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復活して欲しい中綴じホッチキス TOZIX40
今は廃盤となってしまった中綴じホッチキス プラス株式会社さんから販売されていた『TOZIX40(トジッキス40)』です。 前回紹介した『PLUS40』 https://muuseo.com/ch049zpT/items/22 の本体を活用して作られている派生タイプ。 卓上タイプの中綴じホッチキスは色々ありますが、このホッチキスはその中でもコンパクトなタイプで、手の平から少し大きいくらいのスペースで収まるのに最大30枚中綴じ本ならば120ページの本を製本できる高性能ホッチキスなのです。 サークルで活動報告書を作るなど、簡易製本をする場面でとても大活躍すること間違いなしのホッチキス。しかしながらこのホッチキスは廃盤品なのです。現行品であったならば、そこら中に宣伝して回りたいくらいオススメしたいほどのお気に入り。 復活して欲しいホッチキスは何かと問われたならば、筆頭にあげたい『TOZIX40』。この使い勝手の良さを中綴じ製本好きの皆様と共有したいくらいなのです。 外 寸 / H75×W140×D160(㎜) 質 量 / 535g 針装てん数 / 100本(№35の場合) 使 用 針 / №35または№3 通常のコピー用紙程度であれば最大30枚まで綴じることができます。 沼田エフエム放送(FM‐OZE)にて放送されている「文房具」を語る番組『他故となおみのブンボーグ大作戦!』(https://daisakusen.net/)30分間文房具のことを語るという番組のコーナーでもちょっぴり話題に上がっていたホッチキス。遅くなりましたがこちらでも紹介させていただきたいと思います。 正方形にほど近い台座は、手のひらに収まるくらいの大きさ。テーブルの隅でも十分に使える大きさながら、A3サイズの用紙の中とじもできてしまう。(針の位置を気にしなければA2サイズの中とじもできるかも) 実質とじ奥行のないTOZIX40。コンパクトなのに大判の用紙でも綴じられる秘密は、台座から伸びたアームと本体が一直線上ではなくL字型に設置されていること。これにはなぜ他のメーカーが習わなかったのかと唸りたくなります。 現在流通している卓上型中綴じホッチキス本体の全長は300~500㎜ほど。この半分の大きさで綴じれてしまうなんてあっぱれ!!としか言えません。(用紙分の作業スペースはもちろん必要なのですが……) 中でもお気に入りなのが横から見ると三角形けいじょうに盛り上がった台座。中綴じ本を作るにあたってこの三角形に盛り上がった台座は作業しやすくて大好きなのです。 元々は海外製のホッチキスで三角形になった台座に出会い、中綴じ作業をするのにこの形状がとても効率的だと感じたことが始まりでした。中綴じしやすいようにしたこの形状のものは日本にはないのだよね……。なんて思っていた時にオークションで見かけたまさかの日本製。すでに廃盤品でデッドストック品でしたが速攻飛びつきました(笑)。 届いてからも驚きの連続でした。そのコンパクトさに驚き、使い勝手の良さにさらに驚き。予備としてもう1台購入しておけば良かったと本気で後悔したほどです。 購入した際、本体に付属してPLUS40専用針が付属されていました。現在は廃盤となってしまっている針ですが、№35針が相当品となっています。 ちなみにTOZIX40はPLUS40がベースになっていますので、№3針を使うことも可能です。ただし、№3針を使う場合本体に装てんできるのは1連(50本)のみなので、冊数を作ることを考えると同じ1連でも№35針ならば100本装てんできます。頻繁に補充しなくても済む分№35針の方が勝手は良いとは思いますが好みに合わせて使い分けると良いでしょう。 「中綴じホッチキス」と紹介しましたが、中綴じしかできないわけではなく、平綴じと呼ばれる通常の綴じ方もすることもできます。イチオウ念のため。 #文房具 #ホッチキス #プラス
ノーマルクリンチ ホッチキス TOZIX40 トジッキス40 プラス株式会社栗下 智
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HD-10D (初代 - 初期型)
これまでのホッチキスの5倍の耐久力がある10号ホッチキスとして 1968年に登場、翌年1969年にグッドデザイン賞を受賞した マックス株式会社製の小型スタンダードホッチキス『HD-10D』 50年以上に渡り同社のスタンダードホッチキスとして歴史を積み重ねてきたホッチキス『HD-10D』の初代モデル。その一番初期に登場したのが、このモデルです。 マックスのホームページを見ても『HD-10D』の登場は1968年と紹介されているのですが、登場した当初このモデルの名称は『マックス ホッチキス 10D』愛称として「10デー」(ディーと呼ばないところが昭和的ですが)と称されていました。ホッチキス本体の底にある刻印は「MAX・10D」と刻まれています。 ちなみに商品名称が現在の『HD-10D』となるのは、この後に登場する初期モデルの中期型からとなります。 通常のコピー用紙程度であれば最大20枚まで綴じることが可能。 外 寸 / H51×W21×D104(㎜) 質 量 / 89g 針装てん数 / 100本 とじ 奥行 / 60㎜(最大) 使 用 針 / №10 綴じた紙の裏側に出た針は、山形のメガネ橋のような出っ張りがある「メガネクリンチ」または「ノーマルクリンチ」と呼ばれるスタンダードな形状のものとなります。 針を装てんする際は、上部を開いてマガジン内にある「プッシャ」と呼ばれる白い部品を指で引いて装てんさせます。 装てんされた針は本体の片側面にある窓から残量を見ることができます。 本体の後部には綴じた針を外すことができる「リムーバ―」が備わっています。 以前紹介した『HD-10D』(初代-後期型)と、この初期型との違いは、先に記した本体下部の「MAX・10D」の刻印の他に、ハンドルカバーの上部に刻まれた社名部分です。 ハンドル上部に、やや深めに刻まれた社名に鮮やかな白のインクを差したもの。白いインクが本体に映えているので、社名の「MAX」の文字が大きく立派に見えます。 また、同年代に売られていたホッチキスの商品のパッケージは紙箱のものが多くみられる中で、この製品は透明なプラスチック製ケースに入れられていたことに驚きました。 これまでにない耐久性・高品質そしてデザインをパッケージでも表していたのかもしれません。他とは違う目立つパッケージで他のホッチキスとは全く違うことを全面的に押し出して売り出す。それが後にまで続く人気商品となった要因の一つなのかもしれませんね。 この初代モデル初期型は昭和43年(1968年)から昭和49年(1974年)ごろまで作られていたと思われます。 以前メーカーさんに問い合わせた際、この後に小変更を加えられた「中期型」に変わるのは昭和51年(1976年)とのお話だったのですが、その後オークションで入手した1974年製のものに中期型のものを確認しました。 もっとも、この製品のみでの断定は早計と思われるかもしれません。しかし新商品の登場の時期によっては、初期ロットとして製造されたものが前年の末になることもあります。また、カタログに掲載されるものも登場の時期によっては1年ほど遅くなるケースもあります。 そう考えたとき、実際に小変更を加えられたモデルが登場したのが昭50年であれば、それに間に合うように製造ラインに入ったのが前年。カタログ掲載されたのが昭和51年になってしまった。であるならば、実際の製品と、メーカーに確認していただいたカタログ掲載との時期のずれも分からなくもないのではないでしょうか。 #文房具 #ホッチキス #マックス
ノーマルクリンチ ホッチキス HD-10D マックス株式会社栗下 智
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お手本になったホッチキス Tot50
Swingline製の小型ホッチキス『Tot50』 Tot50というホッチキスはSwinglineにとって革命的な1台でありましたが、日本にとっても画期的なホッチキスでした。 Tot50は1950年に登場して以降、モデルチェンジを経ながら1999年まで製造されました。1999年以降は『Tot』という小型ホッチキスが作られています。 通常のコピー用紙程度であれば最大20枚まで綴じることが可能。 外 寸 / H25×W18×D74(㎜) 質 量 / 40g 針装てん数 / 45本 使 用 針 / №10 (またはTot針) 文房具に詳しい方ならば、ご存知のことかもしれませんがSwinglineの『Tot50』というホッチキスは、日本にとっても画期的な商品でした。 このホッチキスの存在が無ければ、現在の日本の小型ホッチキスは無かったかもしれません。 1951年、米国産業視察団に参加した商社・内田洋行の社長の内田憲民氏が持ち帰ってきた文房具の中のひとつがこのTot50でした。 持ち帰ってきた文房具は、国産化を目指す国内メーカーに紹介、研究開発されました。Tot50を紹介されたマックス株式会社は、これをもとに後のHD-10となる『SYC・10』を開発しました。 今回紹介の『Tot50』は、1950年から1980年まで作られた初代モデル。 非常にコンパクトなこのホッチキスは、日本の小型ホッチキスHD-10と比べても更にひと回り小さいものです。 針を装てんする際は、本体後部の後部にあるボタンによって本体と上部カバーをつなぐ爪を外します。爪を外すと上部のカバーが自動的にスライドし、マガジンが現れます。装てん後はカバーをカチッと音がするまでスライドさせれば装てん完了です。 ちなみに針は通常の10号針を使うことができますが、日本で広く流通しているひとかたまり50本の針はそのまま装てんすることができません。 マガジンには装てんできるのは45本まで。このホッチキスに針を装てんする際には、針を少し減らしておくなどひと手間が必要です。 このホッチキスに関して調べている際、針はTot針もしくは10号針も使える。との表記に違和感を感じていたのですが、専用針と思われるTot針とは、このホッチキスのマガジンに直ぐに収めることのできるように連結されている針が少し少な目になっているパッケージのことなのでしょう。 Tot50という名称にある「50」という表記から針が50本装てんできるものかと思い込んでしまっていました。しかし、この「50」とは、Tot50が誕生した1950年に由来したものでした。 このSwingline『Tot50』に関しては 海外サイト「American Stationer」 https://americanstationer.wordpress.com/2016/09/10/swingline-tot-50-stapler/ にて詳しく解説されております。ご興味のある方はこちらの方も是非ご一読ください。 こちらの記事によると今回紹介したTot50は、この記事の筆者の方が愛用されている1956年から1963年までに作られていたというものと同時期のモデルであることがわかりました。何かこれもご縁を感じます。 #文房具 #ホッチキス #Swingline
ノーマルクリンチ ホッチキス SwingLine Tot50 SwingLine栗下 智
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昔のマックス針
まだJISマークもついていない頃のマックスの針。 この頃の針は、一連と呼ばれるひとかたまりは50本とうたいながらも、実は1割ほど多い一連55本となっていました。 今ほど厳密に製造できる時代ではなかったのかもしれません。少ないのは問題があるけれども、少し多い分にはクレームにならないということでしょうか。昭和時代のおおらかさが感じられます。 HD-10Dのホッチキスには2連100本まで装てんできるというスペックですが、この古い針の2連110本の針でも問題なく装てんすることができるように作られています。 ちなみに、最近のサクリフラット(100本装てん可能)は、100本の針を装填することを前提として作られているので、この古い針を2連装てんすることはできませんでした。
ホッチキスの針 マックス株式会社栗下 智
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FLAT CLINCH (初代HD-10F)
針の綴じ裏が平らになる「フラットクリンチ」。今やフラットクリンチのホッチキスは珍しいものではなくなってきましたが、このフラットクリンチを世界で初めて実現したホッチキスがマックス株式会社の『FLAT CLINCH』こと初代HD-10Fです。 世界初の「フラットクリンチ」機構を搭載したHD-10Fが 1987年に登場。 通常のコピー用紙程度であれば最大15枚まで綴じることができます。 外 寸 / H48×W24×D103(㎜) 質 量 / 121g 針装てん数 / 50本 とじ 奥行 / 45㎜(最大) 使 用 針 / №10 世界で初めて搭載された「フラットクリンチ」 フラットクリンチとは「フラット=平ら」+「クリンチ=打ち曲げる」、つまり「平らに打ち曲げる」ということ。 “ホッチキスで綴じた書類を保存する際に、ホッチキスの裏側の針を金づちで潰してからファイルしている”というお客さんの声を聞いたマックスが開発した「フラットクリンチ機構」です。 針を装てんする際は、本体後部にあるスライドボタンをスライドさせます。 針を入れるマガジンボックスが本体前方から出てくる「フロントローディング」方式になっています。出てきたマガジンボックスを引き出し、針を入れたマガジンボックスをカチッと音がするまで奥に押し込めれば針の装てんが完了です。 装てんされた針はマガジンボックスの側面にある小さな窓から残量を見ることができます。 世界初の機能を搭載したこのホッチキスですが 綴じ裏をイチイチ金づちで潰していたユーザーさんからは大変喜ばれました。 しかしながら、そこまで使い込んでいなかった方からは、この機構の便利さがイマイチご賛同いただけなかったのか、それとも小型ホッチキスとしては高価とおもえる価格だったこともあったのか。フラットクリンチが広く受け入れられるようになるまでには少し時間がかかったように思えます。 本体価格が1,000円という値段という以外にも ・針装てん数が50本 ・フロントローディングという珍しい針の装てん方法 ・綴じる際、ハンドルの一部だけを動かすという特殊な形状 ・最大とじ枚数が15枚とやや少な目 ・本体に強い衝撃を与えると部品が外れてしまいフラットクリンチ機構が働かなくなってしまう ・針を除去するリムーバーが備わっていない 世界初の機構を備えていたからこその少なくない問題点だったかと思いますが、問題点の数々を解決していった結果、今やフラットクリンチ機構を搭載したホッチキスが次々と登場しています。 ホッチキスの歴史に新しいページを記した パイオニアモデルといっていいでしょう。 #文房具 #ホッチキス #マックス
フラットクリンチ ホッチキス HD-10F マックス株式会社栗下 智