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Rusophycus Pudicum
Rusophycus Pudicum(三葉虫の休息痕)とされる化石であり、所謂、「三葉虫の巣穴」です。泥の中で脚を動かしていたので、左右に分かれる特徴的な形状になります。主が居なくなった後に泥に埋まり保存されるのですが、不思議な事に一緒に三葉虫本体が埋まっている化石を見た事が無いので、本当に三葉虫のものなのか疑問は残ります。周辺部も良く見ると小さな生物が這って回った状態が、そのまま残されており、化石化する事の無かった軟体生物の痕跡である事が分かります。Waldron Shaleという事で、DalmanitesやCalymeneの可能性はありますが、これらの三葉虫が産出するエリアとは違う場所の化石であります。
Upper Silurian Rusophycus Pudicum TRI-712 Waldron ShaleTrilobites
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Maurotarion christyi
三葉虫の化石というよりBrachiopods(腕足類)の化石といった方が正解かもしれません。シャコガイを小さくした様な大きな畝のあるBrachiopodsが20個体ほど散らばります。よく見るとPlatyostoma(巻貝)や三葉虫の胸部、頭部の一部、ハイポストマなどが確認できます。化石自体は黄鉄鉱化(Pyritized)しており、黄金色に輝きます。ブルースプリング採石場から産出したシルル紀の海底が想像できる美しい標本です。現在、ブルースプリング採石場は水没していて新規に採取することは出来ないそうです。
Upper Silurian Aulacopleuroidea,Aulacopleuroidea,Proetina,Proetida TRI-262-2 Waldron ShaleTrilobites
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Dalmanites rutellum
アーバックル山脈から産出するシルル紀の三葉虫は、独特の白系母岩の美しい化石が産出します。Calymene claviculaやFragiscutum glebalisなどが他に知られ、Dalmanitesは産出量としては希産です。産状として何故か丸まった個体しか出てきません。Fragiscutumも同様に丸まった個体しか産出しないので、化石化する過程で防御する猶予があったのかもしれません。後の時代のデボン紀Haragan累層Huntoniaは、同じオクラホマ州で子孫である可能性は高いです。
Upper Silurian Dalmanitidae,Dalmanitoidea,Phacopina,Phacopida TRI-581 HenryhouseTrilobites
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Fragiscutum glebale
小型の種類で、体の大きさに比べ比率が多い大きな飛び出た複眼に、頭鞍にはゴツゴツと大きな顆粒が沢山あるのがが特徴的です。シルル紀の代表的なイチゴ頭のエンクリヌルスですが、アールバックルマウンテン独特の透明感ある白系の化石が、この種の魅力を引き立てています。この種類は真直ぐ伸びた標本には、まず出会うことが出来ません。
Upper Silurian Encrinuridae,Cheirurina,Phacopida TRI-336 HenryhouseTrilobites
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Otarion diffractum
Otarionいうとモロッコ、ドイツ(Eifel)、アメリカ(Oklahoma)で見つかるデボン紀のCyphaspisも昔はOtarionと呼ばれていました。同じAulacopleuroidea(超科)ですので、デボン紀のCyphaspisの先祖と言えますが、本種は立体感が無いので、別物に見えてしまうかと思います。中葉から伸びる特徴的な棘はこの種類では見当たりませんが、鋭い頬棘は既に持っていました。この種類の標本は自在頬が欠損している標本が非常に多いのですが、この標本には残っています。Harpidella misera (Hawle & Corda, 1847)という呼称の種類とは同一種と思われます。以前はチェコ産の中で入手しやすい種類だったのですが、絶産して時間が経ちますので、近年は入手難易度が高くなりました。
Upper Silurian Aulacopleuridae,Aulacopleuridea,Proetida TRI-106 KopaninaTrilobites
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Bohemoharpes ungula
完全ではない頭部のみの部分化石のネガですが、この種類の本当に完全体など世界に数点あるかないかのレベルだと思われます。ボヘミア地方(Bohemia)のHarpesという意味の名称由来だと思われ、チェコ産の図鑑を見てみると体形はEoharpesとそっくりですが、頭部のツブツブがBohemoharpesの方が細かいことが分かります。裏側(3,4枚目)にも頭部の一部が残されています。
Upper Silurian Harpetidae,Harpetioidea,Harpida TRI-435 KopaninaTrilobites
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Alcymene neointermedia
嘗て日本でもシルル紀の事をゴトランド紀と呼んでいた事もある程、シルル紀における重要な産地ゴトランド島、島全体が石灰岩と言われ、三葉虫も産出したのですが、ゴトランド島の三葉虫は完全体が少なく、状態の良い標本の入手は苦労する産地であります。ゴトランドからは、数多くのカリメネが報告されているのですが、明確な違いは状態の良い標本でも難しいレベルだと感じます。本種は、独立した属名が与えられているのですが、外見に大きな違いは学者レベルでなければ論文からでも分かり難いです。既に採掘できないゴトランド産では数少ないクリーニングが近年になってからされている標本なので、細部の保存状態はとても良い個体です。Alcymeneと同定されている標本は、実は世界で見ても数個体レベルと言われています。
Upper Silurian Calymenidae,Calymenina,Phacopina,Phacopida TRI-642 AhrdorfTrilobites
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Sthenarocalymene celebra
インディアナ州産がこの種類の代表的な産地ですが、この標本は隣のウィスコンシン州産です。ウィスコンシン州で本種は、「州の化石(state fossils)」となっています。アメリカでは全ての州では無いですが、州の化石(state fossils)が制定されており、名だたる化石に交じり3つの州で三葉虫が制定されています。因みに他の2種は、オハイオ州のIsotelus maximus、ペンシルベニア州のEldredgeops(Phacops) ranaです。アメリカで他にも州の鉱物、貴石は勿論、昆虫、馬、豆、更にクッキー、モットーなど面白い象徴制定があります。日本でも県の鳥、花などがあると同じなのですが、国が違えば象徴も変ってきます。 【参考リンク】WIKIPEDIA:List of U.S. state fossils https://en.wikipedia.org/wiki/List_of_U.S._state_fossils
Upper Silurian Calymenidae,Calymenoidea,Calymenina,Phacopida TRI-28-2 Hartung QuarryTrilobites
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Japonoscutellum japonicum
「日本のスクテラム」と名付けられたスクテラムの頭鞍の標本です。見慣れていないと、これが三葉虫の一部であると気が付かないような標本です。スクテラムの仲間はモロッコ産で多産するイメージがありますが、モロッコに於いても相対数は少なく、それは国産に於いても同様の貴重度であります。更に珍しい所として、スクテラムは後世のデボン紀に繁栄しましたが、シルル紀におけるスクテラムの仲間は、産出例が横倉山以外では世界的に見ても少なく、初期のスクテラムの仲間の姿として注目すべき存在に思います。
Upper Silurian Styginidae,Illaenoidea,Illaenina,Corynexochida TRI-593-2 Yokokurayama(G3)Trilobites
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Japonoscutellum japonicum
国内における最古の地層の一つとして、シルル紀研究の記念碑的存在の横倉山。昭和40年代までは土佐桜と呼ばれる建築材の産地として知られていました。化石についても1970年代〜80年代にかけ採掘が進みましたが、現在では採取が出来ない状態とのことです。三葉虫も30種以上の報告がありますが、完全体ではなく、部分化石として見つかるのが一般的であります。「日本のスクテラム」と名付けられたスクテラムの尾部の標本ですが、今となっては貴重な標本となりました。
Upper Silurian Styginidae,Illaenoidea,Illaenina,Corynexochida TRI-593 Yokokurayama(G3)Trilobites
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Proetus sp.
国内のシルル紀を代表する産地、横倉山で産出したProetusの仲間は、P.subovalis、P.subcarinatus、P.sugiharensis、P.magnicerviculus、Decoroproetus granulatusが知られていますが、本標本の小種名は同定されていません。ペルム紀まで長きに渡り生き残ったProetusの仲間ですが、シルル紀はまだ出現初期の段階であり、地味な存在で優勢的な立場でもありませんでした。この標本は尾部のみですが一目でProetusであることが分かり、既に確立した姿をしていたことが分かります。 嘗て良質な建材として持て囃された、土佐桜の薄い桃色をした石灰岩の特徴が良く表れた標本です。
Upper Silurian Proetoidea, Proetida TRI-594 Yokokurayama(G3)Trilobites
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Sphaerexochus hiratai
高知県にある横倉山は、かつて国内では数少ないシルル紀の化石産地として知られました。ここから産出する三葉虫は国内採取者の憧れの存在であったと聞きます。今は採取できないため、この産地の古い標本は入手が難しい状況です。Sphaerexochusという種類は、シルル紀からオルドビス紀にかけて生息したファコプスの仲間ですが、どちらの時代でも世界的にも産出量が少ないと言えます。特にシルル紀のSphaerexochusは、世界各地で産出はするものの完全体は図鑑の中の存在でしかありません。本標本は、最大の特徴である丸く膨らんだ頭鞍だけの部分化石ですが、愛嬌のある顔を想像することができる標本です。
Upper Silurian Cheiruroidea,Cheirurina,Phacopida TRI-633 Yokokurayama(G3)Trilobites
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Encrinurus fimbriatus
福地といえば最盛期はデボン紀の印象が強いですが、三葉虫においてシルル紀からペルム紀まで広い時代の報告があります。本種は、福地でも最も初期の三葉虫であり、世界的にシルル紀を代表する種類のEncrinurusの仲間です。国内では他に岩手などでも同種は産出します。尾部のみの部分化石ですが、本種の特徴的な尾部の畝など確認することができます。
Upper Silurian Encrinuridae,Cheiruroidea,Cheirurina,Phacopida TRI-568 Yoshiki(吉城層)Trilobites