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「幻のブルース」 フラワー・ショウ 華ばら 藤本卓也 泥臭い
何事においても、濃くて泥臭く古臭くてベタな表現が影を潜めてから、この国はつまらなくなったとお嘆きの方はいらっしゃいませんでしょうか。作曲家・藤本卓也などはまさしく歌謡界でそのスジの権化、矢吹健「あなたのブルース」を筆頭に昭和史を彩る、所謂ディープ歌謡の巨匠。夜のワーグナーだかドビュッシーだか知らんけど。ローオン・レーベルからのリリースなので作風はコテコテのナニワサウンド、あの「フラワーショウ」の華ばらがワイルドかつパンチのある歌唱を聴かせる「まぼろしのブルース」です。そういえば「まぼろし」などと言う言葉はとっくに使われなくなりました。昔は「まぼろし探偵」「幻の湖」「まぼろしの世界」「幻の10年」などいろいろありましたが。イロモノの芸人さんがレコードを出してそれがヒットすることが昔はよくありました。中にはとても巧い人もいて、すっかりその気になって笑いをないがしろにした人もいましたが笑。この楽曲は勝彩也や佐久間浩二などのバージョンも勿論有名ですが、アレンジの巧さも相まってこの盤が一番迫力に富んでいます。
ディープ歌謡 7" Single ローオン揖斐是方
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A VERY STONEY EVENING / CROSBY-NASH
「何これ?修学旅行?」常連客と話していた店主・藤原夫人は、学生服で現れた田舎の高校生を、あからさまに嘲笑したものです。70年代中頃、そんな客はお呼びじゃなかったんですな新宿レコードは。非常に肩身の狭い思いをしながら、その時に買ったのが、当時米国発売されて間もない「ウィンド・オン・ザ・ウォーター」でした。クロズビー・アンド・ナッシュのセカンドです。当初は嫌いではなかったものの、次第に「鯨を救え」のトーンが鼻についてきて手放しました。勿論それはその後の、暗愚な日本人に救鯨の大切さを教示するための有難い「ローリング・ココナッツ・レビュー」の恥辱(笑)につながっていくわけです。そしてクロズビー・アンド・ナッシュに関してはファーストと、ここにあげた二作があれば十分ではないかとの結論に至りました。やはり70年代に入手した海賊盤「ア・ベリー・ストーニー・イヴニング」はタイトル通り、クロズビーのぶっ飛びぶりがうるさいのですが、選曲・歌と演奏・音質どれもが素晴らしいアルバムです。以前に所有していたのはもっと気の利いたジャケットでした。そして後年、このブートレッグが名作なのはご本人達も知るところとなったのでしょう、「アナザー・ストーニー」と銘打って、ほとんど同じ選曲からなる類似ライブ盤を公式リリース。先に評判をとった海賊盤の存在があり、それに対抗する形で公式盤があとから出るというパターンは昔からありました。これもその一例でしょう。 ただし、厳密にいえばオリジナルの二枚組海賊盤のほうがやや選曲面で勝ります。#csn&y #davidcrosby #grahamnash
ロック LP, Album CD TMOQ揖斐是方
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元カーナビーツ、臼井啓吉のソロ・シングル、別の名義で。
最初にカーナを脱退した彼は青山啓の名前で「セックス氏の休日」をリリースするのは有名ですが、これはその後のシングル。浜口倉之助の作。元グループ・サウンドのメンバー諸氏、70年代には皆さん色々とご苦労なさったようで、そのあたりにスポットを当てた再評価はいまだになされていません。これもセールスが奮わなかったことの証である、コンディションの良い見本盤です。
歌謡曲 東芝 3500揖斐是方