大人の嗜好品と言われる葉巻の世界へ。初体験で垣間見た”ただ吸う”だけではないシガーの奥深さとは。


取材日: 2015年10月18日

取材/廣瀬 文
写真/齋藤 創太

大人の嗜好品と言われる葉巻の世界へ。初体験で垣間見た”ただ吸う”だけではないシガーの奥深さとは。
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センスの良さそうな人の意見に感化されやすい編集部員A。今回は、自分のイメージとはだいぶかけ離れた趣味(と思っている)の、シガーにトライしてきました。おっかなびっくり、大人の階段をのぼります。

葉巻って何それ? 楽しいの?

こんにちは、未経験なことはとりあえずなんでもやってみたいタイプ、アラサー編集部員Aです。



先日、お気に入りの珈琲店に立ち寄ったところ、お店の常連で顔見知りのO君がカウンター席で一息入れているところでした。隣に座って話し始めたところO君がおもむろに「吸ってもいいですか?」というので「(あ、タバコね)どうぞどうぞ」と促したのですが、出て来たタバコが太い。

というか、それは葉巻か⁉︎ 慣れた手つきで葉巻を吸うO君の隣で、内心
「葉巻って何それ? 楽しいの?」 そんな状態です……。

同時に”チェ・ゲバラ”とか”カートコバーン”、”筒井康隆”、”ゴルゴ13”とか、アク強めの人たちの顔が頭をかすめました。20代半ばで爽やかな印象のあるO君。靴や時計も好きな趣味人だとは聞いていたけど、そんな渋い愉しみまで知っていたなんて……。

ここでも影響されやすいかな、葉巻を吸ってみたい気分になったり。
(そもそも私はタバコを吸わないけど、吸えるんだろうか?)

O君によると、葉巻を楽しむためのシガーバーなるものがあるということ。せっかくなのでお邪魔してみることにしました。

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O君との待ち合わせは、葉巻愛好家が集う六本木のバーで。この響きだけで、充分大人になった気分です。

場所はこちら会員制シガーラウンジNe Plus Ultra(ネプラスウルトラ)六本木店さんです。

アールヌーボー調の鉄格子が囲む佇まいは、ここは古城か?(もしくは魔法魔術学校か⁉︎)と錯覚させます。みてください、この重厚な扉! 
ただならぬ場所に踏み入れようとしている、、そんな予感がします(ワクワク)

いざ! アロホモラ‼︎ 

(通常は選ばれし会員のみに与えられる、魔法のカードもとい会員カードキーでしか開けられない仕組みのようです、凄い!)

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扉を開けたらいきなり暗い! よく見えない!
雰囲気のある照明に目が慣れるまで若干時間を要します。

階段を降りた空間はこんな感じに。おお〜。

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暗闇で待ち受けていたのは……。

今回ナビゲーターとして来てくださったO君の師匠、シガーを知り尽くした五十嵐 達哉さんです。
五十嵐さんはCigar Navi(http://www.cigarnavi.jp/ )という日本初のシガー情報ポータルメディアの編集長で、シガー評論家です。葉巻について素人の私にも、わかりやすく丁寧にお話ししてくださいました。

今回は五十嵐さんに初心者向け講座を特別開催してもらいました。シガーの世界は奥深く、種類、道具、作法など、極めるにはかなりの時間と投資が必要…。ということで、特別講座から部員Aが感じた「シガーのお楽しみポイント」に絞ってレポートします。

◆大人のシガー。ここが面白い!◆

①シガー小物に自分らしさを投影する。
②未開の嗅覚・味覚の旅に出る。
③火を灯して独特の時間感覚を味わう。

葉巻=ゴットファーザー≒業界のドン。吸わない人の勘違いあるある。

そもそも、葉巻を吸うのは”凄みのある人”(権力があったり、ちょっと怖い)というイメージがついていた私。
編集部員A(以下A):「葉巻ってゴットファーザーの映画で出てきそうですね」

五十嵐さん(以下I):「ありがちな勘違いですね。ゴットファーザー全シリーズを通しても葉巻を吸うシーンは2回程度。アルパチーノ演じるマイケル一家が吸っていたのは常に手巻きタバコです。なぜかドン=葉巻の大げさなイメージが定着して、その印象から葉巻を敬遠する人も少なくないですね(笑)ちなみに、ヨーロッパの大きいデパートではデリカテッセンコーナーでワインやチーズなどと並んで販売されています。身近な嗜好品としても捉えられているんですよ」

ライフスタイルに溶け込んでいるアイテムなんですね。日本と距離感が違うんだ。
I:「またシガーを太いタバコと勘違いしている人も多いです。味わい方は、タバコは肺に煙を入れて吸う、そして葉巻は口の中で煙を転がす。作られ方も、タバコはタバコの葉を漂白した後にタール、ニコチン、色味を付けて、燃焼材を染み込ませた紙で巻いてフィルターをさして出来上がり。一方葉巻は、葉をチーズのように発酵・熟成させて、それを手で巻き上げる。農薬も使っていないオーガニックのものになります。根本的に違うんです。」

A:「タバコよりも味がキツそうなものが葉巻というイメージが勝手にありました」

I:「他にも、ビギナーの方が陥りやすいのが、不安なので吸いやすそうな細くて短いシガーを選ぶことです。
細いものはリングゲージ(葉巻の直径)も小さくなります。お酒を細いストローで一気に飲むことを想像してください。簡単に酔いが回りますよね。それと同じ原理で、リングゲージが小さいものは葉巻の煙をキツく吸い込んでしまいやすい。すると苦く辛いだけのテイストになりやすいんです。初めての人ほど、太めのものを選んで試して欲しいですね」

とっつきにくかったイメージは、吸っている人たちのタイプや、いざ始める時の思い込みからきているんですね。

楽しみポイント①  音までかっこいい! コレクタブルなターボライター。

まず、葉巻を吸うための必須アイテムとして紹介してもらったのが、ライター・シガーカッター・灰皿。
なかでも目を引くのは、柄違いで何種類も取り揃えられたライター。どれも五十嵐さんの私物です。サイズ感は似ていますが、どれも可愛い!

フランスのイラストレーターのデザインしたもの。

フランスのイラストレーターのデザインしたもの。

葉巻ブランド・コイーバのライター。音がきれい

葉巻ブランド・コイーバのライター。音がきれい

漫画「ワンピース」の作者がデザインした一本。人魚が描かれている。

漫画「ワンピース」の作者がデザインした一本。人魚が描かれている。

黄金に輝く大型のライン2。写真4点はいずれもS.T.デュポン社製

黄金に輝く大型のライン2。写真4点はいずれもS.T.デュポン社製

一つ千円のものから、ウン万円のものまで。恐る恐る触らせていただきましたが、これは違う!と感じたのは、コイーバのライター。開けた時に、独特の音がするんです。「ピーン」と金属の高く響く音。このライターをおもむろにだして、火をつける。慣れた仕草でできたら、通な感じが出そうですね(思考が単純)。


I:「シーズンや限定でデザインが色々あるので、このライターいくつも収集する方もいらっしゃいます」

A:「”カタチから入る”というのもありですね!」

そして、葉巻カッター。葉巻のタイプに合わせて使うカッターが変わってくるようです。
今日は一番オーソドックスなギロチンタイプのカッターを使いますよ。
(各葉巻のタイプに合わせて使うカッターについて詳しくは、Cigar Naviさんのこちら(http://www.cigarnavi.jp/hc/entry.php?id=21)の記事をどうぞ

奥2つがギロチンタイプのカッターです。

奥2つがギロチンタイプのカッターです。

そして、欠かせないのはシガーですね。

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すらっと並んだラベルが色とりどりで綺麗です。
でも、どれを選ぶべきか、全くわかりません。(確か初心者には太めがいいんですよね……)


さあ、なにはともあれアイテムたちを使ってまずはシガーを体験させてもらいます。

楽しみポイント② アイスクリーム×シガー⁉︎ 掛け合わせで開拓する、シガーの味覚・嗅覚の変化

いきなり自分でチョイスするのは難しいだろうということで今回、初心者の私のために五十嵐さんが見立ててくれた1本。

オヨ・デ・モントレイ(モントレイ渓谷の意味のブランド名)のペティロブスト(ブランドの中で付けられたサイズと形の名前)というシガーです。

前日の電話ヒアリングからぴったりのものを探してくれたそうです! まるで葉巻のソムリエ!
電話口でのヒアリングはこんな感じでした。

======ヒアリング項目=============
Q1 コーヒー派ですか紅茶派ですか?   A:紅茶派
Q2 赤ワイン、白ワインどちらが好みですか? A:白ワイン
Q3 ワインは辛口、甘口どんなものが好みですか? A:辛口すぎないスッキリとした辛口
Q4 普段タバコを吸いますか? A:吸いません
==========================

この質問で、私が紅茶&白ワインを好むことから、ライトボディのもの、そしてより香りが高いものを好むだろうと見立ててくれたようです。
(コーヒー好きの人は、葉巻も味や香りが強いものを好む傾向にあるようです)

ちなみに、味覚の好みによって葉巻を選ぶ早見帳としてこんなものもあります。

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ビトラリオという名前のシガー実寸大見本で、ブランドごとの味・香りの強さをチェックすることができるのです。

I:「慣れないうちは、詳しい人、シガーバーのマスターなどに相談してから選ぶことをお勧めします。それが失敗しないコツです」

では、見立ててもらった初めての1本をいただきます。

ギロチンカッターでヘッド(葉巻の頭)をカットして吸い口を確保して。
I:「火をつける前に、まず口にくわえてドロー(吸い込み)を確認します。
ストローで飲み物を吸うように空気を吸いましょう」

ライターで断面が赤く灯るまでしっかりと炙って。

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赤くなったところで、すかさずひと吸い。火種がついた断面がさらに赤くなるまでしっかりと口の中に吸い込むのがポイントです。
(弱いと、くすぶっただけで火が消えてしまいます)
せっかくならカッコ良く吸いましょう。口に運ぶ時のシガーの持つ方法はこんな感じ。

I:「ビリヤードのキューを握るイメージで、シガーを握ってください」

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ふぅ〜。

I:「居酒屋じゃないので、口を突き出して吸うのはやめましょうか…」

着火が甘かったり、吸い込みが足りなかったりと初歩の段階で何度もつまづきました。
そして、普段タバコも吸っていないので、緊張しすぎて姿勢も表情も全てがぎこちない。。

I:「慣れてきたら姿勢もゆったりとかまえましょう。

まだ葉巻に対してのイメージが抜けきらないのか、への字口で偉そうに座っています……

まだ葉巻に対してのイメージが抜けきらないのか、への字口で偉そうに座っています……

五十嵐さんのマンツーマンレクチャーで吸って吐いて〜を繰り返すうちにだんだんと吸い方がわかってきました。

I:「どうですか、香りと味を感じられますか?」
A:「合っているかどうかわかりませんが、ナッツと燻製の香り?がします」

I:「意外とちゃんと味わえてますね。この香りと後味は火がだんだんと根元に近づくにつれ変化していきます。一般的には、スペイン杉の薄い皮、ナッツの殻の香り。栗などの木の実の甘みを感じられる一本と言われています。葉巻の面白さの一つはこの味覚の変化にあると思います。体調や一緒に飲む飲み物。また、食べた食事によっても変わるんです。しかも人によってその感じ方がだいぶ違います」

A:「例えばどんな飲み物と組み合わせて吸うとその面白さが感じられるんですか?」

I:「そこは、ぜひここのマスター伊藤さんに聞いてみましょう」

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ということで、マスター・伊藤学さん登場です。さすがに吸う姿が様になってます!
(もちろん、普段はカウンターで真面目にサービスされています。飲んでるのはお茶)


伊藤さん:「今吸っていらっしゃるオヨ・デ・モントレイは、着火してすぐは味が軽い。そのタイミングなら炭酸系のさっぱりジントニック、ノンアルコールならアイスティーが合うでしょうね。だんだん火が近くなると味が強くなって、口の中が辛くなってくる。その頃には、アマレットとかミルクティーもいいですね。苦味に甘みでカバーされて吸いやすくなります」

A:「なるほど、さっぱりしたものから、だんだん甘めのものを。時間の経過によって相性のいい味も変わってくるんですね」

伊藤さん:「飲み物以外でも、アイスクリームとかチョコレートもすごく合いますよ。吸い慣れない方にはオススメですね。ぜひ試してみてください」

ということで、出していただきました! アイスクリーム!

右手にスプーンですくったアイスを、そして左手には葉巻を。
食いしん坊スタイルでいただきます!

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うん、アイスが美味しい! で、すかざす葉巻をひと吸い。

A:「ん‼︎ これは! 格段に吸いやすくなりました! 喉の辛さ苦さが全く感じません!」

I:「どうですか、味覚、香りも変わりませんか?」

A:「燻した煙がマイルドになりました。なのによりしっかりと栗や木の実の香り味わえる感じがします!」

I:「自分なりの好相性の飲み物や食べ物を探ってみるのも、葉巻の世界を深くしてくれますよ」

葉巻初心者の私にとって、正直まだ葉巻独特の辛さ苦さは慣れないところ。この飲み合わせ食べ合わせの組み合わせ方は、葉巻との距離をぐっと縮めてくれた感じがします。

楽しみポイント③ 煙をくゆらせる40分。日々の喧騒が遠ざかるシガーの旅。

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A:「ところですごい吸い方をしていますね、五十嵐さん」

I:「こうやって複数の種類を味比べをするのも面白いんです。シガー愛好家同士でそれぞれ一本シガーを持ち寄って回し吸いしてテイスティングをすることもあります。ちなみに、シガーはインディアンたちが儀式の一環として仲間たちと一本のシガーを分け合ったことから始まったと言われています」

A:「へぇ〜。なんとなく、輪になってシガーを燻らせているインディアンたちの絵が目に浮かびます……。いまさらですが五十嵐さんが葉巻にはまったきっかけはなんだったのですか?」

I:「僕は、漫画「コブラ」の主人公が吸っている姿、ハードボイルドなイメージがカッコよくて、真似してみたくなった。それが始まりです」

A:「吸ってみて、すぐはまったのですか?」

I:「だんだんとですね。見よう見まねで始めて、詳しい人から教えてもらって。香りや味わいにも奥深さがあって、もっと知りたいと探求心をくすぐられましたね。もちろんシガーバーに足を運ぶ楽しさもあります」

A:「ゆっくりと時間が流れるこの感じはいいですね。(入店からすでに1時間以上経過)」

I:「シガーはタバコと違って、吸う場所も限られますし1本吸うのにも時間がかかります。ゆっくり過ごせるお気に入りの場所を見つけるのはシガーを楽しむコツかもしれませんね」

なるほど、集中できる空間。そして、時間がシガーには必要なんですね。
忙しい毎日の中でも、それを確保できる心のゆとり(もちろん金銭的にも)。
それがシガーとは大人の嗜みであると表現される所以なのだなぁと感じさせるシガー体験でした。

File

Cigar Navi

代表・五十嵐さんが運営する、シガー愛好家によるシガー愛好家のための情報ポータルメディア(日本初!)
どうやってシガーを吸うのか?初心者向けのハウツーから、新作シガーのティスティング品評まで幅広い情報を提供。 中でもシガーが吸える空間を検索できるシステム”シガーマップ”は、Cigar Naviならではの取り組みだ。
(http://www.cigarnavi.jp/)

File

Ne Plus Ultra 六本木店

東京都港区六本木4-9-1 佐竹ビルB1F
地下鉄六本木駅より徒歩2分
03-3475-5525
15:00~3:00 (日・祝 15:00~1:00)
(http://www.neplus-ultra.jp/index.html)
※注意事項・・・入店には会員と同伴もしくは、会員からの紹介による入会手続きが必要

◆マスター伊藤学さん執筆による書籍!◆
『バーという嗜み』(洋泉社)

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