バルティックアンバー/アゴダチグモ入り琥珀
太古の松柏類の樹液から揮発成分が抜け、硬化することで誕生する有機鉱物。
そこはかとなく薫る芳香で古代の生物たちを虜にし、現代に至ってもなお多くの人々を惹きつける甘美な宝石です。
それら中でも北欧のバルト海で産出する琥珀が『バルティックアンバー』であります。
その主たる起源はロシアのカリーニングラード州に存在する約5500万年~3500万年前の地層にあるのですが、そこから人の手に渡るまでの過程が実に情趣的。
波の浸食により地層に含まれている原石が浚い出されて海を漂流。
それがやがて浜辺に打ち上げられ、"シーアンバー"として拾い上げられる…というこの上なくロマンティックな琥珀なのであります。
そのためカリーニングラード州を始めリトアニアやポーランドといった沿岸各地では琥珀が特産品に挙げられており、今日まで数多くの良質な琥珀製品が世に送り出されてきました。
元となった樹種の影響によるものか、他地域の琥珀よりも多い3~8%のコハク酸を含んでいることもバルティックアンバーの特徴であります。
さて、私の手にあるこの琥珀についてですが、内部に目をやると何やら奇怪な生物が閉じ込められていることが分かります。
ペリカンのクチバシのように張出した鋏角や、不自然な位置関係にある頭部…
"アサシンスパイダー"とも称される異形のクモ『アゴダチグモ』のArchaea paradoxaという個体です。
このアゴダチグモ、異質なのは姿だけではありません。
なんと《他の蜘蛛を捕食する》という恐るべき生態が知られているのです。
https://www.youtube.com/watch?v=kF7_HS_sihI
彼らはいったい何のために同族を狩るのか。
その意図が伺い知ることができないだけに非常に興味深く、不気味ながらもその美しい姿に注目せずにはいられません。
化石
宝石
鉱物標本
2~2.5
テッツァライト