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マルチカラーベリル/緑柱石
不純物として含まれるマンガン(或いはセシウムやリチウム)により、ピンクに色づいたベリルが『モルガナイト』と呼ばれます。 クロム由来の緑色ベリル「エメラルド」や、鉄由来の水色ベリル「アクアマリン」らとは色違いの同種にあたる鉱物です。 一方で、何物にも染められていない純潔な個体は『ゴッシェナイト』。 実際には完全な無垢というわけではなく発色に至らない程度の不純物を含んでおり、特にセシウムを内に秘めていることが多いとのこと。 しかし地質由来の微量元素の影響を受けやすく何らかの色味を帯びて産出することが多いベリルにとって、無色透明な姿はある意味珍しいことでありましょう。 こちらはそのモルガナイトとゴッシェナイトが1:1となるように切り出したものであると思われます。 丁度半分が淡く桜色に染まっており、何とも心温まる色相を織りなしています。 彼らの内部を注意深く観察した結果、水溶液と気泡からなる「二相インクルージョン」が無数に閉じ込められていることが分かりました。 石を傾けることで気泡が動く様子がしっかりと確認できます。
宝石 鉱物標本 7.5~8 2018年テッツァライト
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アドマイヤ隕石/石鉄隕石
ようこそ地球へ! 遠い昔、遥か宇宙の彼方からの来訪者。 小惑星が何らかの要因で破壊され、マントルやコアの一部だったものが宇宙空間へと投げ出されたことが彼らの長旅の始まりとされます。 こちらは1881年にカンザス州で発見された石鉄隕石で、名を『アドマイヤ隕石』といいます。 鉄-ニッケルを主成分とする合金の中にオリーブ色の宝石「パラサイティック・ペリドット」が散りばめられています。 メタリックなボディに透明なペリドットという組み合わせがどことなくエイリアンチック。 やはり隕石というものは、地球産の鉱物たちとは一風変わった風貌をしているのですね。 地球外の出自でカンザス州に飛来してきたという点が、かの有名なマン・オブ・スティールをも連想させます。
宝石 鉱物標本 隕石 2018年テッツァライト
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セイロン・ブルーサファイア/鋼玉
無垢のダイヤモンド、紅のルビー、翠のエメラルド、変彩のアレクサンドライトと並び五大宝石として尊ばれてきた貴石です。 鉱物学的にはルビーと同じ「コランダム/鋼玉」の色変種に属しています。 和名で『青玉』とも呼ばれる9月の誕生石です。 サファイアと聞いて誰もが想像するのがこの色ではないでしょうか。 主要元素であるアルミニウムの一部と置き換わった「鉄とチタンの相互作用」が生み出すイノセントなブルーです。 おまけにこちらは結晶面の照りが強く、それでいて透明度の高いことから“ガラスボディ”とも称えられる理想的な結晶です。 端から端まで徹頭徹尾、ひたすら蒼く清々しく、さながら明け空が落としたひと雫のようであります。 #サファイア
宝石 鉱物標本 9 2018年テッツァライト
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レッドスピネル/苦土尖晶石
ミャンマーに所在する世界的な宝石産地『モゴック』で産出したレッドスピネルの八面体結晶です。 彼らスピネルの誇る真紅色も見事なもので、しばしばルビーと誤認され用いられることがありました。 イギリス王室が所有する大英帝国王冠。 その正面中央に座す"黒太子のルビー"の正体が、実はスピネルだったというエピソードが最たる例です。 しかし結晶の発達した原石であれば、ルビーとの結晶系の違いから八面体を成すため判別はそこまで難しくありません。 何らかの鉱物でしょうか。 抉れたような結晶面には黒い粒状物が埋め込まれています。 赤いボディの中でただひとつ、太陽の黒点のようでもあります。 数あるスピネルの中から彼を選んだのは、この包有物の存在感に惹かれたからでもありました。 人によっては単なる不純物でしかないかもしれませんが、自分にとっては魅力的な艶ボクロなのです。
宝石 鉱物標本 7.5~8 2018年テッツァライト