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『リードを失くしたラッパ吹き/阿部薫 ライヴ・アット・騒 1978』
これは2003年4月に作られたCDRであり、全四曲はすべて1990年頃に出た「ライヴ・アット・騒」シリーズから抜粋した演奏です。あのシリーズは内容もさることながら若松孝二や友川かずきなど、ライナーの執筆陣の文章もとても面白かったのですが、これはそこから阿部のサックス以外の演奏ばかりを抜粋して集めた一枚です。1978年の1月から8月までの4回のセットから、ピアノ、ハーモニカ、ギターなどの独奏。天性の楽器演奏者としてブラアン・ジョーンズを彷彿とさせるようなエピソードもあり、この人の「ちゃんとできるひとなのにめちゃくちゃ」(失礼)に聴こえるフリー・ジャズを、有名ないくつものアルバムとは全く別のアングルから楽しめるようになってます。死の直前には灰野敬二とバンド結成の構想もあったという阿部薫、いつもどこか寂し気で物悲しい演奏に聴こえるのは私だけかもしれませんが。『アカシアの雨』もいいけれど、いとこだった坂本九の『ボクの星』なんかを録音してもらいたかった、きっと素晴らしいヴァージョンになったはずです。
フリー・ジャズ CDR 私家版揖斐是方
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YURI MOROZOV ユーリ・モロゾフ (1948-2006) 旧ソ連のアングラ・ザッパ 49枚組ボックス・セット
60年代後半からすでに、ヘンドリックスとビートルズのファンだったこの人物は旧ソ連内で密かに音楽活動を開始していたようです。当局に監視されながら生涯一貫して膨大な音源を残した、まさにソビエト・アンダーグラウンド・シーンのフランク・ザッパ。赤きシド・バレットという形容もされるようですが、その才能、作品量、表現者としての雑食性、スタジオ・ホリックぶりから連想されるのは間違いなくザッパです。サイケデリック、アシッド・フォーク、現代音楽、ガレージ、ノイズ、フリー・ジャズ、ハード・ロック、エクスペリメンタル、ポップスなど、とにかく時代によってどう変貌するのか予想不可能な鬼才、2014年に出たアルバム「チェリー・ガーデン・オブ・ジミ・ヘンドリックス」(録音は1973年)では、サンブリングながらサー・ポール・マッカートニーその人のドラムスも。国営レーベル「メロディア」のスタジオ・エンジニアという職を持ちつつ、ひそかに才能と欲望の赴くままに自らの音楽を追求していった彼の諸作は1988年以降急激に西側諸国にも認知されることとなり、今ではその音源に容易に接することができるまでとなりました。ただ、この人の音楽の特徴は「濃い」の一言。どんなジャンル/スタイルで攻めた盤にしても、「念」の込め方が尋常じゃないように聴こえる笑。それはもちろん、抑圧された環境下での自由を希求した結果に違いありません。何がでてくるか予想もつかない雑多な音楽性ではありますが、ただ一貫してそこに通底するのはサイケデリアであり、楽曲によってはどれだけヘンドリックスが好きなんだと笑ってしまうほどギターの弾き倒しもあるほど。またビートルズへの傾倒も強く、カバー・トリビュート盤もリリースしています。 2019年には、遺族公認による私家版であり、実に49枚にのぼるボックス・セット「ザ・アーカイブス」が日本のみでリリースされています。全世界5セット、ただし、実質販売はわずか3セット(笑)とのことですが、その質・量ともにただただ圧倒されるばかりです。#beatles #jimihendrix #paulmccartney
ロック その他 CD CDR 私家版揖斐是方