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Edward Greenの茶・その2(カントリーカーフ)
気付いたら陰影が大分付いてしまい、すっかり「自分の色」と化してしまったけれど、この靴を初めてお手入れした時に目玉が飛び出そうになった記憶は今でも鮮明だ。Almondと命名された黄味を帯びたミディアムブラウンなのに、クリーナーで汚れを落として現れた「もともと入っていた靴クリームの色」は、まるで口紅のような真っ赤だったから。アンティーク仕上げの元祖たるエドワード・グリーンらしい巧みなテクニック…… このメーカーの言うカントリーカーフは、要は型押しのスコッチグレインレザー。気持ちリジッドな印象とは対照的に抜群にソフトな革質のお陰で、つま先など吊り込みが効くエリアは型押しが薄くなり、通常のお手入れどころか鏡面磨きすら存分に楽しめるのも隠れた魅力だ。
Edward Green飯野高広
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Edward Greenの茶・その1(アンティークカーフ)
高級紳士靴で1990年代に一気に浸透した「アンティークフィニッシュ」なる発想。特殊な染料やバフ掛けなどで施される革への一種の演出だが、そのきっかけを作ったのがエドワード・グリーンによる一連の茶系の靴だろう。このChestnutカラーのアンティークカーフは、基本的には前出のBrackenより僅かに薄口の、ややオレンジっぽいミディアムブラウン。ただし、古い家具や文字通り栗の実の皮のように色味に濃淡が美しく入り混じった仕上がりは、それまでの新品では有り得ないアプローチだった。初めて見た時「ああヤられた……」と唸りまくったのを今でも思い出す。柔軟なレザーソールやかかと部の小振りな造形も含め、エドワード・グリーンがここ四半世紀の英国紳士靴に果たした役割は絶大だ。
Edward Green ミディアムブラウン飯野高広