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アクアマリン・キャッツアイ/緑柱石
ブラジルの誇る宝石産地、ミナスジェライス州で産出したアクアマリン。 ラウンドカボション型に研磨が施されたルースです。 ハスの葉などに溜まった水滴と見紛うほど透明で、猫目の光条もシャープに映え渡っています。 石自体の透明度に加え、猫目効果の鮮明さを兼ね備えた理想的な一石です。
宝石 鉱物標本 7.5~8 2013年テッツァライト
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ノーオイルエメラルド/緑柱石
紀元前より人類史に登場し、かの有名なエジプトの女王・クレオパトラ7世も愛したと伝えられる高貴な結晶です。 発色因子として微量のクロムやバナジウムを含有し、鮮やかな緑色を呈したベリルが『エメラルド』と呼ばれます。 新緑のかおり爽やかに漂う5月の誕生石です。 この鉱物を宝石として評価する場合、重視される要素は輝きより寧ろ "色"。 そのため、彼のように緑味を広く平面的に見せるための研磨形が適用されます。 丹念に研磨されたテーブル面は静止した水面のように澄み渡り、目だけでなく心まで鎮めるかのようであります。 ちなみにこちらのエメラルド。 タイトルに「ノーオイル」と付けているとおり、油浸の痕跡が確認されなかった無欠の一石であります。 天然エメラルドには必ずと言って良いほど亀裂が内在するため、これに油剤を浸透させキズを視認し難くする「オイル含浸」が施されるのが一般的です。 そういった改善処理が通例となっている中、オイルを浸透させる必要がない(或いは内部に浸透して行かなかった)ほどに無疵な個体に出会えたことは大変な喜びでありました。 #ベリル
宝石 鉱物標本 7.5~8 Al₂Be₃Si₆O₁₈テッツァライト
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ボロビエバイト/アルカリ緑柱石
セシウムを含有しているという…触れ込みで流通していた緑柱石で、アルカリ元素を含有していることから『アルカリベリル』とも呼ばれているものです。 "Vorobievite" とは本来であれば無色あるいはピンク色の緑柱石―すなわちセシウムに富むゴッシェナイトとモルガナイトのことを指す異名だったようで、一昔前の書籍の中にはそのような記載も確認できます。 しかし近年見かけるようになったこのアフガニスタン産のベリルに対してもその名が用いられているようです。 とは言えよくよく調べるとこの石自体のセシウム含有量はとても低いようで、ボロビエバイトの名は飽くまでも商品名として用いられている節があります。 緑柱石は色によって呼び名が変わる鉱物で、例えば緑色であればエメラルド、水色であればアクアマリンといったように区別されます。 こちらの石もまた冷徹な青色を呈しており、ともすれば単なるアクアマリンなのではないかと思ってしまうところです。 しかし通常の緑柱石の多くが柱面の発達した縦長の形状に成長するのに対し、こちらのボロビエバイトは薄板の形状をとっているのが個性的です。 また結晶内部には霜柱を思わせる繊維状組織が観察できることから、通常のアクアマリンとは明らかに異質な存在であることが伺えます。 このような六角板同士が密集し重なるように群晶となった姿は八重咲きの花そのものです。 花を象る鉱物として代表的なものに石膏や重晶石の「デザートローズ」や赤鉄鉱の「アイアンローズ」が挙げられます。 どれも大変美しい結晶でありますが、色彩的な観点で言えばこのアイスブルーの華々しさには及びません。 やはり花は色鮮やかであった方がより心惹かれるのであります。 #ベリル
宝石 鉱物標本 7.5~8 2019年テッツァライト
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マルチカラーベリル/緑柱石
不純物として含まれるマンガン(或いはセシウムやリチウム)により、ピンクに色づいたベリルが『モルガナイト』と呼ばれます。 クロム由来の緑色ベリル「エメラルド」や、鉄由来の水色ベリル「アクアマリン」らとは色違いの同種にあたる鉱物です。 一方で、何物にも染められていない純潔な個体は『ゴッシェナイト』。 実際には完全な無垢というわけではなく発色に至らない程度の不純物を含んでおり、特にセシウムを内に秘めていることが多いとのこと。 しかし地質由来の微量元素の影響を受けやすく何らかの色味を帯びて産出することが多いベリルにとって、無色透明な姿はある意味珍しいことでありましょう。 こちらはそのモルガナイトとゴッシェナイトが1:1となるように切り出したものであると思われます。 丁度半分が淡く桜色に染まっており、何とも心温まる色相を織りなしています。 彼らの内部を注意深く観察した結果、水溶液と気泡からなる「二相インクルージョン」が無数に閉じ込められていることが分かりました。 石を傾けることで気泡が動く様子がしっかりと確認できます。
宝石 鉱物標本 7.5~8 2018年テッツァライト
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エメラルドキャッツアイ/緑柱石
《当館の2019年投稿アイテムいいね!No.1》 千里を見通すごとく清澄なこの翠眼は、言わずと知れた宝石界の女王。 ベリルの中でもクロム(或いはバナジウム・鉄)を含有し、美しい緑色を呈したものがエメラルドと呼ばれます。 和名で『翠玉』とも称される5月の誕生石です。 ベリル群、延いては緑色鉱物の中でも格別の知名度を誇っており、古くから五大貴石の一角を担ってきました。 古代エジプト女王・クレオパトラ7世もこの石を溺愛し、鉱山そのものを手中に収めていたというお話はとても有名です。 こちらは光学効果『シャトヤンシー』の現れた、猫目タイプのエメラルド。 石の内部で光が反射し、それが球面に収束して瞳孔を成す様がしっかりと確認できます。 何かと "眼" に纏わる伝承の多い宝石なだけに、このキャッツアイとは運命的な取り合わせなのでしょう。 ミューゼオ展示にあたり初めてこのエメラルドを写真に収めてみましたが、実に蠱惑的な輝きを見せてくれました。 こんな美しい女王様のためならば私は喜んで下僕になりましょう。 #ベリル #キャッツアイ
宝石 鉱物標本 7.5~8 2013年テッツァライト