tous Kiklous Tarate (Do Not Disturb My Circles)” (1991年作)を出したりしています。また、1990年には、Dionysis Savvopoulosと協力してライブ演奏も行い、ライブ・アルバム”Retrospection ‘63-‘89”を出し、翌年には、Dimitra Galaniと協力して、John Lennon等の曲をアレンジしたアルバム”Myths Of Europe”も出しています。その後、Platonosは沈黙しますが、1997年に、Savina Yannatouと共に、派手な電子音楽ではなく、より JazzyとかArt Music的な抑制的なアルバム”Breaths”を出しています。と同時に、ギリシャの電子音楽シーンで有名なアーティストによる彼女の曲のカバーを集めたアルバム”Lena Platonos’ Blender”もリリースされています。2000年には、Thodoros Poalasの詞に音楽を付けて、Maria Farantouriが歌うアルバム”The Third Doorway”を出しており、2003年3月に行われたアテネ・コンサート・ホール(Megaron Mousikis Athinon)でのライブ・ショーでは、あっという間にチケットはソールドアウトしています。また、2005年には、彼女の歌詞集”My Words”が出版され、2008年2月には、CDシングル”I Loved You”が、Eleftherotypia新聞の日曜版で取り上げられています。また、同年3月には、自動書記的な本”Diaries”も出版されており、彼女は電子音楽を再開しています。同年に7月には、彼女の音楽をレトロに見直すコンサートが他のアーティスト達によってOdeon of Herodes Atticusで開催されています。2010年には、Savina YannatouとYiannis Palamidasと共に行ったPallasでのライブ録音を2枚組CDで出しており、同年12月には、エジプト系ギリシャ人Constantine P. Cavafyの詞に音楽を付けるコンサートを生誕150周年として行っています。そうして、2015年に、米国Dark Entries Recordsが、彼女のアルバム”Gallop”をリイシューし、国際音楽誌や非ギリシャ系DJが注目し、Boiler RoomやBeats In SpaceからDiorのファッション・ショーでも彼女の曲が掛かるようになります。2015年には、Platonosは、初めて英国詩人Emily Dickinsonの英詩に音楽を付けたコンサート”Hope is the thing with feathers″をOnassis STEGで披露しています。また、2016年末には、DJデュオRed Axesが、彼女のアルバム”Gallop”のリミックス4曲から成るEPをリリースし、翌年には、Dark Entries Recordsも、彼女の曲”Sun’s Masks”のリミックス作品をリリースしています。2017年には、コロンビア大学の比較文献社会学の教授Stathis Gourgourisが、自身の著書の中で、Lena Platonosの現代ギリシャ電子音楽への貢献について、Laurie Andersonと比較して考察しています。そうして、2021年には、先述の”Hope is the thing with feathers"がアルバムとしてリリースされ、更に、同年には、本作品である1982年〜1985年の未発表曲を集めたセルフ・コンピ・アルバム”Balancers”もリリースされます。 Lena Platonosのキャリアはこんな感じで、アカデミアとポップ・カルチャーを行ったり来たりしており、また、電子音楽とピアノとか、詩人の詩に音楽を付けたりとか、結構八面六臂な活動をしているのだなと思いました。そんな彼女の1980年代前半の電子音楽期の未発表曲をコンパイルしたのが、この作品”Balancers”と言うことになります。内容は、A面8曲/B面6曲となっており、作曲・演奏・歌全て、彼女一人でやっているようです。それでは、各曲について紹介していきましょう。 ★A1 “Ο Χορός της Σαλώμης/Salome's Dance” (1:58)は、いきなり逆回転から始まり、そこに霧のような声とシンセによるメロディ(?)が絡んでくる小曲です。 ★Α2 “Μια Γάτα στη Στροφή/A Cat on the Corner” (1:48)は、ディレイ処理されたリズムマシンに、ギリシャ語で語るようなVo(これもディレイ処理されている)が加えられた不思議な曲です。 ★A3 “Γάμος/Wedding” (1:19)は、ディレイ処理された語り部のVoとシンセの通奏低音から成る小曲です。 ★A4 “Τον Σεπτέμβριο/In September” (2:16)では、やはりディレイ処理された語るようなVoで、ポロンポロンしたシンセをバックに歌っています。しっとりした落ち着いた曲です。 ★A5 “Τώρα που περιμένεις την Αγάπη σου/Now, While You Wait For Your Love” (3:41)では、生ドラムに簡素なKbd(オルガン?)及びシーケンスに、デッドな環境でのVoでの歌が奏でられえます。ギリシャ語の語感が不思議です。 ★A6 “Ναός Ιωνικού Ρυθμού/Sanctuary in Ionian Rhythm” (1:56)は、不明瞭な通奏低音と独白調のVoから成る小曲です。 ★A7 “Αχίλλειον, Παλάτι στην Κέρκυρα/Achilleon, Palace in Corfu” (0:48)は、語り口風Voとシュワ〜ンとしたシンセから成る小曲です。 ★A8 “Φαέθων/Phaethon” (4:54)でも、ゆったりと流れるアンビエンなシンセ音とその上にポロンポロンした単音シンセが微かに跳ね回っています。メロディが不明瞭なインスト曲で、テープ操作も加わっています。 ★B1 “Χένα/Henna” (3:27)は、逆回転の楽曲音と独白調のVoから始まり、呼吸音のような音やゆったりとしたドローン音に置換されていきます。Voも歌うようになっていきます。 ★B2 “Βήματα Πλαπαλ/Plapal Steps” (2:59)では、緩いパルス音に、不明瞭な低音や不思議な変調シンセ音、更には騒々しい音が微音量で聴こえたりします。掴みどころがない不定形の音楽です。 ★B3 “Άρωμα Ροζαλία/Rosalia Perfume” (1:09)は、語り口なVoとそのバックのピコったシンセ音とポリシンセの持続音が静かに流れる小曲です。 ★B4 “Ρώσσικος Θρήνος/Russian Lament” (4:15)では、ディレイ処理された声や卓球をやっているような物音が、ゆったりした通奏低音の上に乗っていますが、やがて、ゆったり流れるシンセ音に、独白調のVoや不明瞭なメロディのシンセ音へと変容していきます。 ★Β5 “Αθάνατος/Immortal” (2:32) も、独白調Voと通奏低音から成る曲で、非常にゆったりと流れていきます。時々、物音系の音が聞こえます。 ★B6 “Παρασκευή 9-9-1983/Friday, 9-9-1983” (4:35)は、物音系の音とそれを模倣したシンセ音から成るインスト曲で、通奏低音らしき持続音が捻れていき、更に上昇していきます。 先ず、第一に、本作品がセルフ・コンピ作品であるにも関わらず、完成した1枚のアルバムとして聴くことが出来ると言うことに驚きます。また、全体的に、非常に不明瞭なアンビエントな電子音楽で、Voも歌うではなく、語るような明確なメロディのないもので、物音のような音も時に聴取出来るのですが、それらのサウンドが相互反応し合って、独自のアトモスフィアを持った音楽に昇華されています。また、歌詞がギリシャ語の曲もあるので、その語感も独特な響きを持っています。そんな彼女のソロ作品は、今まで聴いたことがない雰囲気なので、静かめの音響系音楽が好みの方にはお勧めします❗️ A4 “Τον Σεπτέμβριο/In September” https://youtu.be/BWxhCzLbJ8c?si=zRIF49NlYEHdJAkh [full album] https://youtube.com/playlist?list=OLAK5uy_mQi0bNjccmtc3OSD65Urwh-dPqEFp2GCw&si=X7VPL-RKb8cjaLXt [BandcampのURLも貼っておきます] https://lenaplatonos.bandcamp.com/album/balancers #LenaPlatonos #ΛέναΠλάτωνος #Balancers #Εξισορροπιστές #DarkEntries #SelfCompilation #PreviouslyUnreleasedTracks #1982-1985年 #Greece #ElectroPop #Experimental #Synthesizers #SoloArtist #Pianist #Composer #GreekElectronicScene
Synth Pop / Experimental Pop Dark Entries 2250円Dr K2