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Aciculolenus askewi
カナダのカンブリア紀末の化石を産するMcKay groupから、風変わりな三葉虫、アキキュロレヌス・アスケウィ(Aciculolenus askewi) です。 McKay groupでは、原始的なアサフス目に属する小型でやや地味めの三葉虫を多産し、特徴が分かりにくく区別が付けづらい種が多いです。しかしよくよく見ると、そんな中に数種類の実に奇妙な種が多いことに気が付き、比較的コアなコレクターを惹き付けて止まない産地です。 本種はMckayのそんな変わり種の一つ。圧倒的にペラペラの背甲を持ち、そのニョロっとした全体像はどこか紙魚を思わせます。吹けばどこかに飛んでいきそうな体格をしており、化石化して残っている事自体が、奇跡のような種です。実際、本種は保存状態の良いものでも、特に自由頬か軸葉の垂直な棘が揃っていない事が多く、両自由頬のない本標本ですら、かなり状態が良い方です。 アキキュロレヌスは、アキキュロレヌス・パルメリ (A. palmeri)という種が元々知られておりますが、同種は胸節が7に対し、本種では13とより細長く、本標本入手時(2019年)には未記載種につき、Aciculolenus sp.としておりました。 しかしその後、2020年にBrian Chatterton氏らによって、アキキュロレヌス・アスケウィ (Aciculolenus askewi)との名で無事記載されております。 (参考文献:Mid-Furongian trilobites ans agnostids from the Wujiajiania lyndasmithae Subzone of the Elvinia Zone,McKay Grup,southerstern British Colombia,Canada, 2020) 小さいながら、とても面白い種かと思います。
Upper Cambrian (Furongian, Jiangshanian) McKay Group Cranbook, British Columbia, Canada Aciculolenus askewtrilobite.person (orm)
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Actinopeltis sp.
初めて見た方は『何だこのお茶の水博士のような鼻の三葉虫は?』と思われるかもしれません。 この頭部のでっぱりは、正確には、鼻ではなく頭鞍といいます。この頭鞍が大きく膨らんだ、奇怪な風貌の本種は、アクチノペルティスの一種 (Actinopeltis sp.) と呼ばれます。モロッコのオルドビス紀産の三葉虫です。 このような頭鞍を持つ種は、アメリカ、ロシア、英国など、世界に複数種が居て、その見た目からコレクターの間では、頭ボール/ボール頭などと称されます。奇妙ながらも、どこかコミカルで愛らしい風貌から、非常に人気の高い種でもあります。 モロッコ産の本種は、他の産地の類似種に比べると、比較的入手し易くも、入手機会はそこまで多くはありません。本標本は、風化したかのような茶色の発色ですが、産地によっては真っ黒な標本もあり、さらにサイズや特に尾部の形状もまちまちで、モロッコだけでも複数種類がいるようです。ただ、現時点では、いずれも正式な学名はついておりません。 この不思議なボールの機能については、大食説 (ボールの部分が胃)、抱卵説など様々ですが、いずれも仮説に留まります。特にカンブリア紀の何種かの三葉虫では頭鞍は、一種の消化器官 (Crop:素嚢) であることが確認されており、個人的には後者 (抱卵説) よりは、前者 (大食説) がもっともらしいかなとは感じます。
Ordovician - Zagora, Morocco Actinopeltis sp.trilobite.person (orm)
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Albertella longwelli
3対の目立つトゲが特徴的な種、アルベルテラ・ロングウェリ (Albertella longwelli) です。産地はネヴァダ州のカララ累層産 (Carrara fm) です。 ただ3対の棘を持つだけであれば珍しくないですが、本種では、頬棘、第3胸節からの棘、尾棘の3つの棘が、どれも同程度に長く、これがアルベルテラの見た目を特徴的にしています。ちなみに、種小名のLongwelliは、棘が長い (Long-) とは関係がなく、ネヴァダ州の地質研究に貢献した地質学者のChester Ray longwell氏に因んでいるのではないかと思われます。 サイズは34mmと標準〜やや大きめ。この種は20-30mmの標本が多い気がします。標準サイズはそれほど大きくない種ですが、最大級のサイズの標本では70-80mm近くにまでなるようです。 本種はネヴァダ州のアルベルテラでそれなりに希少な種でありますが、同じく米国内であれば、モンタナ州にも同属 (Albertella helena) がいて、こちらはよりレアな印象です。他、市場では殆ど見かけませんが、カナダのBC州からも同属が産出するようです。 本標本は周囲の母岩を削る事でコントラストをはっきりさせております。標本の境界がはっきりして良いのですが、このクリーニンング法には、多少好みが分かれるかもしれません。とは言え、プレパレーターはこの業界では、有名なベン・クーパー (Ben Cooper)氏で、さすが見栄えよくプレップしているなと感じます。
Middle Cambrian Carrara "Johnny site", Pahrump, Nevada, USA Albertella longwellitrilobite.person (orm)
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Amecephalus laticaudum
不思議な頭部をもつ三葉虫、アメセファルス・ラティカウドゥム (Amecephalus laticaudum) です。 アメリカのスペンス頁岩の産でありますが、その色合いと形状は、モロッコなどのHarpesとHarpidesを足して、2で割ったような見た目です。ただ、Harpesのように、例えば鍔の部分に細かな窪みが無数に存在するという訳ではなく、細部は似ておりません。新分類上でも、目レベルで異なる種類であり、他人の空似であるようです。 アメセファルスには様々な種類がいますが、本種と、逆三角形なフォルムが特徴的なアメセファルス・イダホエンセ (Amecephalus idahoense) が代表する二種であります。イダホエンセと比べても、本種の方が市場で見かける機会は少ない印象です。 この標本は、母岩が大きくて格好いいものの、入手後はや3年にもなりますが、これを納める為の良いサイズの標本箱が未だ見つかっておりません。置き場所が定まらず、あっちへふらふら、こっちへふらふらと収納ケースの中を常に移動させております。 母岩の裏には、歴代の所有者の方の管理者番号や巡見時のメモが記載されており、そのまま残しております。
Middle Cambrian (Series3, Wuliuan) Spence shale Wellsvile Mt., Box Elder County, Utah, USA Amecephalus laticaudumtrilobite.person (orm)
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Ampyx linleyensis
イギリスのオルドビス紀の三葉虫、アンピクス・リンレイェンシス (Ampyx linleyensis) です。 イギリスより産出する、数多のトリヌクレウスの一種ですが、その中ではクネミドピゲ (Cnemidopyge nuda) と並び、最もコモンな種であります。クネミドピゲとそっくりですが、本種は尾部に節構造がないことが、最も簡単な鑑別点であります。 頭部先端からは、特徴的な一本の長い棘が伸びています。また、この標本では欠損していますが、ロシアの有名な同属と同様に、本来は、非常に長い頬棘を持っております。この標本だけ見ると、地味で大人しい印象を受けますが、実際は非常に優美な姿をしておりました。 ただ3本の棘が残った標本はまず見かけず、図鑑の中だけでの存在であります。
Middle Ordovician Hope shales Minsterley, Shropshire, UK Ampyx linleyensistrilobite.person (orm)
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Archegonus aprathensis
ドイツの石炭紀三葉虫のアルケゴナスの一種です。 アルケゴナス・アプラテンシス (Archegonus aprathensis)と思われます。 この三葉虫を産出するアプラートは、19世紀の古くから知られた産地で、この種の他にもA.nehdenesis、A.laevicaudaなどが採れます。A.aprathensis、A.nehdenesis、A.laevicaudaの3種はこの地の代表的な種であり、しばしばミネラルショーにも顔を出すなどと物の本には記載されていますが、実際の所、そうそう市場では見かけるものではありません。 他の標本を見る限り、多くの標本では本種はもう少し幅広の体型をしております。本標本はそれらと比べ細長い印象です。地層の変形の影響で縦に伸びているだけかもしれませんが、A.nehdenesis、A.laevicaudaなど他種である可能性もあります。石炭紀の三葉虫はどれも似通っており、素人には学名の同定が厳しいものがあります。その為、こちらの学名の同定は入手元に準拠しております。
Carboniferous, Brigantian stage Aprath Posidonien-Schiefer, Wuppertal, Bergisches Land, Germany Archegonus aprathensistrilobite.person (orm)
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Asaphus intermedius
ロシア産の標本が少ない当館ですが、こちらは数少ない同産の手持ちとなります。 私は、"かたつむり"三葉虫こと、アサフス・コワレウスキイ (Asaphus kowalewskii) が好みでして、この標本を入手する前には、当初は同種を求めておりました。しかし、直前で眼軸が長いコワレウスキイを管理出来る自信がなくなり、では代替としてとのことで、そんなに眼軸が長くなく、それでいて短くもない、本種アサフス・インターメディウス (Asaphus intermedius) を入手することに決めた、と言う謎の経緯があります。 結果的には、今では本標本はかなりのお気に入りであります。 コワレウスキイに比べると控えめながらも、しっかり飛び出た眼軸、ロシア産特有の美しい見た目、カエルか何かを思わせるコミカルな風貌など、見ていて飽きません。
Lower Ordovician Asery level Vilpovitsy quarry, St.Pertersburg resion,Russia Asaphus intermediustrilobite.person (orm)
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Austerops salamander (?)
こちらは、確定的ではないですがモロッコのアウステロプス・サラマンデル (Austerops salamander) の可能性が高いのではないかと思われる標本です。 一時期、モロッコのファコプス類 (モロコプス、ボエコプス、ファコプス、アドリシオプス属など) の鑑別に凝っており、その一部の種の分類を、記載論文を参考にしつつ、私のブログなどで特集しておりました。その際、特に、アウステロプスを取り上げきれていないのが心残りでした。 この標本は実は2年ほど前に入手したのですが、何の種かよくわからずそのうち調べようと思い、どこにも公開せず死蔵しておりました。今回ふと思い立ちもう一度真面目に調べたところ、最初に抱いた印象通り、やはりアウステロプスの一種かなと思いましたので、過去の宿題の部分的な解消がてら、公開することに決めました。 一応はハミープレップとのことで、20mm足らずと小さいながらも、細部の構造がよく確認できます。写真ではよくわからないと思いますので、以下、簡単に特徴を描写しておきます。 頭鞍には細かい顆粒が無数にある一方で、頬部や胸尾部表面はツルッとしております。頭鞍の膨らみは弱め。頬部は狭く後方に角はなく丸みを帯びています。複眼の縦列の数は最大7個前後で、vertical rowで見れば、17-18列あるように見えます。全体的には際立った特徴はないのですが、ファコプス類としては全体的に平坦でかさが低い印象です。 これらの特徴を過不足なく満たすものとしては、アウステロプス・サラマンデルが第一の候補にあがります。各種モロコプス (Morocops) の類や、アドリシオプス・ウェウギ (Adrisiops weugi) 、ファコプス・アラウ (Phacops araw) などはいずれも、特徴が違い過ぎてハナから論外として、他に、パッと見でありうる種としては、 ・Boeckops stelcki (ボエコプス・ステルキ) ・Reedops pembertoni (リードプス・ペムベルトニ) ・Austerops speculator punctatus (アウステロプス・スペクラトル・プンクタトゥス) などが挙げられます。 ただボエコプス・ステルキとしては、側葉と中軸間の結節状構造がない事、頬部の細顆粒がないことから除外的で、リードプス・ペムベルトニとしては、頬部が狭い事、頬部の後部の角張りがない事から可能性は低いのでないかと思います。 アウステロプス・スペクラトル・プンクタトゥスは、流石に同属だけあり見分けづらいのです。ただ、プンクタトゥスの場合、頭鞍の顆粒が疎で、その間に無数のpitsがあるという特徴があります。本種ではそういった要素がなく、むしろ細かな顆粒が頭鞍の全体を覆っています。また複眼の構造も、プンクタゥスとは合わないように見えます。 少々長文になりましたが、そんなわけでこちらは暫定、アウステロプス・サラマンデルと考えております。最も小さいので、若年個体の可能性があり、成熟体と特徴が異なる場合、そこがやや怪しい点ではあります。
Middle devonian - Oudressa area, Morocco Austerops salamander (?)trilobite.person (orm)
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Balizoma variolaris
何かの病気にでも罹っているいるのじゃないかとでも思えそうな、この三葉虫はバリゾマ・ウァリオラリス (Balizoma variolaris) です。 英国の古典的産地、ダドリー (Dudley) の標本です。ダドリーは産業革命期に鉱石や石炭の採掘で賑わった町ですが、採掘の際に、同時にシルル紀の豊富な化石も見つかりました。三葉虫に関しても、カリメネをはじめとする魅力的なシルル紀の多様な種が産出した事から、歴史的に三葉虫研究の黎明期の重要な研究対象となっています。以後、ダドリー産の化石は、研究者のみならずコレクターも魅了し多くの蒐集家がおしかけましたが、現在、産地は保護されており、新規標本を得る事はできません。今、市場に出回る標本はオールドコレクションの放出によるものです。 この、ダドリーもしくはその周辺で採取された三葉虫全体を指して、ダドリー・バグ (Dudley Bug) もしくはダドリー・バッタ (Dudley locust) と総称されます。 こちらは、そんなダドリー・バグを代表する種の1つ。 頭部にぶつぶつを持つ (イチゴ頭と総称される) 事が特徴であるエンクリヌルスの仲間ですが、この種は中でも病的なほど大きな顆粒を持つ事が特徴で、これは種小名のvariolaris-痘瘡にも反映されております。ダドリーでは、他にもエンクリヌルス (Encrinurus punctatus, Encrinurus tuberculatus) が産出し、いずれも希少ですが、それと比べてもバリゾマは市場に出回る機会が少ないように思います。 16mmという小ささにも関わらず、とても存在感のある種です。
Silurian Wenlock limestone Dudley, West Midlands, UK Balizoma variolaristrilobite.person (orm)
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Barrandia homfrayi
イギリスの三葉虫、バランディア・ホムフライ (Barrandia homfrayi) です。 属名は、かの有名な大家ヨアヒム・バランデ (Joachim Barrande) 先生からとったものと思われます。一方homfrayiは、ソルターなどとも交友のあった、19世紀初頭の化石蒐集家のデービット・ホムフレイ (David homfray) 氏由来と思われます (その確証は見つかりませんでしたが、おそらく) 。 人名 (属名)・人名(種小名)という、ネーミングからして面白い種です。余談ですが、Paradoxides davidisの種小名は、後者のfirst name由来であるようです。 ご覧の通りfree cheekが欠損しています。本当は楕円形のフォルムを持つ種なので、頬の有る無しで見た目がガラッと変わります。ただし本種のみならず、このような頭鞍が大きな三葉虫では、頬部が欠損してこそ異形感が醸し出される気がします。頬があるにこした事はありませんが、これはこれで私には面白く思えます。 イギリスらしい、風化した色合いの母岩・標本もいい感じです。
Lower Ordovician Hope shales Llanerch dingle, shropshire, UK Barrandia homfrayitrilobite.person (orm)
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Breviphillipsia sampsoni
石炭紀の三葉虫、ブレビフィリプシア・サンプソニ (Breviphillipsia sampsoni) の標本です。石炭紀の中でも前期にあたるミシシッピアン (Mississippian) 、アメリカミズーリ州の比較的有名な種です。石炭紀産にしては産出量は多く、入手は割合容易です。 同じくシュトウ (Chouteau) 累層産のコンプトナスピス・スワロウィ (Comptonaspis swallowi) は、よく似ていてこの種と対をなします。頭鞍がツルツルのスワロウィに対し、本種はつぶつぶが明瞭で、容易に区別できます。 この標本は小さいながらも、防御姿勢の完全体同種が2体と、他にも尾部や胸部の部分化石や巻貝 (もしくはアンモノイド類) が散らばる賑やかなプレートです。 防御姿勢をとった本種はコロコロとしていて可愛らしいです。
Mississippian period, Carboniferous Chouteau Saline county, Missouri, USA Breviphillipsia sampsonitrilobite.person (orm)
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Calymene blumenbachii
こちらはイギリスの代表的なカリメネ、カリメネ・ブルメンバキ (Calymene blumenbachii) 。 産地はダドリー (Dudley)。英国の代表的な古典的産地であり、18世紀の産業革命期、鉱石採掘に伴い発展した町でもあります。鉱石資源の採掘の傍ら、本種含め多くのシルル紀化石が一緒に産出し、それら化石は研究者やコレクターの手に渡りました。中でもこのカリメネは、その愛らしい見た目から人気を博したようです。Balizomaの説明でも言及したダドリー・バグの一種であります。 現在、同産地は保護の対象となっており、新規に標本を入手することは出来ません。ありし日には大量に産出したとも聞く本種ですが、蒐集家のキャビネットの中に仕舞い込まれており、コレクション市場に出回る事はけして多くありません。 派手こそ皆無ですが、シンプルな見た目にシックな色合いの本種は、いつまで眺めていても飽きることはありません。
Middle Silurian Much Wenlock Limestone Dudley, England Calymene blumenbachiitrilobite.person (orm)
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Calymene niagarensis with Trimerus delphinocephalus (cephalon) and Caryocrinites ornatus
有名産地ロチェスター頁岩 (Rochester Shale) から、カリメネ・ニアガレンシス(Calymene niagarensis) の標本です。 ニアガレンシスはかつては、アメリカン三葉虫の中でも、トップ5入りするほど市場に出回っていた種だそうです。しかし、私がコレクションを始めた10年近く前には既にその数はけして多くなく、今でも入手は可能ではありますが、明らかに一層著減しております。 特に、某高級化石ストアの最上級の標本ともなると、 (この種にしては) 驚くべき価格が付いています。標本に貴賎なしと言いたくも、かつてのありふれた種がこうなるとは、否が応でも時の流れを感じずにはいれません。 なんのかんのと書きましたが、黒く艶やかなボディが美しい標準的カリメネで、好きな種であります。 三葉虫は見ての通り、巨大なトリメルス・デルフィノケファルス (Trimerus delphinocephalus)の頭部と、サッカーボール然としたウミリンゴ (Caryocrinites ornatus) に挟まれており、いかにも肩身が狭そうです。特にウミリンゴの保存は素晴らしく、表面の幾何学模様がよく残っています。 あとは実は、母岩の裏にはスピリファーが何匹が付いています (写真なし) 。 主役のわからない、面白い共産プレートです。
Middle silurian Rochester Middleport, NewYork, USA Calymene niagarensistrilobite.person (orm)
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Calymene sp.
オルドビス紀は、非常に多種多様な三葉虫が登場した時代ですが、それ故、種数が多く記載が追いついておりません。特に、モロッコのオルドビス紀三葉虫は、種数が非常に多く、風化が進んでいる傾向にもあり、未記載種に溢れています。 これも、そんな良くわからないモロッコのオルドビス紀三葉虫のうちの一つ。 入手元では、グラビカリメネ (Gravicalymene sp.) とされておりました。確かに形状はカリメネではあります。6番目の写真で標準的サイズのカリメネである、フレキシカリメネ・ミーキ (Flexicalymene meeki) と比較していますが、ご覧の通り巨大サイズのカリメネです。同国同時代の大型カリメネというと、博物館のショップやお土産レベルの化石でも有名な、多産するフレキシカリメネ・オウズレグイ (Flexicalymene ouzregui) があまりにも有名です。しかし、本種は見た目からして、明らかにオウズレグイとは異なります。 一時は、自由頬のないプラドエラ (Pradoella sp.) かな?とも考えたのですが、やはりどこか頭部や尾部の構造が違うように思うのです。第一に、産地がKaid errami (一方、プラドエラはZagoraで産出する) ので、やはり違う種だろうなと考えております。 結論は未定種、カリメネの一種 (Calymene sp.) としております。このような未知の種の多さもまた、モロッコのオルドビス紀三葉虫の魅力であります。
Ordovician - Kaid errami, Morocco Calymene sp.trilobite.person (orm)
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Ceratonurus sp.
オクラホマの有名産地、ハラガン (Haragan) 累層のケラトヌルスの一種 (Ceratonurus sp.) です。本標本はBob Caroll氏の作品です。コレクターには有名な種かと思いますが、これほど特徴がはっきりしていているのに、正式な種名がついていない不思議な種であります。 マニアにはよく知られているように、モロッコには本種の色合いを黒くしたような類似種がいます。モロッコのそれは如何にもモンスターじみた見た目ですが、一方、オクラホマのこちらは色合いが飴色になって、やや棘がおとなしめになっただけなのですが、怪物的な印象は薄れ、何故か上品な印象すら漂います。 この標本では、頭部後方から出る、二股に分かれたホーンを支持する母岩を、浮かせぼりにせず残したままにしてあります。このようなプレパレーションは好みが分かれるところだと思いますが、棘が折れることにトラウマになってしまっている私のような人間には、有り難い安心のクリーニングです。
Lower Devonian Haragan Coal County, Oklahoma, USA Ceratonurus sp.trilobite.person (orm)