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Dicranopeltis sp.
完全体での入手が到底不可能な種でも、部分化石であれば楽しむことができます。 こちらは、チェコのスヴァティ・ジャン・ポッド・スカロウ (Svaty Jan Pod Skalou) という町/村のシルル紀の地層から産出した標本です。ディクラノペルティス、特にスカブラ (D.scabra) の可能性があると思われます。 完全体であれば、北米超希少種のD.nereus以上に希少な種であります。このスカロウ村からは本種の他、ダイフォンなどの数々の殿堂級の三葉虫の部分化石を産出し、まさに奇跡の村であると言えます。 いずれも尾板ですが、前半が小型の個体で、後半はやや大型の個体のものです。部分化石とはいえ、細部の保存状態は良く、ルーペで楽しむ分には、なんともコスパの良い標本です。
Silurian 08/2006 Motol Svaty Jan Pod Skalou, Czech Republictrilobite.person (orm)
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Balizoma variolaris
何かの病気にでも罹っているいるのじゃないかとでも思えそうな、この三葉虫はバリゾマ・ウァリオラリス (Balizoma variolaris) です。 英国の古典的産地、ダドリー (Dudley) の標本です。ダドリーは産業革命期に鉱石や石炭の採掘で賑わった町ですが、採掘の際に、同時にシルル紀の豊富な化石も見つかりました。三葉虫に関しても、カリメネをはじめとする魅力的なシルル紀の多様な種が産出した事から、歴史的に三葉虫研究の黎明期の重要な研究対象となっています。以後、ダドリー産の化石は、研究者のみならずコレクターも魅了し多くの蒐集家がおしかけましたが、現在、産地は保護されており、新規標本を得る事はできません。今、市場に出回る標本はオールドコレクションの放出によるものです。 この、ダドリーもしくはその周辺で採取された三葉虫全体を指して、ダドリー・バグ (Dudley Bug) もしくはダドリー・バッタ (Dudley locust) と総称されます。 こちらは、そんなダドリー・バグを代表する種の1つ。 頭部にぶつぶつを持つ (イチゴ頭と総称される) 事が特徴であるエンクリヌルスの仲間ですが、この種は中でも病的なほど大きな顆粒を持つ事が特徴で、これは種小名のvariolaris-痘瘡にも反映されております。ダドリーでは、他にもエンクリヌルス (Encrinurus punctatus, Encrinurus tuberculatus) が産出し、いずれも希少ですが、それと比べてもバリゾマは市場に出回る機会が少ないように思います。 16mmという小ささにも関わらず、とても存在感のある種です。
Silurian Wenlock limestone Dudley, West Midlands, UK Balizoma variolaristrilobite.person (orm)