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Crotalocephalina (Pilletopeltis) japonica
日本にもデボン紀の地層が少ないながら存在し、モロッコのCrotalocephalusに近縁の種類が産出していた時期がありました。岐阜県の福地が比較的有名ですが、福井県の上伊勢でも同種が産出していましたが、いずれも現在では採取できません。1970年代に採掘されたこの標本は頭部だけですが、かつては佃煮状に産出したようです。推定する体長は10㎝を超える立派な三葉虫だった様です。剖出は分離が悪く熱処理を行ったとのことですが、途中でボロボロになってしまうケースも多かったそうで、この標本も裏面がレジンで補強されています。
Lower Devonian Cheiruridae,Cheirurina,Phacopida TRI-560 Kamianama(上穴馬層)Trilobites
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Foulonia sp.
Cheiruroidea(超科)の仲間において珍しく幅広な体形をしています。圧縮されている訳ではありませんが、扁平に近い平坦な体形をしていて、頭部の膨らみがあります。バランスの取れたデザインで、見た目が美しい種類だと思います。群れで暮らしていた様で、しばしば複数の個体が載ったプレートやAsaphellusなど他種とも共生していたのか、異種共生プレートも見かけます。
Ordovician Cheiruridae,Cheirurina,Phacopida TRI-65 Upper FezouataTrilobites
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Eccoptochile almadenensis
Eccoptochileという種類は、モロッコ産の立体的で大型の種類が知名度はあると思いますが、地中海を挟んだ欧州でも産出します。モロッコ産と同様に丸みを帯びた太くて短い棘が特徴です。モロッコ産もそうですが、産出量が少ないことで知られ、ポルトガル産で実物を見られる機会は限られます。
Middle Ordovician Cheiruridae,Cheirurina,Phacopida TRI-413 ValongoTrilobites
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Eccoptochile mariana
Eccoptochileは、棘が丸みを帯びている為、見た目がとても可愛らしい種類です。ポルトガルやフランスなど地中海を挟んだ欧州の対岸でも見つかりますが、数は極めて少なく立体的な姿では見つからない産状です。モロッコ産も多産する訳ではないのですが、Eccoptochileを入手するには一番手に入りやすい産地で、10㎝クラスの大型の個体も産出しました。特徴的な尾部の丸い棘だけでなく、頬棘までもが丸く尖っていません。
Upper Ordovician Cheiruridae,Cheirurina,Phacopida TRI-438 Ktaoua GroupTrilobites
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Cheirurus sp.
Jorf最希産種の一つです。これより一回り以上小型の個体は偶に見かけますが、このサイズの個体はほんの僅かな期間に採取できただけでした。Cheirurus sp.もそうですが、まだ正式な名称が決定されておらず、CrotarocephalinaやCyrtometopusなど仮称で呼ばれます。姿としては、CyrtometopusとCrotalocephalusを足して二で割ったような姿です。異なるのは、大きさが巨大である事、触ると痛い位に背中が三角に尖っています。実に存在感のある種で、神秘性やカリスマ性をも持ち合せております。数あるモロッコ産の三葉虫の中でもトップクラスにカッコよい種類だと思います。
Lower Devonian Cheiruridae,Cheirurina,Phacopida TRI-444 -Trilobites
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Ceraurus pleurexanthemus
北米オルドビス紀を代表する美しい種類です。ニューヨーク州にあるWalcott-Rust採石場は、バージェス頁岩を発見した事で有名なCharles D.Walcott(1850-1927)によって研究されていた伝説の産地であり、Walcottは、この地で最も多く産出する三葉虫である本種から、付属肢に関して研究成果を残しています。半世紀以上所在が埋もれてきましたが、1990年代になってThomas E. Whiteley氏らにより再び発見、採掘されており、市場にも姿を見せるようになりました。
Upper Ordovician Cheiruridae,Cheirurina,Phacopida TRI-315 Rust(Rust Limestone, Denley Formation, Trenton Group)Trilobites
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Crotalocephalina secta
Geracephalinaとも呼ばれます。頭部だけの部分化石なのですが、掘りが深く一目見たら忘れられない印象的なデザインをしています。大型化した種類で、もし完全体があれば10㎝を超え、全体像のイメージはJorfのCheiruridae sp.に近いと思います。国産三葉虫で、だれが見てもこれは凄いなと思わせる種類は少ないので、本種の様なインパクトの強い種類は世界の三葉虫を見てきましたが、日本を誇れる種の一つだと思います。
Lower Devonian Cheiruridae,Cheirurina,Phacopida TRI-565 -Trilobites
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Crotalocephalina secta
Geracephalinaとも呼ばれます。大型化した種類で、もし完全体があれば10㎝を超える日本離れした三葉虫だったと思います。全体像のイメージはJorfのCheiruridae sp.に近いです。尾部のみの部分化石ですが、鉤状の鋭い棘の尾が3対出ています。これ程、特徴的な尾を持つ種類が日本にいた事が驚きです。
Lower Devonian Cheiruridae,Cheirurina,Phacopida TRI-565-2 FukujiTrilobites
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Cyrtometopus sp.
モロッコのCheiruroidea(超科)の中でも数が少ない種類です。まるで牙の様な1対の短い突起が出ていますが何の為に必要な装備だったのか想像するよりありません。全く同じ姿で、牙の無い別の種類と思われるものも見かけます。尾部も特徴的で針状に長い棘で構成されていて、見た目も美しいと思います。この標本は、米国「Extinctions」の手がけた標本で、波目状の母岩処理がしてあり、標本を浮き立たせており、プレパラーターの遊び心と思いますが、センス良く仕上がっています。
Cheiruridae,Cheirurina,Phacopida TRI-151 - Mader,MoroccoTrilobites