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アクアマリン・キャッツアイ/緑柱石
ブラジルの誇る宝石産地、ミナスジェライス州で産出したアクアマリン。 ラウンドカボション型に研磨が施されたルースです。 ハスの葉などに溜まった水滴と見紛うほど透明で、猫目の光条もシャープに映え渡っています。 石自体の透明度に加え、猫目効果の鮮明さを兼ね備えた理想的な一石です。
宝石 鉱物標本 7.5~8 2013年テッツァライト
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アバロニパール/赤アワビ真珠
孔雀色に艶めく海の秘宝。 カリフォルニア近海に生息し、大きなものでは殻長30cmにも達するというお化けアワビ「レッドアバロン」から採取された真珠です。 私たちからすると高級珍味として“食べる”イメージが強い存在ですが、実はアワビも美しい宝珠を生成することが知られています。 青味がかった光沢層に赤・紫・黄・緑の鮮やかな干渉色が現れるのがアワビならではといった印象。 このように他の真珠には見られない色彩の豊かさは、虹色石の代表格であるオパールやアンモライトをも彷彿とさせます。 また真珠といっても正統的な真円ではありません。 アワビの場合、生殖腺の中に形成される関係でサメの歯に似た鋭角状に育つことが多いらしく、綺麗な球形になることは非常に稀。 いわゆる「バロックパール」と呼ばれる形態が大多数を占めます。 この先細りした流線型のフォルム。 例えるとしたら何が一番近いのでしょう。 鉤爪のような、肋骨の先端のような。 私の目には不揃いな柿の種に映って仕方ありません。 この不思議なカタチから何を連想するのかは、きっと見る人により様々なのでしょう。 想像力を刺激するところがバロック真珠の面白いところだと思います。 まん丸な真珠も王道的で美しいですが、個人的にはこういった遊び心のある珍品に惹かれます。
宝石 鉱物標本 2.5~4.5 2013年テッツァライト
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ペツォッタイト・キャッツアイ/ペツォッタ石
2002年にアンバトヴィタのサカヴァラナ鉱山で発見され、その翌年に晴れて新種として認定されたピンク色の宝石です。 発見された当初はエメラルドやモルガナイトらと同じ緑柱石の一種で、単なるピンクに発色したベリルであると見做されていました。 成分的にもBeとAlを含むケイ酸塩鉱物で、結晶の形状も六角形に成長する点は確かに両者ともよく似ています。 セシウムを含み、ピンクの源が微量のマンガン由来である点もモルガナイトと共通です。 しかし分析の結果、種々の特性が緑柱石とは異なることが判明しました。 大きな差異はやはり化学組成です。 緑柱石はBeとAlのケイ酸塩鉱物ですが、ペツォッタ石はこのうちBeの一部をCsやLiと置き換えた構造を持っていました。 特にセシウムの含有量においては、モルガナイトのそれを優に上回る数値誇っているとされます。 これが決定打となったのでしょう。 “ラズベリル”と呼ばれていたはその石は、既存のベリルとは物性を異にする独立種として認知されるに至りました。 この特徴的な鉱物名は、サンプルを分析した『フェデリコ・ペツォッタ』博士に因んで銘打たれたものです。 同氏はミラノ自然史博物館のキュレーターを務めていた人物で、さらにマダガスカルのペグマタイト鉱床の研究にも深く携わっていました。 そしてペツォッタイトは丁度この花崗岩質の濃集帯から出でた鉱物です。 博士が心を傾けたマダガスカルの地で、氏のこれまでの熱意や努力が美しい結晶となって地上に顕現したものが、このペツォッタイトなのではないかと夢想せずにはいられません。
宝石 鉱物標本 8 2013年テッツァライト
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デマントイドガーネット/灰鉄 "翠" ざくろ石
ダイヤモンドの如き分散光を放つガーネット『デマントイド』の菱形十二面体です。 上記のような化学組成を有することから、ガーネットとしては「灰鉄ざくろ石」と呼ばれる品種に属しています。 そのため微弱ながら磁性を有しており、ネオジムほどの強力磁石であれば容易く吸着させることができます。 数あるガーネット族の中では硬度が最低級であり、場合によっては宝石の基準とされている水晶よりも下回ってしまうため宝飾用としてはやや不適格とも取れるかもしれません。 が、そうである反面「分散度」というパラメータはすべてのガーネット、延いてはあらゆる鉱物と比較してもトップクラス。 果てはダイヤモンドのそれを凌駕する数値を誇っていることから、前述の欠点を補って余るほどの品格がこの柘榴石には備わっているのであります。 彼の結晶面には揺らめく流紋のようなテクスチャが見られるのですが、これがまた古風なステンドグラスのようでなんとも小洒落れた風合いを醸し出しています。 この小窓から内部を覗いてみますとやはり『ホーステイル』の姿が確認できました。 これはデマントイド特有かつロシア産に多く見られる特徴で、アスベスト鉱物の一種であるクリソタイルが繊維状に内包されたものであります。 https://muuseo.com/tezzarite/items/73 研磨すればもっと鮮明に観察できるかもしれませんが、せっかくの自形結晶ですので加工せずこのままの形を残しておきたいです。
宝石 鉱物標本 6.5~7 2013年テッツァライト
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ユークレイス/ユークレース
端正な形状と見事な透明度を誇るユークレースの結晶です。 エメラルドやアクアマリンの属する「ベリル」とは組成が近似しているため、一説にはそれらから派生した鉱物であるとされます。 しかし六角柱の結晶系からなるベリル群とは異なり、ユークレイスの結晶は剣の切っ先のような形状を成すのが特徴です。 この鉱物の特筆すべき点は、やはり明瞭な劈開性にあるでしょう。 Euclaseという名称も、まさにこの劈開に因んだ命名であり、その成立ちは "安易に割れる" というギリシャ語の合成語(eu+klasis)に由来します。 この致命的な欠陥のために衝撃に対しては大変弱く、一般的な宝飾用に据えられることは殆どありません。 淡く儚げな水色に劈開性ゆえの危うげな雰囲気を纏わせていることから、その姿はさながら薄幸の麗人であります。 "佳人薄命" という言葉がありますが、たしかにその通り。 美しいものほど脆く繊細で、そして数奇な運命に見舞われるという通説は、どうやら人も鉱物も同じようです。
宝石 鉱物標本 7.5 2013年テッツァライト
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エメラルドキャッツアイ/緑柱石
《当館の2019年投稿アイテムいいね!No.1》 千里を見通すごとく清澄なこの翠眼は、言わずと知れた宝石界の女王。 ベリルの中でもクロム(或いはバナジウム・鉄)を含有し、美しい緑色を呈したものがエメラルドと呼ばれます。 和名で『翠玉』とも称される5月の誕生石です。 ベリル群、延いては緑色鉱物の中でも格別の知名度を誇っており、古くから五大貴石の一角を担ってきました。 古代エジプト女王・クレオパトラ7世もこの石を溺愛し、鉱山そのものを手中に収めていたというお話はとても有名です。 こちらは光学効果『シャトヤンシー』の現れた、猫目タイプのエメラルド。 石の内部で光が反射し、それが球面に収束して瞳孔を成す様がしっかりと確認できます。 何かと "眼" に纏わる伝承の多い宝石なだけに、このキャッツアイとは運命的な取り合わせなのでしょう。 ミューゼオ展示にあたり初めてこのエメラルドを写真に収めてみましたが、実に蠱惑的な輝きを見せてくれました。 こんな美しい女王様のためならば私は喜んで下僕になりましょう。 #ベリル #キャッツアイ
宝石 鉱物標本 7.5~8 2013年テッツァライト