Sphaerexochus britannicus
当ミュージアムのエントランスのアイコンにもなっている三葉虫です。
この不思議な形状の芋虫のような三葉虫は、スファエロクソクス・ブリタニクス (Sphaerexochus britannicus) 。ブリタニクスの名が示す通り、英国の種であります。英国のウースターシャー (Worcetershire) のマルヴァン (Malvern) の産です。
マルヴァンはユネスコジオパークにも登録されている、シルル紀の重要産地であります。地理的に近く採掘が禁じられているダドリー (Dudley) と共に、英国の古典的産地として有名であり、今やそれら産地の化石が市場に出回る機会は限られています。
スファエロクソクスは大きく膨らんだ頭部を特徴とし、胸部は芋虫のようで、尾部は丸いフリルのような構造を持ち、やや地味な見た目ながら、良く見ると実に奇妙で面白い種でマニア受けする種かと思います。他に、スウェーデンや国内でも類似種が産出する事が知られていますが、頭部や尾部だけの部分化石が大半です。
本種は部分化石すら市場に出回る事は珍しく、特に胸部が何故か非常に残りづらい為、このような全身が揃った完全体は世界的にも極めて貴重です。シルル紀を代表する三葉虫の一つでありながらも、独特な形状を持つ超希少種と言えるかと思います。
追記(2023/3/5):
Sphaerexochus mirusという、本種に極めてよく似た (もしくは同じ) 種がおり、例えば、英国三葉虫書籍Trilobites of the British Islesには、Sphaerexochus mirusの方しか掲載されていません。
これに関して、S. britannicusとS. mirusは、同一種であるという説 (Thomas AT. British Wenlock trilobites. Part 2. Palaeontographical Society Monographs (London) 1981;134:57–99.) と、尾部の形状から異なる種であるという説 (Ramsköld L. Silurian cheirurid trilobites from Gotland. Palaeontology (Oxford) 1983;26:175–210.) があり、意見が割れているようです。
ここでは、提供者氏からの学名のまま、S. britannicusの方を採用して記載をしておきます。
Silurian, Homerian
Coalbrookdale shales, Wenlock limestone fm
Malvern, Worcestershire, UK
Sphaerexochus britannicus
trilobite.person (orm)