DVD「スクープ 悪意の不在」

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 本邦公開が1982年で私はまだ10代でしたから、「悪意」といわれても「相手に対して害を加えようという意思」という一般的な意味だと思い、その数年後、そんな頭の中身のままで本展示アイテム収録作を名画座で観たのですが、それでも特に違和感はありませんでした。と、何でこんな話をするのかというと、後年、必要に迫られて法律の勉強をする羽目になり、法律用語の「悪意」が上記のような意味ではなく、「ある事実について知っていること」ということを知ったのですが、ではそれがこの映画のタイトルに当てはまるのか、ということについて気になり始め、そんなこともあって、いろいろ確認すべく本展示アイテムを入手してしまいました。もっとも、それは中古の廉価品を偶然見つけたから、ということもあったわけですが。
 結論から先に言うと、この作品のタイトルにもある「悪意」は、やはり法律用語の意味と捉えるのは適当ではなかったようです。まあ、冷静に考えると、たかが娯楽映画のタイトルにおよそ一般的ではない意味を示すべくその語を滑り込ませるなど、するはずもないわけで、私の考え過ぎでしたね。
 それで数十年ぶりに観返したわけですが、鑑賞後の印象は、以前に名画座で観たときとは多少異なるものでした。まず、最初に観たときですが、公開当時の宣伝文句は、無実の男が虚実不明なスキャンダル記事によりダメージを受け、失地回復のための逆襲に出る、という感じのもので、まるで本作がある種のサスペンスものであるかのような先入観を持って臨んだものの、実際は地味な展開に終始する演出で、期待していたようなカタルシスも得られず、多少ガッカリして劇場を後にしました。それに対し、数十年を経て本展示アイテムで観たときは、余計な思い込みが排除された分、冷静に臨むことができました。すなわち、情報操作による報道被害という本作の本来のテーマを噛みしめることができたということで、その大きな要因はシドニー・ポラック監督の演出力であることも確認できました。結果として、マイアミ港湾内酒類卸商マイケル・ギャラガー(ポール・ニューマン)、彼の旧友でカソリック系の学校教師テレサ(メリンダ・ディロン)、「マイアミ・スタンダード」紙の女性記者ミーガン・カーター(サリー・フィールド)、FBIマイアミ支部捜査官ローゼン(ボブ・バラバン)、地方検事クィン(ドン・フッド)のどれもが何らかの不利益を被ることになる、特にテレサは…。ということで、これが、だれもが自分なりの正義を行使した果てのことだったというのが、もしかしたら現代社会の矛盾の一つの側面であり、さらには本作製作から約40年を経過した今においてもこの問題は克服されていないどころか、ネットの普及により、さらに深刻化しているのではないか、そんなことを思わせてくれる示唆に富んだ作品でした。
https://www.youtube.com/watch?v=wlv5cB74KEg
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