昭和27年(1952)年賀切手「翁の面」カシェカードコレクション

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 日本が独立した年である。4月28日、対日講和条約が発効し、6年8ヵ月におよぶ占領軍支配に終止符が打たれた。しかし、米軍は依然として駐留するなど祝賀ムードは盛りあがらなかった。7月にはヘルシンキ五輪が開幕、日本も戦後初めてオリンピックに出場した。8月には、IMF(国際通貨基金)と世界銀行に加入した。このように日本が国際社会に復帰する中、1月に韓国が宣言した李承晩ラインにより、日本漁船の拿捕(だほ)が始まっていた。

 5月、対講和条約発効後初のメーデーで、メーデー事件が起こった。中央会場となった明治神宮外苑から行進してきたデモ隊の一部が使用不許可の皇居前広場に乱入し、警備警官隊が催涙ガスやピストルで応酬、デモ隊の2人が死亡、双方2300人以上が重軽傷を負った。

 満18歳になられた皇太子明仁親王(現天皇陛下)の加冠の儀(成年式)と立太子礼が、11月に執り行われた。両陛下とともに宮内庁のバルコニーに立ち、皇室としての新憲法の下での初の慶事に、詰めかけた国民の歓呼に応えられた。

 白井義雄選手が、ボクシング世界フライ級チャンピオンのマリノス(米国)に判定勝ち、日本初の世界王座獲得を果たした。田中絹代主演、溝口健二監督の「西鶴一代女」がベネチア映画国際賞を受賞。どちらも、国民に喜びと誇りを与えた出来事であった。また当時、映画とともに国民的な娯楽の雄であったラジオについては、NHKラジオが4月から放送を開始した番組「君の名は」(菊田一夫原作)が人気の的に。放送時間には銭湯がからになるという伝説が生まれ、また長いショールを頭から首に巻く"真知子巻き"が大流行した。

 昭和27年新年賀切手を飾っているのは、「翁の面」である。能の曲に登場する翁は昔から神聖視されており、祝祭の行事のひとつとして舞われてきた。また、五穀豊穣を祈ったり、天下泰平を祈願する時などにも、この面をつけて能が舞われる。切手の額面は5円になっている。

カシェカード挿絵=鮎澤美奈子

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