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どくとるマンボウ航海記/北 杜夫
新潮文庫 北 杜夫(1927年5月1日 - 2011年10月24日)は、日本の小説家、エッセイスト、精神科医、医学博士。1958年、水産庁の漁業調査船照洋丸に船医として乗船し、インド洋から欧州にかけて航海、この体験に基づく旅行記的エッセイ『どくとるマンボウ航海記』が同年に刊行されると、従来の日本文学にない陽性でナンセンスなユーモアにより評判となり、ベストセラーとなります。その後ナチス・ドイツの「夜と霧作戦」をモチーフにした『夜と霧の隅で』で、1960年に芥川賞を受賞しました。 『どくとるマンボウ航海記』(1959年)は、のどかな笑いをふりまきながら、ボロ船に乗って海外旅行に出かけたどくとるマンボウが、独自の観察眼でつづる旅行記。
文庫本 新潮社 140円 1970年代ts-r32
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李陵・山月記/中島 敦
新潮文庫 中島 敦(1909年5月5日 - 1942年12月4日)は、日本の小説家。『李陵』他いくつかの作品は、遺作として没後発表されました。漢文調の格調高い端正な文体とユーモラスに語る独特の文体を巧みに使い分けています。没後1948年、『中島敦全集』全3巻が筑摩書房から刊行され、毎日出版文化賞を受賞。以後、国語教科書に『山月記』が多く掲載されたため広く知られた作家となりました。 『李陵』は、『漢書』(「李広蘇建伝」「匈奴伝」「司馬遷伝」)、『史記』(「李将軍列傳」「太史公自序」)、『文選』(「答蘇武書」「任少卿報書」)等を典拠とした短編小説。没後の1943年、『文學界』に発表されました。前漢の武帝から昭帝の時代、匈奴と戦い俘虜となった李陵のことを中心として描かれています。李陵、司馬遷、蘇武の3名が主要人物として登場します。 『山月記』は、1942年に発表されたデビュー作。唐代、詩人となる望みに敗れて虎になってしまった男・李徴が、自分の数奇な運命を友人の袁傪に語るという変身譚で、清朝の説話集『唐人説薈』中の「人虎伝」が素材になっています。「山月記」の題名は、虎に変わった李徴が吟じる詩の一節「此夕渓山対明月」から取られています。
文庫本 新潮社 140円 1970年代ts-r32
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人間失格/太宰 治
新潮文庫 太宰 治(1909年6月19日 - 1948年6月13日)は、自殺未遂や薬物中毒を克服し、第二次世界大戦前から戦後にかけて多くの作品を発表。没落した華族の女性を主人公にした『斜陽』はベストセラーとなります。その作風から坂口安吾、織田作之助、石川淳らとともに新戯作派、無頼派と称されました。主な作品に『走れメロス』『津軽』『お伽草紙』『人間失格』があります。 『人間失格』は、1948年に書かれた中編小説。他人の前では面白おかしくおどけてみせるばかりで、本当の自分を誰にもさらけ出すことのできない男の人生(幼少期から青年期まで)をその男の視点で描いています。体裁上は私小説形式のフィクションでありつつも、主人公の語る過去には太宰自身の人生を色濃く反映したと思われる部分があり、自伝的な小説とも考えられていす。戦後の売り上げは新潮文庫版だけでも累計発行部数670万部を突破しており、夏目漱石の『こころ』と何十年にもわたり累計部数を争っています。
文庫本 新潮社 140円 1970年代ts-r32
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友情/武者小路実篤
新潮文庫 武者小路実篤(1885年5月12日 - 1976年4月9日)は、日本の小説家・詩人・劇作家・画家。1910年に志賀直哉、有島武郎、有島生馬らと文学雑誌『白樺』を創刊。彼らは白樺派と呼ばれ、実篤は白樺派の思想的な支柱となります。1918年には理想的な調和社会、階級闘争の無い世界という理想郷の実現を目指して、宮崎県児湯郡木城村に「新しき村」を建設しました。そのような理想主義的・空想社会主義的行動には現実離れしているという批判もありましたが、その作品は必ずしも思想的背景に依るものではなく、現代に至るまで広く一般に読まれています。 『友情』は、1919年に大阪毎日新聞に掲載された小説。本作執筆当時作者は、すでにいくつかの小説、戯曲によって文壇に確固たる地位を得ていましたが、その一方で「新しき村」に移り住み、そこで執筆を行っていました。1920年に単行本が重版されたのに伴って「この小説は実は「新しき村」の若い人たちが今後、結婚したり失恋したりすると思うので両方を祝したく、また力を与えたく思って書き出した」と述べています。
文庫本 新潮社 140円 1970年代ts-r32
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田園交響楽/ジッド
新潮文庫 アンドレ・ポール・ギヨーム・ジッド(André Paul Guillaume Gide, 1869年11月22日 - 1951年2月19日)は、フランスの小説家。作品には、生涯の妻であったマドレーヌの影響が色濃く、『背徳者』、『狭き門』などに彼女を思わせる女性が登場しています。 1945年にゲーテ勲章授与。1947年にノーベル文学賞を受賞しましたが、1951年、パリで没後、著作はローマ教皇庁により、禁書に認定されました。 『田園交響楽』(La Symphonie pastorale)は、自身の信仰の危機と夫婦間の危機という困難な状況を経て、1919年に発表された小説。マタイによる福音書15:14にあるイエスの「盲人が盲人の道案内をすれば、二人とも穴に落ちてしまう」という言葉をモチーフにした作品。
文庫本 新潮社 140円 1970年代ts-r32
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はつ恋/ツルゲーネフ
新潮文庫 イワン・セルゲーエヴィチ・ツルゲーネフ(Ивáн Серге́евич Турге́нев、1818年11月9日 - 1883年9月3日)は、ドストエフスキー、トルストイと並んで、19世紀ロシア文学を代表する文豪。パリで、西欧の作家・芸術家たちとの幅広い交友関係を築き、西欧へのロシア文学の紹介に大きな役割を果たしました。 日本では二葉亭四迷によって翻訳・紹介され、国木田独歩や田山花袋らの自然主義に大きな影響を与えました。 『はつ恋』(Первая Любовь)は、1860年に雑誌『読書文庫』に発表された中編小説。半自伝的性格を持ち、作者が生涯で最も愛した小説と言われています。 作中で主人公の父が残した言葉「女の愛を恐れよ。この幸福を、この毒を恐れよ...」はツルゲーネフの父が彼に語っていた言葉。ツルゲーネフが生涯独身を通した事も主人公のそれと符合します。
文庫本 新潮社 140円 1970年代ts-r32
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人間ぎらい/モリエール
新潮文庫 モリエール(Molière、1622年1月15日 - 1673年2月17日)は、17世紀フランスの俳優、劇作家。コルネイユ、ラシーヌとともに古典主義の3大作家の1人。本名ジャン=バティスト・ポクラン(Jean-Baptiste Poquelin)。鋭い風刺を効かせた数多くの優れた喜劇を制作し、フランス古典喜劇を完成させました。 『人間嫌い:あるいは怒りっぽい恋人』(Le Misanthrope ou l'Atrabilaire amoureux)は、1666年発表、パレ・ロワイヤルで同年6月4日初演。 モリエールは高貴な宮廷人や知識人でも、平民でも楽しめるような作品を書くことを念願とし、この作品でそれを試しました。その結果、前者には好評を博しましたが、後者には不評を買い、モリエールの期待は裏切られ、本作を基点に作風を転換することとなります。
文庫本 新潮社 140円 1980年代ts-r32