第二回 ねえムーミン、こっち向いて!

第二回 ねえムーミン、こっち向いて!_image

文/萩原まみ
写真/柳沼康史

個性豊かなキャラクターが多数登場するムーミンシリーズ。今回から5回にわたり、キャラクターごとにスポットを当てて、その性格とグッズについて詳しくご紹介していきたい。まずは、主人公のムーミントロール。心優しくて勇気のあるムーミントロール族の男の子だ。体の色は本来は白だが、アニメ化するにあたって区別がつきやすいよう、色がつけられたという。その名残が古いグッズにも表れている。

カバじゃない、ムーミントロール族の男の子

 ちょっとややこしいのだが、「ムーミントロール」というのは種族全体を表す名前で、主人公の男の子の名前もムーミントロール。年齢ははっきりしない。お父さんはムーミンパパ、お母さんはムーミンママと呼ばれていて、ムーミントロールは略してムーミンと呼ばれることもある。

 ママだけはいつもハンドバッグを持っているが、パパもママもムーミンも外見上の姿の違いはほとんどない。そのため、イギリスの新聞にコミックス連載が始まったとき、パパにはシルクハット、ママにはエプロンという小道具が必ず添えられることとなった(参考文献:冨原眞弓著『ムーミンのふたつの顔』、ちくま文庫)。また、日本で作られた昭和版アニメ『ムーミン』では体にグレーやブルーの色がつけられたが、原作ではムーミン族の体は真っ白だ。

 ちなみにムーミントロールのガールフレンドのスノークのおじょうさん(昭和版アニメではノンノン、平成版アニメ『楽しいムーミン一家』ではフローレンと、呼び名は違っても同一キャラクター)はムーミントロールとは異なるスノークという種族で、彼女には前髪という特徴があるが、兄のスノークもパッと見はムーミン族と区別がつかないため、昭和版アニメでは原作の裁判のシーンのカツラ、平成版アニメではメガネが追加された(参考文献:『pen』376号、CCCメディアハウス)。

 ムーミンはしばしばカバと間違えられるが、カバではないことを証明するエピソードがコミックスに登場する。『劇場版ムーミン 南の海で楽しいバカンス』(バップからDVD発売中)でもムーミンパパが友達のモンガガ侯爵にカバと間違えられて動物園に閉じ込められた武勇伝を披露するが、モンガガは「そんなバカな。カバはウィスキーを飲まない!」と一笑に付すという印象的なやりとりがあった。

 作者のトーベ・ヤンソンはスウェーデン語系フィンランド人で、ムーミン童話はスウェーデン語で書かれた。トロールというのはトトロの語源にもなった北欧の妖怪の一種のことだが、ムーミントロールは民話に登場する恐ろしげなトロールではなく、トーベが作り出したオリジナルの生物。その大きさを訊かれたトーベは「電話帳ぐらい?」と答えたといわれている。

MuuseoSquareイメージ

MuuseoSquareイメージ

フィンランドの陶器ブランド、アラビアのマグ。左の「Moomintroll on ice」(1999~2012)が廃番になり、現在は右の「Moomintroll」(2013~)が販売中。真ん中の「Day dreaming」は2005年にフィンランドのアラビアミュージアムで開催されたムーミン展の会場限定品として2005個だけ販売されたもの。友人経由で約6万円で購入した、商品単価では私のコレクションのなかで最高額のグッズ。原画を生かした渋めのデザインが秀逸。

MuuseoSquareイメージ

デンマーク王室御用達(ロイヤルワラント)メーカー、レ・クリントから発売されたムーミン顔型のランプシェード。最初に見たときは冗談だろうと思ったのだが、縁あって購入してみた。私のなかでは“愛すべきバカもの”カテゴリーだったが、さすがは北欧の名ブランド、特殊プラスティックシートに施されたカッティングから漏れる光は柔らかく美しい。輸入元はスキャンデックスで、販売はすでに終了しているが、まだ入手は可能。顔型以外にムーミンの絵が入ったシェードも数種類あり、そちらも大人買い。

MuuseoSquareイメージ

ここ数年、ムーミンとアパレルメーカーとのコラボが続いている。左から、『たのしいムーミン一家』の名場面×ズッカ、『ムーミンパパ海へいく』×メルローズクレール、『ムーミン谷の冬』×マーブルシュッド(すべて現在は販売終了)。Tシャツも数えきれないぐらい持っているが、原作小説の挿絵をそのまま使った絵柄、大人っぽい色づかいとデザインがお気に入りの3枚。

MuuseoSquareイメージ

コレクションのなかでも自慢の“バカもの”たち。イチオシはおめん。『楽しいムーミン一家』(テレビ東京系)放送当時の商品なので、大人になってから買った。製氷皿は実際に使ってみたが、今のようにシリコン素材ではないので、あまりきっちりとは作れなかった記憶が。ルアーはオークションで購入したが、未使用なので、本当に魚が釣れるのかどうか不明。クレーンゲーム景品の洗濯バサミ、たいそうカードは友人からのプレゼント。

MuuseoSquareイメージ

ムーミンの世界を深く知りたい方におすすめの雑誌とムック本は、私も関わらせていただいた自信作。『MOE×ムーミンの公式ガイド』(白泉社ムック)は絵本雑誌『MOE』に掲載された24年間12回のムーミン特集のなかから選りすぐった記事を再録。すでに絶版なので、在庫があるうちに購入を! 『PEN』(CCCメディアハウス)の「ムーミン完全読本。」は懐かしいアニメの歴史を辿るなど、今までにない切り口が新鮮。折り込みのキャラクター大図鑑もわかりやすいと好評なので、ぜひ!

File

講談社文庫40周年の非売品ぬいぐるみ

2011年、講談社文庫40周年記念キャンペーンの際に作られた非売品のぬいぐるみ。50冊分の応募券と交換にもらえる仕組みだったが、100冊分のカメラ、20冊分の切手シートなどを優先したのでぬいぐるみは逃してしまい、後日、プレゼントしていただいた。まっしろなボディとふわふわの手触り、お座りポーズがとても愛らしい。写真ではわかりづらいが、オリジナル仕様の緑色のポシェットには秘密の豆本が入っている。

File

<トップ画像アイテム紹介>

海洋堂が原型を手がけた北陸製菓のムーミンズランチ、奇譚クラブのフィギュアマスコット、HIGHTIDEのペーパーウエイト、ベネリックの原作フィギュア、千趣会マンスリークラブのフィギュアコレクション、ペッツ、キューブリック、スウェーデン製のキッチンタイマー、フィンランドの菓子メーカーFazerのおまけ、ペットボトル飲料やガムのおまけ、ぎふしんのノベルティのフィギュアなどなど。年代や国によって表情がさまざまなのが興味深い。

トイ・フィギュアを一層楽しむために。編集部おすすめの書籍

プレゼントに、コレクションに最適なオリジナルBOXセット

51wk61qsuml. sl500

ムーミン全集[新版]全9巻BOXセット

大人気キャラクター・ムーミンの原典であるムーミンの小説の翻訳が、約50年ぶりに改訂されました。今までの文章を活かしつつ、[新版]として1巻ずつていねいに、間をあけながら刊行して参りましたが、このたびその完結と、トーベ・ヤンソン最初のムーミン小説『小さなトロールと大きな洪水』の出版から75周年を迎えたことを記念して、新版全9巻のBOXセットを発売致します。

童話・絵本・コミックスに登場する全キャラクターを、さまざまな登場シーンを盛り込みながら105項目で徹底紹介

51swonc2bel. sl500

ムーミンキャラクター図鑑

ムーミンの童話9冊・絵本3冊・コミックス42冊(未邦訳分を含む)など、すべてのお話から105項目(人数だと105プラスアルファ)のキャラクターを紹介する「登場人物図鑑」です。童話に限定したキャラクター紹介はこれまでもありましたが、ジャンルを横断しての編纂ものは、本書が世界初の企画です。
おなじみの名場面を引用したり、作品を横断する出来事にも注目しつつ、それぞれの人物像に迫ります。
また、「あなたのまわりのスナフキン」「スナフキンになるには?」など、実生活にそのキャラクターがいたら…という洞察もユニークです。

<担当編集者から>
ムーミン谷の個性あふれる登場人物(105人プラスアルファ)がこの1冊に!
コミックスを拾い読みするも良し、童話の名シーンを読み込むも良し、フキダシに記された名言を噛みしめるも良し、カラー挿絵や美しい線画にうっとりするも良し、どのページからでもどうぞ!
ムーミン一家の基本から、人気者スナフキンの知られざるエピソード、忘れがたいひと言を呟く一度限りの通行人まで、さまざまなシーンから魅力あふれる登場人物たちが勢揃い。まだ原作の童話やコミックスを読んでいない人も、もう読んだ人も、たっぷり楽しめるビジュアル満載の図鑑です。

公開日:2015年9月18日

更新日:2021年12月6日

Contributor Profile

File

萩原 まみ

フリーライター歴25年。イケメン俳優、北欧、ジェンダー、セクシュアリティなどが得意ジャンル。最近はムーミン愛好家としても活動しており、『ムーミンマグ物語』(講談社)の文章を担当。趣味は料理。

終わりに

萩原 まみ_image

原作挿絵のムーミントロールはちょっと困ったような、照れたような、微妙な表情をしていることが多く、グッズに適したニコニコ顔というのは意外に少ないのです。性格的にも、周囲に振りまわされたり、悩んでいたり、「俺が俺が!」と前に出てくるタイプの主人公ではありません。そのせいか、グッズでもミイやスナフキンはあるのにムーミンはない、なんてことも。でも、白色のムーミンがいてこそ、周囲の個性的なキャラクターが引き立つというもの。ついついレアな脇キャラのグッズを優先してしまうけれど、迷ったときにはやっぱりムーミントロールを選びます。

Read 0%