サマージャケットにぴったりな生地「アイリッシュリネン」を知る

取材日: 2015年6月4日

文/廣瀬 文

サマージャケットにぴったりな生地「アイリッシュリネン」を知る_image

ミューゼオ・スクエアの編集部員がモノについての理解を深めていく奮闘記。今回は、夏でも快適に過ごせる洋服の生地「アイリッシュリネン」と「モヘア」についてのお話です。

私の働くオフィスは駅を出てから坂道を登ったところにございます。
これがちょっとした運動になるんですね〜。
さらに、オフィスはビル3階(エレベーターなし)。
なのでたどり着いたときはいつも決まって

「はあ。はあ」

なんですかね。年齢のせいとは意地でも認めたくありませんが。

これもきっと、暑い夏のせいですね。

気づけば、Tシャツの脇の辺りもしっとり。。。

。。。。もう夏ですね(遠い目)。



毎年この時期になりますと
白Tシャツ/デニムスカート/白コンバース
そして麦わら帽子さらにリュック!
というのが定番のスタイルになっておりまして
(改めて文字にすると、とてもアラサーのスタイルとは、、、(涙)


だって夏ですよ〜、暑いじゃないですか!
綿100%のTシャツやデニムなら毎日洗濯し放題ですからね〜。

とか責められてもいないのに言い訳をしているあたりで、うすうす感づいてはいるんです。
そう、そろそろスタイル革命が必要なころかもしれません。

さて、こんなずぼらでいまいち垢抜けない私と対極にいるのが、
私の上司Nです。

「おはよう」とオフィスに入ってきた上司Nの装いは、
きっちりアイロンのかかったワイシャツとシングルジャケット&パンツ、そして艶のある革靴まで。

MuuseoSquareイメージ


いや〜、ノーネクタイスタイルでもちゃんとしてますね〜。

片や、Tシャツ&ジーンズ。。。


ああ、この対比たるや。ですね。


Nさん、涼しそうな顔してるけど、
ジャケットなんか着て暑くないのかしら。。。
自分だったらシャツに気取ってジャケットとか暑くて死んじゃいますけど!

と内なる声を読まれたのか、

N:「このジャケットは夏用素材で暑くないんだよ。熱がこもりにくいんだよね。
  アイリッシュリネンて言ってね。知ってる?」

A:「リネン? リネンって、シーツとか、テーブルクロスのことですか?」

N:「。。。。。。」

A「Nさん今、”こいつは何も知らないんだな〜”って顔しましたね」

N:「。。。。。。」


さて、G-グル先生に聞いてみると
リネン【Linen】
 ー麻と呼ばれる繊維のうちで、亜麻を原料とするもの。
 ー病院・ホテルなどで、日常使うシーツ・枕カバー・タオル類など。
で、
アイリッシュリネン【Irish linen】
 ーアイルランドを原産とする亜麻から取った繊維でつくられた織物。水や摩擦に強く夏物衣料に多く使われる。

だそうです。

A「麻。じゃがいもとか玉ねぎとか入ってる袋の生地ですか?
 なんかごわっついて着心地悪そうですけど」

N「。。。。それは、ヘンプね。麻とは違うよ」

A「それ、シワにはなりにくいんですか?」

N「もちろん、シワもできやすいんだけど、このシワが愛しいんだよね。
  着ていく内にだんだんシワが出来てくるのが嬉しくて」

シワ、シワ、シワ。3回も言われるとさすがに過敏にならざるおえないですね。

でも
”シワを愛する”
って、モノの愛で方初めて聞きました。

素敵なシワって。。。。

思い浮かぶのは、ミスチルの桜井さん(くしゃくしゃな笑顔が素敵✨)くらいなんですが(モノじゃないけど)。

なんでも、Nがシワを愛するこのアイリッシュリネンの生地はリネンの中でも高価なものとされるらしいのです。

ちなみに、ネットで”アイリッシュリネンのベットシーツ”なるものが販売されているのを発見しましたが、
シーツ一枚が2万円超え! 
おもわず「え」と声がでちゃう感じなのですが、Nに聞いても割と真っ当な価格らしく。

というのもこのアイリッシュリネン。名前のとおり本来はアイルランドのみで採取されるものなのですが、すでに生産終了する工場も多く市場に出回る量も非常に少なくなっている状況。

MuuseoSquareイメージ
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N「これはデッドストックになっていたヴィンテージ生地で仕立ててもらったものだよ。
  織りがしっかりしてて重いけど、その分着ているっていう実感がもてて気持ちがいいんだよ。
  ソリッド感があって、例えていうなら中身のあるドイツ人って感じかな。」

A「生地の世界でもヴィンテージっていうのがあるんですね。
  今生産してないってことは貴重だから値段もさらに上がるんですか?」

N「そうとも限らないね。ものによるかな。洋服好きの中ではヴィンテージを邪道と考える人もいるし。
  でも、僕は今は無きものに憧れるっていうか、これはロマンだよね」

生地ひとつでこんなに語り出すとは。N氏、水を得た魚のようであります。

A「生地にロマンを感じるって、その感覚どこから生まれてくるんですか?」

N「生地への憧れなのかな。
  昔からメンズファッション雑誌を見ながら、洋服の生地を可能な限りすべて制覇してみたい、
  一通り着てみたいという気持ちが強くてね。今は生地バンチ(生地見本)をパラパラめくってネイビーやグレーやブラウンの無地、チェック、ストライプなどの色々な色柄を見てる時間が至福の時だね〜」

実際、Nはあらゆる服地を試してきたみたいです。失敗談も数知れず。
例えば、超高級!ミンクのスーツ!なんてブルジョア的なものも試してみたそうです。
ミンクちゃん。さぞ、肌触りが良いんでしょうね〜。

N「軽くて柔らかいミンク生地のスーツは僕には合わなかったね。僕にとってスーツは戦闘服、特にジャケットは顔のような存在だからもうちょっとハリと重みのある感じが良かったんだよね〜」

A「軽くて柔らかい。それ最高じゃないですか〜!」

N「確かに今は、軽くて柔らかくて着心地がいいかというのを良い生地の条件にする人も多いけど、僕はアンチ。サラサラのものより少しざらっとした手触りがあって、重さも厚みもあるっていうのじゃないと着てる感じがしないんだよね。わかるかな〜?この感覚」

A「う〜ん」

N「厚みがないと長く着ることで風合いが変化するっていう楽しみを味わえないんだよね。重さも欲を言うと基本と言われる目付け300gよりよりぎゅっとつまった目付け450gが理想ね」
(ちなみに目付けとは織物およびニット生地の単位面積あたりの重さをいうそうです)

A「(グラム数ってお肉ですか。。。通常より150g増しって欲張り過ぎじゃないですか?)共感できるかどうかは別として、Nさんの生地に対する並々ならぬこだわりは伝わりました」

N「夏の素材と言えば、モヘアも良いんだよ〜。知ってる?」

A「(え、まだ続くの⁉︎)知ってますけど、モヘアって暑くないんですか?(男子受けを気にする)女子が冬に着るあのふわっふわのセーターじゃないんですか?」

N「厳密に言えば同じ素材だけど、紳士服では実はこれも夏素材なのよ」

A「え⁉︎ そうなんですか?」

ちなみにこだわり派の上司Nは、このモヘアと呼ばれる生地のなかでも
さらにお気に入りのメーカーの生地があるらしく、
それがこちら
「ドーメルのトニック」

MuuseoSquareイメージ
MuuseoSquareイメージ
ドーメル社が昔生産していたヴィンテージ生地らしいです。セットアップにしてビジネスシーンのスーツとしても使用できます。

ドーメル社が昔生産していたヴィンテージ生地らしいです。セットアップにしてビジネスシーンのスーツとしても使用できます。

ドーメル社という生地会社のモヘア(アンゴラ山羊の毛)を配合した生地をトニックというらしいです。これが、会社が違えば生地の呼び名も変わるそうなんです。ほー。

A「特定のメーカーの生地が好きって相当ですね」

N「ここのモヘア生地は光沢感とこのコシがたまらないんだよね〜。
でも純粋100%モヘアが良いってわけじゃなくって、混紡率つまり、他の素材と組み合わせて紡績(織る時)するときの割合が重要なんだよね〜。だから〜(まだまだ続く)」

さらに加熱するNの話を聞いている私の気分は、、、
たまたま地面掘ったらうっかり温泉源発掘しちゃって、
さらにはぼこぼこと溢れるように温泉水が湧き上がっちゃってて
もうどうにもこうにももう止められないんですけど〜‼︎‼︎
的な感じですね。

しかし、夏の素材と言えば麺、いや綿100%でしょ!
となんのバリエーションの取り柄もない私にとっては
目からウロコのお話でございました。

「じゃあ明日からアイリッシュリネン着てみるか!」
ってなことにはなりませんが、
Nが「自分の感性に合う素材がいい」と言っていたように
自分に合う素材の違いが分かる淑女になってみたいものだわ
そんな風に思った、夏の昼下がりでございました。


熱気のある繊維話を聞いて、さらに背中や腰のあたりもジンワリしてまいりました。
もう夏、、、ですね。(遠い目)

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