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「洗練されていないのが魅力」中欧・東欧の雑貨を集め続けて分かったこと

日本では、北欧雑貨が人気だ。
2000年代にIKEAが日本中に進出し、その後、北欧専門の家具や雑貨を扱うお店が増えてきた。今では、どこの家庭にも一つ、二つの北欧関連の品物が置いてあるのが普通に感じる。

では、中欧・東欧の雑貨はいかがだろうか?
あまりイメージが湧かないのが正直な感想である。私にとって馴染みがない地域だ。今回紹介するコレクション・ダイバーの橋本さんは、中欧・東欧のグッズを集めている。ルーマニア、ハンガリーなどを訪れ、その国の雰囲気に魅了され、今では毎年のように休暇を利用して中欧・東欧の国を訪れていると言う。そんな橋本さんに中欧・東欧グッズの魅力について聞いてみた。

コレクション・ダイバー【Collection Diver】とは、広大なモノ世界(ワールド)の奥深くに潜っていき、独自の愛をもってモノを採集する人間(ヒト)を指す。この連載は、モノに魅せられたダイバーたちをピックアップし、彼ら独自の味わいそして楽しみ方を語ってもらう。

取材日: 2015年3月7日

文/ 井本貴明
写真 / 山川譲

MuuseoSquareイメージ
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「私は、ここに呼ばれていた。」ハンガリーで感じた不思議な感覚

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中欧は「中欧ヨーロッパ」、東欧「東ヨーロッパ」といわれるが、実は厳密な定義がない。便宜的に使われており、ざっくり言うとドイツより東側、ロシアより西側を指す。日本人にとって知名度が高い国だとルーマニア、チェコ、オーストリアなどがある。2016年1月からは、成田ーワルシャワ(ポーランド首都)への直行便が予定されている。
中欧・東欧グッズを集めている橋本さんが初めて訪れたのは、社会人になった後のことである。長期休暇を使って、まずはフランスやイタリア、ドイツを訪れ、次第にオーストリア、チェコと東に向かっていくことになり、ハンガリーに訪れた時に「私はここに呼ばれていた」という不思議な感覚を体験したと振り返る。

「観光客やお客さんとして来た感じじゃなく、もともと住んでいたような居心地の良さを感じたんです。その後、ルーマニアに行って、中欧・東欧の魅力にハマってしまいました。スペインやフランスなど光の当たるきらびやかな国と違う、スポットの当たらない静かな魅力に惹かれました。
中欧・東欧は洗練されて“いない”んです。ぽってり野暮ったかったり、褪せたような色合いだったり、隙みたいなものがある。輝いていないんですよ(笑)。そこに強く惹かれましたね」

それ以降、毎年のように、長期休暇を利用して中欧・東欧の国を訪れるようになった。

ザリピエ村で味わった思い出を、コレクションで記録する

中欧・東欧の国を訪れるうちに、その国々の食器、布、お菓子、人形などを集めるように。橋本さんにとってコレクションを集めることは、「記録」をすることでもあった。集めてきたコレクションを見ると、その土地の思い出が蘇ってくると言う。

「ポーランドのザリピエ村で買ったお皿は思い出深いです。ザリピエ村には、カラフルなペイントがしてある30軒ほどの家が集まっています。テレビで見かけて『行ってみたい!』と思ったんですけど、観光地じゃないんです。ザリピエ村までは最寄り駅まで二時間。最寄り駅からはタクシーで一時間かけて行きました。英語は通じず身振り手振りで何とかたどり着きました。困った私をみかねて、タクシーのドライバーが村の人に『日本人が来たから案内してあげてよ』って頼んでくれました。お皿を見ると、ザリピエ村に行ったその時の苦労したことや、村の人の優しさをを思い出すんです」

橋本さんだけの記憶を閉じ込めたお皿は、単なるコレクション以上の価値があり、それぞれのアイテムと橋本さんの絆を感じさせる。

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ポーランドのザリピエ村で購入したお皿。カラフルな色づかいが特徴的。

欲しいモノを求めて旅行先を決めることもある

橋本さんは、読んでいた雑誌で、ポーランドで有名な陶器「ポーリッシュポタリー」を見かけた。そして、どうしても欲しくなり、休暇を利用してポーランドまで足を運んだ。ちなみに、ポーリッシュポタリーとは、スタンプで絵付けをされているのが特徴的な陶器である。
そして、橋本さんは休暇を利用してポーランドを訪ずれた。街から外れた工場へ行ったのだが、工場内の見学は不可能だと言われる。しかし、工場内をどうしても見たくて、工場の人と交渉をした後に見学を許されたのである。
そうやって苦労して手に入れたコレクションは、さらなる愛着が加わるのだろう。

余談ではあるが、中欧・東欧というと、どうしても内戦などの暗いイメージを持っている人も多いと思う。しかし、橋本さんが実際に見てきた経験からは、徐々に良い方向に向かっているという印象を持ったという。
「2006年にクロアチアのアドリア海の真珠と言われるドゥブロヴニクに行ったときは、ロープウェーが戦争で破壊されたままでした。でも、いまはもう傷跡はありません。どんどん環境や治安は少しづつ良くなっているんです」

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この柄は伝統的なクジャクの目。ひとつひとつおばちゃんがスタンプで柄をつけていくので、ふたつと同じものが存在しない。

「どこか地味で素朴、不器用で親しみやすさがある」B級の魅力を感じる中欧・東欧

橋本さんが、中欧・東欧の中で一番好きな国を訪ねてみた。

「ルーマニアが特に好きです。日本だとドラキュラ伯爵や新体操のコマネチ選手で有名ですよね。それ以外はあまり知られていない、レアな魅力を持っています (笑)。実は木材を扱うのがうまい国なんです。ルーマニアのマラムレシュの木造教会群は世界遺産に登録されていて、世界的にも有名です。
あと『陽気なお墓』の話を聞いたことがありませんか? 墓標に生前どんな人物だったのか、どのような仕事をしていた人なのかが詩と絵でわかるようになっているんです。
墓標は日本の墓石とはまるで違っていて、白い鳩や花なども描かれカラフルなんです。生前女遊びが激しい人とか怠け者だった人は黒い鳩が描かれてしまうというユニークさを取り入れるなど、生と死が近く、死者にも親しみを抱いていることが墓標を見るだけで伝わってきますよ。
そんな日本はもちろん、ヨーロッパの洗練された国とも違う雰囲気、感性に強く惹きつけられたんだと思います。どこか褪せた色を好む東欧の中でも、ルーマニアの色遣いは派手です。でも、どこか色彩感覚が日本や西欧とも違うんです。
もともと、私は学生時代から少し天邪鬼だったかもしれません(笑)。映画もいわゆるハリウッド作品やヒット作、メジャー作ではなく、B級と呼ばれる映画が好きでした。東欧はまさにB級の魅力があるんです。お菓子のパッケージに描かれている女の子も一般的な『かわいい!』じゃない。どこか地味で素朴、不器用で親しみやすさがあるんです」

ルーマニアの魅力を「B級の魅力」と表現していることに強い印象を受けた。世の中にはB級を好む人が一定層いる。そう言う私も、B級グルメが好きだ。そして、映画監督タランティーノが作るB級映画も好きである。私にとってB級とは褒め言葉であり、緊張をせずに自然体で接することができる魅力があると感じている。
イタリア、フランスなどの完成された観光地に飽きたのなら、中欧・東欧がおすすめだ。

(おわり)

中央の女性が微笑んでいるお菓子のパッケージ。橋本さんは「隙のありすぎるイラストに引き寄せられた」と語る。

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