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ブルーラインカイヤナイト/藍晶石
カイヤナイトはアンダルサイトおよびシリマナイトと同質異像の鉱物です。 すなわち他の2種と化学組成は共通するものの、低温高圧の環境下で生成されるためまったく異なる姿をしています。 この鉱物を象徴する特性に「二硬性」というものがあります。 これは結晶の方向によってモース硬度が異なる性質で、例えば垂直方向は7.5と比較的高硬度なのに対し、平行方向は4.5であるなど顕著な差異を示します。 純粋なカイヤナイトは無色透明ですが、多く目にするのは鉄とチタンにより青色に染まった個体です。 これはブルーサファイアと同じ発色原理であり、カットが施された青一色のカイヤナイトとサファイアは時に見分けがつきません。 こちらに展示しているのはグリーンカイヤナイトで中心部が青色に染まったマルチカラーな個体です。 結晶を貫くインナーカラーが非常にお洒落で、お迎えする決め手になりました。
鉱物標本 4.5~7.5 Al₂SiO₅ ブラジルテッツァライト
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アクアマリン・キャッツアイ/緑柱石
ブラジルの誇る宝石産地、ミナスジェライス州で産出したアクアマリン。 ラウンドカボション型に研磨が施されたルースです。 ハスの葉などに溜まった水滴と見紛うほど透明で、猫目の光条もシャープに映え渡っています。 石自体の透明度に加え、猫目効果の鮮明さを兼ね備えた理想的な一石です。
宝石 鉱物標本 7.5~8 2013年テッツァライト
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クリソベリル・キャッツアイ/金緑石
半球形の研磨を施すことにより、猫目の光学効果『シャトヤンシー』が露わとなった蜂蜜色のクリソベリルです。 明瞭な猫睛光が、絶妙なまでに猫好きの琴線を刺激してきます。 目にした者を射竦めるかのような眼力が備わっているためでしょうか。 原産地であるスリランカにおいては魔除けの石として扱われてきたと聞きます。 鉱物の世界において何らかの石の名前に接尾することなく単に “キャッツアイ” と言った場合、大抵はこの金緑石のものを指しています。 今日では猫目効果を示す鉱物が数多く発見されていますが、それでもなおキャッツアイと言えばクリソベリルというイメージは根強いと思います。 そのようなイメージが無意識にあったのかもしれませんが、私が初めて手にしたキャッツアイもやはり金緑石のものでありました。 着色因子である微量元素(Fe)がやや多く含有されているためか、この石はブラウン寄りの黄色を呈しています。 淡くさっぱりとした檸檬色のクリソベリルも素敵ですが、地の色が濃い分だけ「ハニー&ミルク」が際立つので個人的にはこれくらいコク深く濃厚な方が好みです。 #クリソベリル
宝石 鉱物標本 8.5 2012年テッツァライト
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マルチカラーベリル/緑柱石
不純物として含まれるマンガン(或いはセシウムやリチウム)により、ピンクに色づいたベリルが『モルガナイト』と呼ばれます。 クロム由来の緑色ベリル「エメラルド」や、鉄由来の水色ベリル「アクアマリン」らとは色違いの同種にあたる鉱物です。 一方で、何物にも染められていない純潔な個体は『ゴッシェナイト』。 実際には完全な無垢というわけではなく発色に至らない程度の不純物を含んでおり、特にセシウムを内に秘めていることが多いとのこと。 しかし地質由来の微量元素の影響を受けやすく何らかの色味を帯びて産出することが多いベリルにとって、無色透明な姿はある意味珍しいことでありましょう。 こちらはそのモルガナイトとゴッシェナイトが1:1となるように切り出したものであると思われます。 丁度半分が淡く桜色に染まっており、何とも心温まる色相を織りなしています。 彼らの内部を注意深く観察した結果、水溶液と気泡からなる「二相インクルージョン」が無数に閉じ込められていることが分かりました。 石を傾けることで気泡が動く様子がしっかりと確認できます。
宝石 鉱物標本 7.5~8 2018年テッツァライト
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ユークレイス/ユークレース
端正な形状と見事な透明度を誇るユークレースの結晶です。 エメラルドやアクアマリンの属する「ベリル」とは組成が近似しているため、一説にはそれらから派生した鉱物であるとされます。 しかし六角柱の結晶系からなるベリル群とは異なり、ユークレイスの結晶は剣の切っ先のような形状を成すのが特徴です。 この鉱物の特筆すべき点は、やはり明瞭な劈開性にあるでしょう。 Euclaseという名称も、まさにこの劈開に因んだ命名であり、その成立ちは "安易に割れる" というギリシャ語の合成語(eu+klasis)に由来します。 この致命的な欠陥のために衝撃に対しては大変弱く、一般的な宝飾用に据えられることは殆どありません。 淡く儚げな水色に劈開性ゆえの危うげな雰囲気を纏わせていることから、その姿はさながら薄幸の麗人であります。 "佳人薄命" という言葉がありますが、たしかにその通り。 美しいものほど脆く繊細で、そして数奇な運命に見舞われるという通説は、どうやら人も鉱物も同じようです。
宝石 鉱物標本 7.5 2013年テッツァライト