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Sinocybele cf. baoshanensis
中国バオシャンのシーシャン (Shihtian) 累層産の三葉虫、シノキベレ (Sinocybele) です。 既記載種の、シノキベレ・バオシャネンシス (Sinocybele baoshanensis) などの可能性は否定できませんが、類似の未記載種の可能性も高いと思います。 Cybeleと比較しても、横に間延びした頭部、みょうに離れた眼、比較的大きな頭鞍に、寸銅な体型をしています。ルーペで覗くと、頬部には細かいぶつぶつ構造も観察できます。7mmとスモールサイズながら、肉眼でも楽しめる標本で、形状が面白くマニア好みしそうな種です。 参考までに、7番目写真に同属別種 (Sinocymele thomasi, Wales産) のピクチャーを掲載しています。Cybele同様、本来は、長い眼軸を持つ眼がニョキっと生えていたものと思われます。ただ、他の標本も参照する限り、本種ではこの図と異なり、第6胸節からの長い棘がない気がします。 本産地 (ShihtianあるいはBaoshan) の石質は脆い事もあり、完全体で残る化石は多くないのですが、尾部がややdisarticulatedしている以外には、本種にしては満足ゆくレベルで残っております。
Ordovician Shihtian Renhe Town, Shidian County, Baoshan, Yunnan 7mmtrilobite.person (orm)
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Undetermined species_02
中国雲南省の保山市 (Baoshan) のShihtian累層産の標本です。調べる限りでは、おそらく未記載であると思われます。 サイズは尾棘含めて15mm、含めずで11mmほどと小さめです。やや目立つ頬棘をもち、尾部後端から長めのスパインが一本伸びています。この標本では痕跡的なのですが、後端の棘とは別に、尾部からはさらに一対の小さな棘があるようです。目と目の間は離れており、小ぶりながらも、少々独特な顔貌をしております。 この種、形態的には、少し前にUndetermined species (Ordovician) として掲載した、同産地の種に非常によく似通っているなと感じます。6, 7枚目の写真で、該当の標本と並べています。 あくまで推測の域を出ませんが、全体的に非常に類似度が高いことと、サイズ差や以前の標本の方が尾部の2対の棘が発達していることを考慮すると(一部の三葉虫の幼体では、胸〜尾の対の棘が発達している傾向がある気がします。e.g., P.gracilisなど)、本種と前回の種は、完盾体ー幼盾体の関係にあるのかなと夢想してしまいます。
Ordovician Shihtian Puyi town, Baoshan, Yunnan, China Undetermined species_02trilobite.person (orm)
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Undetermined species
中国の三葉虫は未だに見たことのない種も多く、根気よく市場のウォッチを続けていると、気になる種がポツポツと登場します。 そんな種の一つ、中国雲南省の保山市 (Baoshan) のShihtian累層産の謎の三葉虫です。雲南のBaoshanといえば近年Pupiao累層の三葉虫が市場に放出されていたかと思いますが、調べる限りでは、Pupiao ≒ Shihtian累層であるように思います。調査不足なので間違っているかも知れず、差し当たり、話半分で受け取っていただけるとありがたいです。また時間がある時にでも、追って報告します。 この産地の三葉虫は面白い形態の種も多く、皆惹かれるのか微妙に競争率が高く入手に苦労します。ebayを見ていると、最近ではDionideやCyclopygeの一種、illaenusらしき種などが、市場に登場しているようですね。 本種は、長い頬棘および尾部の一対の棘をもち、更に尾部後端からも小さな棘を持つようです。目と目の間は離れており、コミカルな顔貌をしております。本体のみで5mm、尾棘含めても8mm程度と、小指の爪の先ほどの非常に小さな三葉虫なのですが、全体的に興味深いフォルムをしており、このサイズなのに存在感があります。 全然時代も産地も異なるのですが、まるで広西チワン族自治区、カンブリア紀末産のGuangxiaspis guangxiensisの幼楯体のようにも見えます。比較用に、手持ちのG. guangxiensisの画像を7枚目に掲載しておきます。 この産地の他の種含め、とても気になる種です。
Ordovician Shihtian Puyi Town, Baoshan, Yunnan, China Undetermined speciestrilobite.person (orm)
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Prionocheilus sp.
何とも面白い、この三葉虫とヒトデの組み合わせは、三葉虫プリオノケイルスの一種 (Prionocheilus sp.) と、ヒトデはおそらくペトラステルの一種 (Petoraster sp.) の共演標本です。 同国オルドビス紀産の大半に言えることですが、風化が進んでいることが多く、本種もぼけっとした荒い標本をよく見かけます。この標本も風化が進んでいるものの、頭部の様子など、比較的細かく観察することができ、本種としては良質な方です。この標本では確認できませんが、体全体に細かな顆粒がある事もプリオノケイルスの特徴のようです。 ほか、本標本は黒い色合いが強いですが、産出場所によって、褐色、黄色などの色のバリエーションも多い印象です。 同国オルドビス紀産としては、クモヒトデ (綱)と三葉虫 (特にSelenopeltisなど) という組み合わせは、よく見かけますが、ヒトデ (綱) と三葉虫というタッグは案外珍しい気がします。 三葉虫が暮らした当時の海底環境の一端がわかるだけでなく、飾っても楽しく、私のお気に入りの標本の一つです。
Ordovician Ktaoua El Kaid Errami, Morocco 60mmtrilobite.person (orm)
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Homalopteon murchisoni
可愛らしい三葉虫、英国ウェールズのホマロプテオン・マーチソニ (Homalopteon murchisoni) です。黒色の母岩に黒色の本体、しかも15mmと小型なので目立たず地味な標本ではあります。本種にしては珍しく、左自由頬が残っております。写真4枚目はnega標本です。 分かりづらいですが、アサフス目(Asaphida) に分類される種です。 同属異種として、ホマロプテオン・ラディアンス (Homalopteon radians) が知られており、本種を産出するLlanfawr Middle Quarryで共に見つかるようです。提供者によると、産出数はラディアンス > マーチソニで、マーチソニの方がより希産とのこと。 実際、英国三葉虫の決定版図鑑『TRILOBITES of THE BRITISH ISLES』では、ラディアンスの複数体標本が2プレート掲載されているのに対し、マーチソニは単体標本のみが唯一掲載されています。 派手さがある訳でなければ、お世辞にも優美な種という訳でも無いのですが、ここまで外形が丸っこい種というのはあるようで、それほどない気もするのです。パッと思い浮かぶのは、若干毛色は違いますが、ロシアやモロッコのスティジナ (stygina) ぐらいでしょうか。 (※ ただし本種は、もう少し大きいサイズとなると、前後に伸び楕円形に近くなります) 言い過ぎかもしれませんが、ある意味、三葉虫の形態の多様さを知ることが出来る種では無いでしょうか。
Ordovician Llanfawr Mudstone group, Builth, Wales Homalopteon murchisoni 15mmtrilobite.person (orm)
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Gravicalymene arcuata
イギリス産の三葉虫、グラビカリメネ・アルクアタ (Gravicalymene arcuata) です。三葉虫蒐集のかなり初期に入手した標本ですが、その後市場で見かける事もそれほど多くなく、産出量のそこまで多くない種だという印象です。 ぼやっとした境界不明瞭な標本が多い本種ですが、本標本は細部まで観察でき立体感もあり、35mmと本種にしてはサイズもかなり大きめです。ポジネガともに揃っており、良標本かと思います。 カリメネはシルル紀を中心に全世界で繁栄した種ですが、本種のように古くはオルドビス紀にも分布していました。市場で見かける種で、Gravi-が接頭につくカリメネはあまり多くありませんが、有名どころでは本邦で産するグラビカリメネ・ヤマコシィ (Gravicalymene yamakosii) が知られております。アルクアタとは対照的に、ヤマコシィはデヴォン紀の種ですので、カリメネ全体で見ればオルドビス、シルル、デヴォンと3つの紀に渡り、生息していた事がわかります。
Ordovician - Gwynedd, Northwales, UK Gravicalymene arcuatatrilobite.person (orm)
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Actinopeltis sp.
初めて見た方は『何だこのお茶の水博士のような鼻の三葉虫は?』と思われるかもしれません。 この頭部のでっぱりは、正確には、鼻ではなく頭鞍といいます。この頭鞍が大きく膨らんだ、奇怪な風貌の本種は、アクチノペルティスの一種 (Actinopeltis sp.) と呼ばれます。モロッコのオルドビス紀産の三葉虫です。 このような頭鞍を持つ種は、アメリカ、ロシア、英国など、世界に複数種が居て、その見た目からコレクターの間では、頭ボール/ボール頭などと称されます。奇妙ながらも、どこかコミカルで愛らしい風貌から、非常に人気の高い種でもあります。 モロッコ産の本種は、他の産地の類似種に比べると、比較的入手し易くも、入手機会はそこまで多くはありません。本標本は、風化したかのような茶色の発色ですが、産地によっては真っ黒な標本もあり、さらにサイズや特に尾部の形状もまちまちで、モロッコだけでも複数種類がいるようです。ただ、現時点では、いずれも正式な学名はついておりません。 この不思議なボールの機能については、大食説 (ボールの部分が胃)、抱卵説など様々ですが、いずれも仮説に留まります。特にカンブリア紀の何種かの三葉虫では頭鞍は、一種の消化器官 (Crop:素嚢) であることが確認されており、個人的には後者 (抱卵説) よりは、前者 (大食説) がもっともらしいかなとは感じます。
Ordovician - Zagora, Morocco Actinopeltis sp.trilobite.person (orm)
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Flexicalymene ouzregui
フレキシカリメネ・オウズレグイ (Flexicalymene ouzregui) です。 博物館や恐竜展のお土産物などでもおなじみの巨大カリメネで、北米のエルラシア・キンギ (Elrathia kingi) と並び、市場で最も出回る三葉虫です。安価で風化が進んでいるものや、別の個体のパーツを繋げた粗悪品も多く、蒐集家には軽視されがちの種でもあります。 しかし、カリメネの中では実はトップレベルに巨大な種で、実際、本種に大きさで勝負できるカリメネなど、カナダのディアカリメネ・シチュチェルティ (Diacalymene schucherti) という希少カリメネぐらいなのではないかと思います。サイズという一点だけでみても、けして軽視できる種ではないと思います。私が、このカリメネを初めて目にしたのは幼少期ですが、ボロボロの標本だったにも関わらず、その巨体感に感動したものです。 出来るだけ風化が進んでおらず、ノジュールを割ったままの自然な標本を選びました。灰色く表面が風化したような見た目の標本が多い本種ですが、この標本は色も黒くて安っぽくなく、比較的表面の状態は良好です。こちらは、ミネラルショーでドイツの有名ショップ『Horst Burkard』より購入しております。 2個体が縦に並んでいるのも、どこか滑稽で面白い構図です。
Ordovician - Hamar Laghdad, Morocco Flexicalymene ouzreguitrilobite.person (orm)
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Gabriceraurus dentatus
ウミユリの茎に囲まれるように産出したこの美しい三葉虫は、ガブリケラウルス・デンタトゥス (Gabriceraurus dentatus) といいます。オルドビス紀のカナダは数々の美しい綺羅星のような、ケイルルスを産出する事で有名であります。中には写真でしか見た事のないような超希少な種もいますが、この種は、その中でも比較的良く知られた種です。 最も一般的な北米のケイルルス/ケラウルスである、ケラウルス・プレウレザンセムス (Ceraurus pleurexanthemus) にベースは似ています。ただ、40mm前後のサイズがせいぜいのプレウレザンセムスよりも明らかに大型となる事が知られており、また頬棘と尾棘が長くて発達している事が特徴的です。本標本でも70mm近くと結構大きいのですが、本種の本当に大きな標本は100mmをoverするものさえあり、大迫力であります。 この標本は全てのパーツが良く残っており、何より周囲に散らばるウミユリの茎が、この標本の美しさを際立たせています。右胸部の棘の間にウミユリの茎が複雑に絡んでいるのも面白いです。当時、おそらくウミユリの陰に潜んで生活していたのではないかという事が想像できて楽しい標本です。 かなり希少な種ではあり、★4をつけても良いかと思いましたが、同産地のケラウリヌス・マルギナトゥス (Ceraurinus marginatus) と比べると産出量は多く、★3つとしました。
Ordovician Cobourg Ontario, Canada Gabriceraurus dentatustrilobite.person (orm)
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Calymene sp.
オルドビス紀は、非常に多種多様な三葉虫が登場した時代ですが、それ故、種数が多く記載が追いついておりません。特に、モロッコのオルドビス紀三葉虫は、種数が非常に多く、風化が進んでいる傾向にもあり、未記載種に溢れています。 これも、そんな良くわからないモロッコのオルドビス紀三葉虫のうちの一つ。 入手元では、グラビカリメネ (Gravicalymene sp.) とされておりました。確かに形状はカリメネではあります。6番目の写真で標準的サイズのカリメネである、フレキシカリメネ・ミーキ (Flexicalymene meeki) と比較していますが、ご覧の通り巨大サイズのカリメネです。同国同時代の大型カリメネというと、博物館のショップやお土産レベルの化石でも有名な、多産するフレキシカリメネ・オウズレグイ (Flexicalymene ouzregui) があまりにも有名です。しかし、本種は見た目からして、明らかにオウズレグイとは異なります。 一時は、自由頬のないプラドエラ (Pradoella sp.) かな?とも考えたのですが、やはりどこか頭部や尾部の構造が違うように思うのです。第一に、産地がKaid errami (一方、プラドエラはZagoraで産出する) ので、やはり違う種だろうなと考えております。 結論は未定種、カリメネの一種 (Calymene sp.) としております。このような未知の種の多さもまた、モロッコのオルドビス紀三葉虫の魅力であります。
Ordovician - Kaid errami, Morocco Calymene sp.trilobite.person (orm)
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Ceraurinus marginatus
ケラウリヌス・マルギナトゥス (Ceraurinus marginatus) です。有名な北米のケラウルスの一種 (Ceraurus pleurexanthemus) とよく似ていますが、ケラウルスがスマートな体型であるのに対して、本種は幅広く、がっしりとした体型が特徴的です。サイズも70mm近くとケラウルス/ケラウリヌスの仲間では、比較的大型で迫力もあります。ケラウルスが女性的であるとすると、ケラウリヌスは男性的な印象を受ける種です。がっしりした体型である一方で、外形は丸っこく愛嬌もあり可愛らしさも伴います。 先のケラウルスは、比較的入手がし易い種でありますが、本種は極めて入手が困難で、本標本のような完全体は滅多に市場でも見かける事はありません。他にケラウリヌス・イカルス (Ceraurinus icarus) という良く似た小型の同属異種も居りますが、こちらも希少で完全体は滅多に出回りません。 母岩の中の配置も素晴らしく、マスコット的な可愛らしさも相まって、特にお気に入りの種の一つであります。
Ordovician Cobourg Ontario, Canada Ceraurinus marginatustrilobite.person (orm)