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Housia vacuna
カナダの三葉虫、ハウシア・バクナ (Housia vacuna) です。旧分類ではアサフスの祖先とされており、McKayグループの中では、実際一番アサフスっぽい見た目をしております。角がやや角張った楕円形の形態は、後の時代の、オルドビス紀のプレスヴィニレウス (Presbynileus) やプティオセファルス (Ptyocephalus) などを思わせるフォルムであります。ただし、近年の分類ではアサフス目ではなく、オレヌス目に組み分けされているようです。 市場レベルでは近年見かけるようになった、Mckay groupの種の中では、何故だか昔から販売されている種でもありました。しかし、質の良くないぼやけた標本が多く、購買意欲が起こらず敬遠しておりました。最近Mckayの他の種が市場に出てくるに伴い、本種も良質な標本が出てくるようになった印象です。 と言いつつも、本標本に関しては表面がだいぶ荒れてしまったおり、ベストな標本というわけではありません。ただ、本種にしてはサイズは大きめであり、最低限の構造は確認はできるのかなと思います。
Upper Cambrian (Furongian, Jiangshanian) Mckay Canada (産地情報喪失) Housia vacunatrilobite.person (orm)
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Sphaerexochus britannicus
当ミュージアムのエントランスのアイコンにもなっている三葉虫です。 この不思議な形状の芋虫のような三葉虫は、スファエロクソクス・ブリタニクス (Sphaerexochus britannicus) 。ブリタニクスの名が示す通り、英国の種であります。英国のウースターシャー (Worcetershire) のマルヴァン (Malvern) の産です。 マルヴァンはユネスコジオパークにも登録されている、シルル紀の重要産地であります。地理的に近く採掘が禁じられているダドリー (Dudley) と共に、英国の古典的産地として有名であり、今やそれら産地の化石が市場に出回る機会は限られています。 スファエロクソクスは大きく膨らんだ頭部を特徴とし、胸部は芋虫のようで、尾部は丸いフリルのような構造を持ち、やや地味な見た目ながら、良く見ると実に奇妙で面白い種でマニア受けする種かと思います。他に、スウェーデンや国内でも類似種が産出する事が知られていますが、頭部や尾部だけの部分化石が大半です。 本種は部分化石すら市場に出回る事は珍しく、特に胸部が何故か非常に残りづらい為、このような全身が揃った完全体は世界的にも極めて貴重です。シルル紀を代表する三葉虫の一つでありながらも、独特な形状を持つ超希少種と言えるかと思います。 追記(2023/3/5): Sphaerexochus mirusという、本種に極めてよく似た (もしくは同じ) 種がおり、例えば、英国三葉虫書籍Trilobites of the British Islesには、Sphaerexochus mirusの方しか掲載されていません。 これに関して、S. britannicusとS. mirusは、同一種であるという説 (Thomas AT. British Wenlock trilobites. Part 2. Palaeontographical Society Monographs (London) 1981;134:57–99.) と、尾部の形状から異なる種であるという説 (Ramsköld L. Silurian cheirurid trilobites from Gotland. Palaeontology (Oxford) 1983;26:175–210.) があり、意見が割れているようです。 ここでは、提供者氏からの学名のまま、S. britannicusの方を採用して記載をしておきます。
Silurian, Homerian Coalbrookdale shales, Wenlock limestone fm Malvern, Worcestershire, UK Sphaerexochus britannicustrilobite.person (orm)