私が愛したウルトラセブン

0

 本アイテム収録作は、『ウルトラセブン』に脚本家として参加した市川森一が、同番組のヒロイン・友里アンヌを主役として、ドラマ構成のために導入したフィクションを交えながら、『ウルトラセブン』の撮影秘話と出演者や制作スタッフの青春群像を描いた作品で、1993年2月13日に第1部「夢で逢った人々」、20日に第2部「夢見る力」が放映されました。ちなみに、この4年前に『ウルトラマンをつくった男たち 星の林に月の舟』というやはり『ウルトラマン』に監督・脚本家として参加した実相寺昭雄原作のドラマがすでに制作・放映されていたので、本アイテム収録作である『私が愛したウルトラセブン』制作の報道をスポーツ紙か何かで目にしたときは、『ウルトラマンをつくった男たち…』のセブン版だろう、という程度の認識で、ただ放送局がTBSではなくNHKとあったのは少し奇異な感じはしました。もっとも、これ以前にNHK-BSで過去のウルトラシリーズ作品の放映などがされていましたので、最早ウルトラ作品は放送局の垣根を飛び越えた存在になっていたのでしょう。この翌年に制作された『ウルトラセブン〈1994 TV SPECIAL〉太陽エネルギー作戦』や『ウルトラセブン〈1994 TV SPECIAL〉地球星人の大地』の放映は日本テレビでしたしね。
 それはともかくとして、この番組を私はオンエアー時、さらにその際に録画したビデオを後日数度観ました。当然、様々な感想・感慨を抱くに至ったのですが、わかりやすいのが『ウルトラマンをつくった男たち…』と『私が愛したウルトラセブン』との比較ですかね。前者は前述のとおり1989年放映、すなわちバブル期の制作で巷の雰囲気を反映したのか明るい印象の作風となっていました。『ウルトラマン』という作品自体も金城哲夫ワールド全開の明るい雰囲気が基本的には貫かれていましたしね。それに対し、後者は1993年放映、すなわちバブルが弾けた後の制作でそのことを反映したわけではないのでしょうが、織り込まれたフィクションのエピソードも脚本家が主演女優と密会の帰路に交通事故で死亡、主演男優の恋人との別離、米軍脱走兵を匿うなどで、そのことも相まって必ずしも明るい印象の作風ではありませんでした。そして、『ウルトラセブン』という作品自体も「ハッピーエンドの作品が1本もなかった」という旨を市川氏がのちに振り返っていたように、『ウルトラマン』ほどには明るい雰囲気というわけではなかったですね。もっとも、市川氏の言う「ハッピーエンドがない」とか、ベトナム戦争や東大闘争などの時代背景が作風に反映しているという研究家の評価は考え過ぎ、という気もしますが…。
 さて、本アイテム収録作についてです。あらすじは6及び7番目の画像にある文を読んでいただくとして話を進めますが、率直に面白かったですし、好きな作品です。下記のタグにも表記しますがキャストの顔触れはそれなりに豪華であり、演出はノスタルジックな雰囲気を漂わせたものでしたが、そこを効果的に支えたのが宮川彬良氏の音楽でした。あとオリジナル作品を一部再現している部分もあるのですが、特撮の部分などは当時の映像を使用しつつ、隊員たちが登場する場面は今回のキャストが実際にその場面を再現して演じ、それらを組み合わせるというなかなか凝ったこともなされています。また、上原正三氏による『ウルトラセブン』の未映像化脚本「300年間の復讐」の一部が今回のキャストが参加して映像化されており、それに伴い登場するトーク星人と甲冑人間も新たにデザインされ、登場しているなどのことがよく知られていますが、それはいいでしょう。
 『ウルトラセブン』の番組制作では市川氏自体は当事者の一人であり、本アイテム収録作では自身の分身といえる存在を登場させていますが、まあ狂言回しのような役回りで、冒頭に紹介したとおりアンヌ隊員が主人公の構成になっています。市川氏は「自分にはアンヌを書かせてもらえなかった」という旨を発言したりしていましたのでその意味も込められていたのかもしれませんが、本アイテム収録作のキーワードは第1部及び第2部のタイトルいずれにも使われている「夢」であり、そのことを表現していく手段として、実際にあったアンヌ隊員の配役交代と絡めることで、前述の構成にしたのでしょう。「夢」とは平たく言えば『ウルトラセブン』のことであり、第1部では夢の実現への奮闘努力模様が、第2部では夢の終息模様が描かれるのですが、田村英里子演ずるアンヌはその夢にどっぷりと漬かり、他のウルトラ警備隊のメンバーが次の仕事の話などをちらほらしている中で、その夢に固執し続けます。もちろん、本人もその夢はもうすぐ覚めてしまうことは認識しているのですが。そして、アンヌがギターを奏でながらウルトラセブンの主題歌を歌う、というこのドラマのもっとも有名なシーンや、『ウルトラセブン』の撮影・収録が終了し、打ち上げで起こした焚火の周囲をスタッフが盆踊りのように踊るシーン、そして彼らが少しずつ消えていくのを見てアンヌが「消えないで!」と吐露するシーン、ラストの翌朝燃え残りの中からウルトラセブンの飛行スタイルの人形を取り出して円谷プロを去るアンヌのシーンとなり、「夢」は本当の夢となりました。
 後の満田監督の「このドラマ自体は100%フィクション」という旨の発言や、ろくに各エピソードで言わんとしたことを理解せずに撮影した旨をひし美ゆり子氏が著書やDVDなどで述懐していることを知ることとなるわけですが、本アイテム収録作をオンエアーで観てしばらくは、少なくともひし美氏のウルトラセブンに対する思いは、田村英里子演ずるアンヌと近いものがあったのだろうという、勝手な思い込みがありました。そして、その思い込みが翌年放映された『太陽エネルギー作戦』のラストで、ひし美氏演じるアンヌがセブンを見上げて「ダン!」と言わずに「ウルトラセブンありがとう」と言ってしまったことへの落胆を助長させてしまいましたね。
#DVD #私が愛したウルトラセブン #ウルトラセブン #トーク星人 #ピット星人 #ゴース星人 #パンドン #市川森一 #宮川彬良 #田村英里子 #松村雄基 #日向薫 #仲村トオル #香川照之 #佐野史郎 #田口トモロヲ #ライオネス飛鳥 #梨本謙次郎 #布川敏和 #塩見三省 #別所哲也 #天本英世 #財津一郎 #ひし美ゆり子 #鈴木清順 

Default
  • File

    woodstein

    2020/02/01

     添付ブックレットの追加画像その1

    File
    返信する
  • File

    woodstein

    2020/02/01

     添付ブックレットの追加画像その2

    File
    返信する
  • File

    woodstein

    2020/02/02 - 編集済み

     DVD宣伝用チラシの追加画像

    File
    返信する
  • File

    woodstein

    2020/02/06

     第1部「夢で逢った人々」お早めにどうぞ
    https://www.youtube.com/watch?v=xqrDvywSzVw&t=102s

    返信する
  • File

    woodstein

    2020/02/06

     第2部「夢見る力」お早めにどうぞ
    https://www.youtube.com/watch?v=0F9LpFy5Nxk

    返信する
  • Animals 16

    Jason1208

    2020/02/06

    米軍脱走兵をウルトラセブンの着ぐるみを着せて、隠して脱走させるといのは、“やりすぎ”みたいな感じがしました。^^;
    怪獣はともかく、ヒーローは演者(上西氏他)に合わせたサイズで作られますので。
    (ゴーン氏もこの手を使って出国したら、支持を得られた……ナイナイ)

    返信する
    • File

      woodstein

      2020/02/06

       Jason1208さん、コメント有難うございます。まあ、市川森一氏によるフィクションですからそう目くじらを立てることもないと思いますが、セブンの着ぐるみのサイズが合わないことについては以下のような想像をしてみました。
       『ウルトラ警備隊西へ』前後編ではセブンのスーツアクターが上西弘次氏ではなく、のちに『帰ってきたウルトラマン』でウルトラマンのスーツアクターを務めたきくち英一氏が代役で出演したのですが、上西氏の使用していたセブンスーツのサイズが合わなくて、新宿御苑のアクアラング屋に行き、自身の体形に合うセブンスーツを新調した、という旨がきくち氏の著書に記載されていました。ちなみに、上西氏の身長は172センチ、他方きくち氏は178センチで、きくち氏用のセブンスーツはその後使用されなかったでしょうから、そのスーツを米軍脱走兵用に流用した、なんていうのはどうでしょうか。
       あとゴーンの国外脱走については、言及し出すと各方面への憤りがこみ上げてきますので、この場では触れません。

      返信する
  • File

    Tera-tan

    2020/08/31

    いつも「いいね」ありがとうございます!
    いまいち「いいね」の増やし方わかりませんが、これからも頑張ります!

    返信する