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HD-10D (初代 - 初期型)
これまでのホッチキスの5倍の耐久力がある10号ホッチキスとして 1968年に登場、翌年1969年にグッドデザイン賞を受賞した マックス株式会社製の小型スタンダードホッチキス『HD-10D』 50年以上に渡り同社のスタンダードホッチキスとして歴史を積み重ねてきたホッチキス『HD-10D』の初代モデル。その一番初期に登場したのが、このモデルです。 マックスのホームページを見ても『HD-10D』の登場は1968年と紹介されているのですが、登場した当初このモデルの名称は『マックス ホッチキス 10D』愛称として「10デー」(ディーと呼ばないところが昭和的ですが)と称されていました。ホッチキス本体の底にある刻印は「MAX・10D」と刻まれています。 ちなみに商品名称が現在の『HD-10D』となるのは、この後に登場する初期モデルの中期型からとなります。 通常のコピー用紙程度であれば最大20枚まで綴じることが可能。 外 寸 / H51×W21×D104(㎜) 質 量 / 89g 針装てん数 / 100本 とじ 奥行 / 60㎜(最大) 使 用 針 / №10 綴じた紙の裏側に出た針は、山形のメガネ橋のような出っ張りがある「メガネクリンチ」または「ノーマルクリンチ」と呼ばれるスタンダードな形状のものとなります。 針を装てんする際は、上部を開いてマガジン内にある「プッシャ」と呼ばれる白い部品を指で引いて装てんさせます。 装てんされた針は本体の片側面にある窓から残量を見ることができます。 本体の後部には綴じた針を外すことができる「リムーバ―」が備わっています。 以前紹介した『HD-10D』(初代-後期型)と、この初期型との違いは、先に記した本体下部の「MAX・10D」の刻印の他に、ハンドルカバーの上部に刻まれた社名部分です。 ハンドル上部に、やや深めに刻まれた社名に鮮やかな白のインクを差したもの。白いインクが本体に映えているので、社名の「MAX」の文字が大きく立派に見えます。 また、同年代に売られていたホッチキスの商品のパッケージは紙箱のものが多くみられる中で、この製品は透明なプラスチック製ケースに入れられていたことに驚きました。 これまでにない耐久性・高品質そしてデザインをパッケージでも表していたのかもしれません。他とは違う目立つパッケージで他のホッチキスとは全く違うことを全面的に押し出して売り出す。それが後にまで続く人気商品となった要因の一つなのかもしれませんね。 この初代モデル初期型は昭和43年(1968年)から昭和49年(1974年)ごろまで作られていたと思われます。 以前メーカーさんに問い合わせた際、この後に小変更を加えられた「中期型」に変わるのは昭和51年(1976年)とのお話だったのですが、その後オークションで入手した1974年製のものに中期型のものを確認しました。 もっとも、この製品のみでの断定は早計と思われるかもしれません。しかし新商品の登場の時期によっては、初期ロットとして製造されたものが前年の末になることもあります。また、カタログに掲載されるものも登場の時期によっては1年ほど遅くなるケースもあります。 そう考えたとき、実際に小変更を加えられたモデルが登場したのが昭50年であれば、それに間に合うように製造ラインに入ったのが前年。カタログ掲載されたのが昭和51年になってしまった。であるならば、実際の製品と、メーカーに確認していただいたカタログ掲載との時期のずれも分からなくもないのではないでしょうか。 #文房具 #ホッチキス #マックス
ノーマルクリンチ ホッチキス HD-10D マックス株式会社栗下 智
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お手本になったホッチキス Tot50
Swingline製の小型ホッチキス『Tot50』 Tot50というホッチキスはSwinglineにとって革命的な1台でありましたが、日本にとっても画期的なホッチキスでした。 Tot50は1950年に登場して以降、モデルチェンジを経ながら1999年まで製造されました。1999年以降は『Tot』という小型ホッチキスが作られています。 通常のコピー用紙程度であれば最大20枚まで綴じることが可能。 外 寸 / H25×W18×D74(㎜) 質 量 / 40g 針装てん数 / 45本 使 用 針 / №10 (またはTot針) 文房具に詳しい方ならば、ご存知のことかもしれませんがSwinglineの『Tot50』というホッチキスは、日本にとっても画期的な商品でした。 このホッチキスの存在が無ければ、現在の日本の小型ホッチキスは無かったかもしれません。 1951年、米国産業視察団に参加した商社・内田洋行の社長の内田憲民氏が持ち帰ってきた文房具の中のひとつがこのTot50でした。 持ち帰ってきた文房具は、国産化を目指す国内メーカーに紹介、研究開発されました。Tot50を紹介されたマックス株式会社は、これをもとに後のHD-10となる『SYC・10』を開発しました。 今回紹介の『Tot50』は、1950年から1980年まで作られた初代モデル。 非常にコンパクトなこのホッチキスは、日本の小型ホッチキスHD-10と比べても更にひと回り小さいものです。 針を装てんする際は、本体後部の後部にあるボタンによって本体と上部カバーをつなぐ爪を外します。爪を外すと上部のカバーが自動的にスライドし、マガジンが現れます。装てん後はカバーをカチッと音がするまでスライドさせれば装てん完了です。 ちなみに針は通常の10号針を使うことができますが、日本で広く流通しているひとかたまり50本の針はそのまま装てんすることができません。 マガジンには装てんできるのは45本まで。このホッチキスに針を装てんする際には、針を少し減らしておくなどひと手間が必要です。 このホッチキスに関して調べている際、針はTot針もしくは10号針も使える。との表記に違和感を感じていたのですが、専用針と思われるTot針とは、このホッチキスのマガジンに直ぐに収めることのできるように連結されている針が少し少な目になっているパッケージのことなのでしょう。 Tot50という名称にある「50」という表記から針が50本装てんできるものかと思い込んでしまっていました。しかし、この「50」とは、Tot50が誕生した1950年に由来したものでした。 このSwingline『Tot50』に関しては 海外サイト「American Stationer」 https://americanstationer.wordpress.com/2016/09/10/swingline-tot-50-stapler/ にて詳しく解説されております。ご興味のある方はこちらの方も是非ご一読ください。 こちらの記事によると今回紹介したTot50は、この記事の筆者の方が愛用されている1956年から1963年までに作られていたというものと同時期のモデルであることがわかりました。何かこれもご縁を感じます。 #文房具 #ホッチキス #Swingline
ノーマルクリンチ ホッチキス SwingLine Tot50 SwingLine栗下 智