コードバンにブライドルレザー。ペンケースから踏み出す革の世界

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文・写真/ミューゼオ・スクエア編集部

ミューゼオ・スクエア編集長 成松が愛用する品について語る本連載。今回は革のペンケースを紹介します。持っているのについつい新しいモノを買い足してしまうペンケース。なんでも、革にこだわるのは理由があるそう。

なぜレザーのペンケースにこだわるのか

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先日、贔屓にしているテーラーから「革製品のオーダーを始めたのだけど興味ありますか?」と声をかけられた。ならば、と注文したのはペンケース。ペンケースがなかったというわけではない。実は5つほど持っている。しかも全部レザー。

僕はとにかく革物に目がない。理由はとてもシンプルで、経年変化を楽しめるから。

購入したてを100点満点だとする。使って磨いていくうちにツヤが出てきて愛着が湧いてくる。100点満点が150点にも200点にもなる。自分で手を入れて味を出していける。それがたまらない。

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オーダーメイドで作ってもらったペンケース。特徴的な緑の革で作れるのはオーダーならでは。

思い返せば、子供の頃からなんでも磨くのが好きだった。家にある銀器が少しでもくすんでいると、ピカピカにしないと気がすまなかった。木のテーブルにワックスを塗り光らせたら、ソファーも同じように光らせたくてオイルを塗りたくるくらい。「磨くと光る素材がある」という発見はとても印象に残っている。

革という素材に惹かれたのもその経験が原点にあるのだと思う。

さらに革の光り方は本当に多種多様。牛や馬といった動物の違いや、使われる部位で質感や磨きをかけた際の雰囲気が随分と異なってくるところに好奇心をくすぐられる。

例えばコードバンは水に濡れてしまうとすぐにシミになってしまうけれど、綺麗にエイジングした時には一本筋の入った気品のある輝きになる。

だからか、さまざまな種類の革を試したくなり、レザーペンケースは5種類全て違う革を使っている。

ブレイリオ(Brelio)

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最初に購入したペンケースはブレイリオのコードバンを使用したペンケース。

モンテグラッパのシルバーでできたペンを買った時に、「経年変化するシルバーのペンを入れるケースにも、味が出るモノを」と考えて購入した。

1990年ごろは革靴のオールデンが人気でコードバン全盛期だった時期。僕も例に漏れずやはりコードバンを使ってみたくなった。手に入れた時は「ちょっと大人になったな」と感慨深かった。

ブレイリオ(Brelio)

1997年創業のコードバン製品メーカー。4代に渡って継承されている伝統技術を用いた革製品はシンプルだが存在感がある。扱う革がコードバンのみという点からも、作り手のこだわりが垣間見える。

ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)

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「ブランド物も一回は使わないと良し悪しがわからないのでは」と考えて財布とキーケースとシガレットケースをまとめてタイガというシリーズで揃えた。そのシガレットケースをペンケースとして使用している。

タイガは精巧な型押し(グレイン)が施された洗練された上質な牛革(カーフレザー)を使用したシリーズ。
その時のキーケースは18年経った今でも現役で使っている。さすがルイ・ヴィトンだ。

ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)

フランスでトランク職人として活躍していたルイ・ヴィトンが1854年に設立したブランド。旅を原点にし考案した商品は当時の貴族から高い評価を獲得し規模を拡大。一方で偽物が市場に流れるようになったため、創始者ルイ・ヴィトンの「LV」のイニシャルに星と花を組み合わせたモノグラム・モチーフを考案。現在でも受け継がれるトレードマークとして愛されている。

グレンロイヤル(GLENROYAL)

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代官山にあったテーラー A WORKROOM(ア・ワークルーム)で買ったのがグレンロイヤル

ブライドルレザーのペンケースを使ってみたくて購入した。レザーのペンケースではあまり見ないデザインで、見た目の通りたくさん入って便利。

グレンロイヤルのペンケースは「これからペンを使うぞ」という仰々しい感じが好き。クライアントとの打ち合わせの時にカバンから出すと結構な確率で話のきっかけになる。

グレンロイヤル(GLENROYAL)

グレンロイヤルは1979年スコットランドの中西部エア州で設立された革製品ブランド。英国産ブライドルレザーを使用した製品を数多く揃える。ベジタブル・タンニン製法によって、長い時間をかけてじっくりワックスを染み込ませたブライドルレザーは耐久性に富み、磨くたびに光沢が深まるので末長く愛用したくなる製品ばかり。

ワイルドスワンズ(WILDSWANS)

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最近のお気に入りはワイルドスワンズのサドルプルアップレザーを使用したペンケース。

ワイルドスワンズは日本のブランドで、コバ(革の切断面)が滑らかに仕上げられているのが特徴。細かい部分に手を抜かないところが日本の職人らしさがあって気持ちいい。買った時にコバ磨き機がついてくるところも、長く使い続けられることを前提にモノづくりに取り組んでいることを感じさせる。

ワイルドスワンズのレザーペンケースはもう一つ持っていて、それはカバ革。一本挿しというデザインが好きだったのと、エキゾチックレザー好きとしては手元に置いておきたかった。

カバ革を使用したペンケース。しっとりした質感が高級感を漂わせる。

カバ革を使用したペンケース。しっとりした質感が高級感を漂わせる。

ワイルドスワンズ(WILDSWANS)

1998年にスタートした日本の皮革製品ブランド。直営店では、メンテナンスやリペアも受け付けている。美しく磨き上げられたコバが特徴。ワイルドスワンズの革製品にはコバを磨くスリッカーが付属している。アトリエでは月1回〜月2回、アトリエの作業風景などを見学することが出来る。見学の他にもワークショップやパターンオーダー、限定品の発売なども実施。

6つあるからこそ、一つひとつのペンケースが引き立つ

一番最初に購入したのはブレイリオのコードバンのペンケース。最近は特定の場所に留まって仕事をすることが少ないので、収納力のあるグレンロイヤルのペンケースをよく使っている。

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見てわかるように、各社デザインコンセプトが異なっている。ペンの収納の方法、革、全部違う。作り手はどういうペンを入れることを想定しながら作ったのかを考えて、そのコンセプトに合わせてみたり。ペリカンのスーベレーンにはグレンロイヤルのペンケースが合うな、とペンを入れ替えてみたり。6つも持っているとそれぞれのよいところが浮かび上がってくる。

エイジングしたペンケースに新しく購入したペンを挿してみる。しっくりとはまった。すると、また一ついいものを知ったような気になる。

ーおわりー

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公開日:2017年11月18日

更新日:2021年6月25日

Contributor Profile

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佐々木 健人

エディター、プランナー。1993年東京都生まれ。時計メーカーを経てミューゼオに入社。オンラインジャーナル「ミューゼオスクエア」のディレクション、ECサイト「ミューゼオファクトリー」の製品開発などを担当。

終わりに

佐々木 健人_image

僕もペンケースは革で出来た製品を使っていますが、1つのみ。並べてみると革の厚みや種類によって印象が大きく変わってきますね。レザーのペンケースは金具をあまり使わないデザインが多いので、ペンを傷つけずにしまっておけるので機能的でもあります。

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