目指すは洋服が循環する社会。茅ヶ崎の古着屋「STONE FREE」を営むサーファー夫婦が伝えたいメッセージ

目指すは洋服が循環する社会。茅ヶ崎の古着屋「STONE FREE」を営むサーファー夫婦が伝えたいメッセージ_image

取材・文/伊藤 太成  写真/佐々木 孝憲

「古着屋に行こう」 シリーズ 1 回目。

湘南の中心に位置する神奈川県・茅ヶ崎市。

1年を通して海からの温かい風が吹くシーサイドタウンは、サザンオールスターズや加山雄三、ブレッド&バターなど著名な歌手たちを生み出したことで知られている。また、70年代から始まったジャパンサーフカルチャーの発祥の地としても有名だ。

そんな茅ヶ崎の街に、サーフカルチャーの色を強く感じさせる古着屋「STONE FREE」はある。地元の人に人気の飲食店や雑貨屋が立ち並ぶ茅ヶ崎・一中通りの途中、ビーチまでは徒歩で数分という絶好のロケーション。

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中に入るとPENDLETONのシャツ、Levi'sのジーンズ、VANSやCONVERSEなどところせましと並べられている。一角には、カリフォルニアで仕入れてきたというUSEDのサーフボードも。

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もともとはサーフショップだった場所を受け継ぎ、STONE FREEを始めたのはオーナーのTAKAさん夫妻。2人は古着屋を営みながら、ローカルサーファーとして日々波に乗る生活を送っている。

サーフィンと古着を両立させたお店を開くのはなぜなのだろう。TAKAさん夫婦が「STONE FREE」を通じて伝えていきたいカルチャーについて伺ったところ、サーファーならではの環境への意識が見えてきた。

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STONE FREEとは、「完全な自由」という意味

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お店に向かう途中、湘南の海沿いの道を走ってきたのですが、STONE FREEが海に非常に近い場所にあるのには驚きました。
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僕、もともと古着屋で働いていたんですね。店長なんかもやって一通り学ばせてもらったので、独立しようと思って湘南でお店を始める場所を探していたんです。

そしたらこの場所でサーフショップを営んでいた先輩から「お前、場所探してたよね?オレさぁ、ハワイに行こうと思うんだよ。お前あとやんない?」って言われたんで「えー?やるやる」っていう感じで(笑)。
STONE FREEオーナー TAKAさん

STONE FREEオーナー TAKAさん

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(笑)。 お店の内装を見ていると、サーフィンのカルチャーが色濃く反映されているような気がします。
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J.C.PENNEY(J.C.ペニー)やSEARSシアーズ)と言った古き良き時代のアメリカ古着が、まずウチのベースにはありますね。あとはカリフォルニアでサーフィンをしつつ、そのサーフタウンで古着を買うことが多いので、必然的にサーフテイストが出てしまうのだと思います。
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海にほど近い場所でお店を続けているのは、やはりサーフィンがお二人の生活の軸にあるからなのでしょうか。
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波が良くなった時に、いつでもサーフィンに行けるライフスタイルを築きたいと若いころから思っていたからね。

茅ヶ崎はサーファーがいることが当たり前の街なんです。波が良い時には街がお祭りの様にソワソワします。だからか、サーファーじゃない人も、仕事をほっぽらかして海に向かう大人達に見慣れている気がします。

茅ヶ崎は本当にいい空気感の場所ですよ。水着やウエットスーツで板を抱えて、自転車で海に向かうサーファー、SUNSETタイムにのんびり犬の散歩をしている人、笑顔であいさつを交わし合うご近所さん。みんながこの街を愛してビーチライフをENJOYしている。
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あいさつを交わし合うの、いいですね。サーフィンをするにはうってつけの場所ですね。
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店の名前の由来もサーファーの自由ってところから来ているからね。
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サーフィンと古着に合いそうな名前ってのをすごい考えたよね。半年くらい悩んでたよ。名前で。
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開店する前に付けていたノート見返すと変な名前あるよね(笑)。
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あはは。あるある(笑)。
STONE FREEオーナー アユさん

STONE FREEオーナー アユさん

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店名の話が出ましたけど、ジミ・ヘンドリックスが「STONE FREE」という曲を作っていますよね。何か関係があったりするのでしょうか?
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実は、一昔前には茅ヶ崎でもサーファー同士の縄張り争いみたいなのがあったんです。その時代を知っているから、誰でも来られるようなもっと自由なショップにしたいなと。

自由をキーワードにするなら、「フリー」が店名に入っているといいなと思って。僕は音楽が好きで、ジミヘンの「STONE FREE」ももちろん聞いていました。店名を考えていた時になんとなく気になって、辞書で調べてみるとストーンなんちゃらで「完全な〜」って意味だったんです。

ジミヘンはどういう意図でつけたかわからないけど、「いい名前だな」と思って。

どこのショップに出入りしているサーファーも、ちょっと入ってきて中古ボード見たりとか、洋服みたりとかしてくれたらいいなと。実際いまその通りになっているので嬉しいですね。
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そうなんですね。サーファーに限らず、茅ヶ崎の海には海水浴客も多く訪れますよね。
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そうそう。もちろんお客さんは地元の人がほとんどではあるんだけど。

例えば、夏なんかは海のファッションに慣れてない東京の人が、「都会のファッションで茅ヶ崎に来たら暑くて耐えられない!」って感じでウチに入ってきてくれる。で、「ここの洋服は都会と比べて安い」と言って楽しんでくれたりしてます。
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サーフィンとは自然との対話。地球を愛しているから古着屋を営んでいる

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商品セレクトも、ペンドルトンのウールシャツやVANSなど、サーフやスケートのカルチャーを感じさせますね。TAKAさんから見て、カリフォルニアサーファーのかっこよさはどのあたりにありますか?
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カリフォルニアサーファーのカッコよさって言ったら、決してファッションという物差しでは計れない、中から出て滲み出てしまうカッコよさがどうしてもあるんですよ。あの人達には。

まず、サーフィンをスポーツと捉えている人と、ライフスタイルと捉えている人がいて、僕やカリフォルニアのサーファーはどちらかというとライフスタイルだと思っている。

ご飯を食べたり、寝ることと同じで、サーフィンをしないと生きていけない。本当にオカルトチックだけれども、魂が浄化されるというか。落ち着くこともあるし、本当にハイになる瞬間もある。サーフィンをやればやるほど自然リスペクトな人にならざるを得ないんですよ。
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自然をリスペクト、ですか。
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そう。毎日海に入っていると、自然とのつながりを感じる時がある。雨が降ってくることもあるし、雷が鳴ることもあるし、海洋生物を見かけることもある。

海水が綺麗だなぁと嬉しくなる日もあれば、ゴミや水の汚れを身体で感じて哀しくなる日もある。
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サーフィンをすることは自然との対話をすることでもあると。
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そうです。自然との対話を繰り返すうちに、地球に良いことをしようと思うようになるんです。新しいものを作るのも非常にクリエイティブでいいんだけど、やっぱりどこかで地球に負担をかけるよねって思ってしまう。

なので、サーフィンをすればするほど自然を守りたいという気持ちが大きくなって、リサイクルが大事だと感じるようになる。
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サーフィンをやっていて感じた自然へのリスペクトが、いまTAKAさんが行っている古着屋というお仕事に繋がっているのですね。
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ファッションとして古着にハマっていったのが最初ですけどね。同時にサーフィンを続ける中で、自然をリスペクトする気持ちが大きくなってきて。それらが合わさって、地球に優しい仕事ができている今の状況に誇りを持てています。
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茅ヶ崎で洋服が循環する仕組みを作りたい

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TAKAさんはどれくらいの頻度でカリフォルニアに行っているのですか?
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この店をオープンしてから15年位は経つけど、だいたい年2回くらいは行ってますね。それぞれ2週間くらいかな。
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日本の古着屋とカリフォルニアの古着屋ではどういった点に違いがあるのでしょうか。
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一言ではいえないけど、カリフォルニアは買い取りやドネーション(寄付)の仕組みが充実していて、それがまた住人に浸透していて利用率が高い。

もちろん日本にもリサイクルショップはあるけど、おしなべて買い取り価格がビックリするくらい安いと思います。

その点カリフォルニアは、古着1枚1枚をきちんと見てそれなりの値段を付けてくれる店があるんです。そして、もらった買い取り金で新しい古着を買って帰るんです。
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つまり、トレードのような仕組みですか?
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そうそう。自分で持っていって売って、そのお金で普段と違ったテイストの洋服を買って帰る。やっぱり古着だと安いし、新しいファッションを楽しみやすい。
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その仕組み、すごく素敵ですね!
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なので、このトレードの仕組みはウチの店でも導入しているんです。そのうち自分たちがカリフォルニアに買い付けに行かなくても、この店があることで洋服が循環する仕組みが作れたらいい、なんて将来も考えていたりします。
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うちの店で洋服を買ってもらえるんだったら、買い取り額を上げるんですよ。
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そうそう。ウチでは買い取った服にまず店頭販売価格を付けて、その30%を現金で持ち帰るか、50%でウチで買い物をするか選んでもらってます。
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そうなんですか。それは、特に知り合いだからとかではなくて。
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全然関係ない。
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できれば現金を渡すより、買い物して欲しい。買い物っていうか、交換していってほしい。
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うんうんうん。なんだろうね、売りに来るだけではつまんないので。お金をかけずにファッションを楽しんでほしいので、できれば古い服を売ったお金で、新しい服を買って帰って欲しい。
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若い子たちが来てくれると嬉しい!高校生たちとか、一番ファッションを楽しみたい年頃だと思うし、「古着がいいな」みたいな子達が多いよね。
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素直な感想を言うと、「地球のため」と言うスタンスがかっこいいです。
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地球のためと言うとおこがましいんですけど、自分と後の世代の人たちの為にやっているんだと思います。

結局回りまわって自分達が気持ち良く暮らせなくなるわけですから。自分のやっている仕事によって、自分の生活環境を汚したくないだけです。
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あとはシンプルに自分の体が健康でずっとサーフィンがしていたいっていう。サーファーはみんな波に乗りながら何を食べたら健康でいられるかとか、海に害を与えない方法を追求していってる。それが、結局は地球にいいことをしていることに繋がったりするんですよ。
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そうだね。僕たちがやっているビジネスって、自然を守ることに繋がっているし、サーファーとして誇りを持ってやっていることなんです。これからもカリフォルニア・サーフカルチャーを取り入れながら、この茅ヶ崎というサーフタウンならではの店を自信を持ってやっていきたいと思っています。
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STONE FREEが目指すのは、いわば循環型の古着文化の構築だ。新しいものを買わずとも、古くて良いものを使い続けながら、みんなで地球のために良い暮らしをしていく。

「誠に勝手ながら、波があるので遊んでます」

店先に掲げられた札がもしひっくりかえっていたら、少し海まで散歩してから訪ねてほしい。

ーおわりー

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File

STONE FREE

茅ヶ崎駅から茅09のバスに乗ること7分。茅ヶ崎のメインストリート、一中通りにある古着屋。ビーチまでは徒歩で数分という、サーファーにとっては絶好のロケーションにある。PENDLETONのシャツ、Levi'sのジーンズ、VANSやCONVERSEなど、カリフォルニアの雰囲気が漂うセレクトが光る。メンズに加えレディースの洋服も数多く揃う。お店のオーナーTAKA夫妻は現役のサーファーとして波に乗る生活を送っており、古着だけでなくサーフボードやサーフィン関連グッズも取り揃えている。古着の買取も行なっているので、不要な洋服を持っていき、売ったお金で新しい洋服を楽しめるのも特徴。

公開日:2018年4月21日

更新日:2022年4月14日

Contributor Profile

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伊藤 太成

湘南在住のフリーライター兼ディレクター。日々の仕事や生活を通して、様々なカルチャーの魅力を伝える活動を行っている。特に旧車やヴィンテージカルチャーを愛しており、学生時代から空冷フォルクスワーゲンを乗り継いでいる。現在の愛車は74年式のフォルクスワーゲン TYPEⅡ・ワーゲンバス

終わりに

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サーファーのファッションが多くの人々に愛される理由とは何か。それは、サーファーが追求している自由な生き方に対して人々が憧れを持っているからなのではないだろうか…。波乗りをしない人間が長年思い続けてきた疑問への答えが、今回の取材を通して出たような気がしています。

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