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コレクション歴30年。ムーミン愛好家が語り尽くす、かわいい!だけじゃないディープなムーミンの世界。_image
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コレクション歴30年。ムーミン愛好家が語り尽くす、かわいい!だけじゃないディープなムーミンの世界。

「ムーミン」と聞いて思い浮かべるのはアニメだろうか、巷にあふれるムーミングッズだろうか。北欧フィンランドで生まれ、今では世界中で愛されるキャラクター、ムーミン。特に日本では本国以上に人気が高く、大人になってもKawaiiものを好む国民性もあいまって、さまざまなグッズが次々に発売されている。
 そんなムーミンの魅力を語り尽くす連載「物語を感じるムーミンコレクション」。初回はムーミンを愛して約40年、趣味が高じて『ムーミンマグ物語』(講談社)の執筆も手がけたフリーライター萩原の自己紹介と、ジャンルを越えたムーミン作品の魅力について。次回以降はキャラクター別に秘蔵のグッズ自慢を展開していきたいと思う。

取材日: 2015年7月29日

文/萩原 まみ
写真/柳沼康史

アニメとは違う、原作の「わからなさ」に惹かれて

 ムーミングッズを集め続けている私だが、ムーミン谷のお話のなかにも物集めが大好きなキャラクターが登場する。それは、スニフとヘムレンさん。ムーミントロールの友達のスニフは宝石やキラキラ光るものに目がなく、金目のものを片っ端から手に入れたがる。ヘムル族にはコレクターが何人もいて、昆虫や切手、植物など、特定のものを系統立てて徹底的に蒐集している。
 私は、どちらかというとスニフに近いコレクター。きちんと整頓したり、順序にこだわったりすることなく、高価なヴィンテージから新聞広告の切り抜きまで、ムーミンに関するものを手当たり次第に集めている。世界には私よりも高価なグッズをコンプリートしている人や自作のドールハウスなどのお宝を所有する人もいるが、コレクションの雑多さで言えば誰にも負けないのではないだろうか。

 フィンランドの画家で作家のトーベ・ヤンソンが生み出し、イギリスの新聞連載と日本で作られたアニメの影響も手伝って世界的な人気を得ることとなったムーミン。
 私が最初にムーミンを知ったきっかけは、同年代の多くの人と同じく、昭和版のアニメ『ムーミン』だった。ほぼ同時期に小学校の図書室で原作小説を借りて読んだのだが、難しすぎてよくわからなかった記憶がある。当時の私はムーミンだけでなく、『あらいぐまラスカル』や『赤毛のアン』、『アルプスの少女ハイジ』『トム・ソーヤーの冒険』『若草物語』など、世界名作劇場の原作を中心に本を読みまくっていた。
 それらの作品はどれも今でも好きだが、ムーミンにだけ突出して惹きつけられた理由を考えると、アニメにも描かれているムーミン谷という架空の世界とそこに住む不思議なキャラクターたちの魅力、そして原作の「わからなさ」だったように思う。楽しいだけの明るい作品ではなく、勧善懲悪で割り切ることもできない。現在に至るまで、何度も何度も繰り返し読んでいるが、そのたびに新しい発見があり、おもしろいと感じる場面、好きだと思うキャラクターが変化していく。
 ムーミンのどこが好き?とファンに訊いたとき、返ってくる答えは千差万別で、緻密で端整な絵だと言う人もいれば、哲学的なストーリーだと言う人も、特定のキャラクターの魅力を挙げる人もいる。読書好きな私にとってはやはり「物語」が大切で、トーベ・ヤンソンがムーミンシリーズを書くのを止めたあとに発表したファンタジーではない大人向けの小説(筑摩書房から発売中)もものすごく好きだ。

 読書だけにとどまらずグッズを集めるようになったのは、短大学内の文芸学会で「ムーミン--トーベ・ヤンソンの世界」と題した研究発表をしたところ、周囲からの反響がとても大きく、友人たちが「このレコード、もういらないからあげる」とか「ムーミンのノートを売ってたから」と、次々にプレゼントしてくれたのがきっかけ。ムーミングッズには原作の挿絵をそのまま使ったデザインのものも多い。心に刻まれた名場面を身近に置いて実用できるのがうれしくて、コレクションが加速していった。

ムーミングッズを自分で買い始めたのは1990年前後。ステーショナリーを中心に、アニメやパステル調のかわいらしい絵柄のものが多かった。

ムーミングッズを自分で買い始めたのは1990年前後。ステーショナリーを中心に、アニメやパステル調のかわいらしい絵柄のものが多かった。

最近はトーベ・ヤンソンの原画をそのまま使ったり、ヴィンテージファブリック柄を復刻したりしたデザイン性の高いグッズが増えている。

最近はトーベ・ヤンソンの原画をそのまま使ったり、ヴィンテージファブリック柄を復刻したりしたデザイン性の高いグッズが増えている。

原画展や催事の会場限定販売のグッズも多い。これはコレクションのほんの一部で、特にクリアファイルやマスキングテープはついつい大人買い。

原画展や催事の会場限定販売のグッズも多い。これはコレクションのほんの一部で、特にクリアファイルやマスキングテープはついつい大人買い。

小説、絵本、コミックス、アニメ。広がっていくムーミンの世界

 例えばミッキーマウスといえばテーマパークを連想する人が多いはず。スヌーピーといえばコミックス、キティちゃんならグッズ、ミッフィーは絵本だろうか。ムーミンの場合、原作、アニメ、コミックスなど、媒体によってキャラクター設定や描かれ方が微妙に異なり、それぞれにファンがいる。全方位的ムーミン愛好家である私のコレクションを披露しつつ、その違いをご紹介したい。

今からちょうど70年前に発表された挿絵入りの小説『大きな洪水と小さなトロール』がすべての原点。全9巻の原作小説は私にとって特に大切なもので、文庫本を1冊ずつ集め、読み込んでぼろぼろになってしまったため、保存用としてボックスセットを購入。さらに新装版と限定カバーボックスも買い、文庫だけでも4セット所有。右奥はハードカバーの全集全巻ボックスセット、左奥は発売されたばかりの『たのしいムーミン一家 復刻版』(講談社)。

今からちょうど70年前に発表された挿絵入りの小説『大きな洪水と小さなトロール』がすべての原点。全9巻の原作小説は私にとって特に大切なもので、文庫本を1冊ずつ集め、読み込んでぼろぼろになってしまったため、保存用としてボックスセットを購入。さらに新装版と限定カバーボックスも買い、文庫だけでも4セット所有。右奥はハードカバーの全集全巻ボックスセット、左奥は発売されたばかりの『たのしいムーミン一家 復刻版』(講談社)。

1954年、イギリスの大手新聞でコミックスの連載がスタート。約40カ国120紙に掲載されるほど大ヒット。日本ではアニメ化に合わせて1979年に講談社から「ムーミンまんがシリーズ」10巻、1991年に福武書店から「ムーミンの冒険日記」全10巻が発売(ともに絶版)。福武版と、現在発売中の筑摩書房「ムーミンコミックス」全14巻はすべて所有。左上は友人がくれた古いスウェーデン語版で、トーベの弟ラルスが執筆を引き継いだため、絵柄が異なる。

1954年、イギリスの大手新聞でコミックスの連載がスタート。約40カ国120紙に掲載されるほど大ヒット。日本ではアニメ化に合わせて1979年に講談社から「ムーミンまんがシリーズ」10巻、1991年に福武書店から「ムーミンの冒険日記」全10巻が発売(ともに絶版)。福武版と、現在発売中の筑摩書房「ムーミンコミックス」全14巻はすべて所有。左上は友人がくれた古いスウェーデン語版で、トーベの弟ラルスが執筆を引き継いだため、絵柄が異なる。

昭和版と呼ばれる日本製のアニメ『ムーミン』(フジテレビ系)は1969年から全65話、72年から52話放映、ブームを巻き起こした。ただし、キャラクターの性格もストーリーも原作とは大きく異なるものだったため、現在は幻の作品となっている。VHSセルビデオ(販売終了)は子ども心に印象的だった「笑いの仮面」が見たくて、発売当時に購入。カルタと紙芝居、ティッシュケースはオークションや友人経由で入手。当時、食器、人形などのグッズも多数販売されていた。

昭和版と呼ばれる日本製のアニメ『ムーミン』(フジテレビ系)は1969年から全65話、72年から52話放映、ブームを巻き起こした。ただし、キャラクターの性格もストーリーも原作とは大きく異なるものだったため、現在は幻の作品となっている。VHSセルビデオ(販売終了)は子ども心に印象的だった「笑いの仮面」が見たくて、発売当時に購入。カルタと紙芝居、ティッシュケースはオークションや友人経由で入手。当時、食器、人形などのグッズも多数販売されていた。

1990年、原作者監修のもと、日本で新たなアニメ『楽しいムーミン一家』(テレビ東京系)が作られた。大人も子どもも楽しめる上質の作品として高く評価され、現在もたびたび再放送されている。このBlu-rayボックスは現在入手困難だが、人気エピソードを集めた廉価版DVDもJVCケンウッド・ビクターエンタテインメントから発売されているので見てみたい方にはそちらをおすすめ。左上はアニメのキャラクター設定担当者による『名倉靖博画集 ムーミン』(白泉社/絶版)。

1990年、原作者監修のもと、日本で新たなアニメ『楽しいムーミン一家』(テレビ東京系)が作られた。大人も子どもも楽しめる上質の作品として高く評価され、現在もたびたび再放送されている。このBlu-rayボックスは現在入手困難だが、人気エピソードを集めた廉価版DVDもJVCケンウッド・ビクターエンタテインメントから発売されているので見てみたい方にはそちらをおすすめ。左上はアニメのキャラクター設定担当者による『名倉靖博画集 ムーミン』(白泉社/絶版)。

1978〜82年にポーランドで放映された『ムーミン・パペット・アニメーション』。手前のアスミック版(廃盤)は昭和版アニメでムーミンを演じた故・岸田今日子が全キャラをひとりで担当。くすんだ色調と岸田の声が醸しだす少々不気味な雰囲気が魅力。右奥のNHKエンタープライズ版は2013年発売で現在も入手可能。デジタルリマスター処理によって色鮮やかに生まれ変わり、日本語版音声も松たか子と段田安則があらたに吹き込んだため、同じ作品にもかかわらずかなり雰囲気のことなるものとなった。

1978〜82年にポーランドで放映された『ムーミン・パペット・アニメーション』。手前のアスミック版(廃盤)は昭和版アニメでムーミンを演じた故・岸田今日子が全キャラをひとりで担当。くすんだ色調と岸田の声が醸しだす少々不気味な雰囲気が魅力。右奥のNHKエンタープライズ版は2013年発売で現在も入手可能。デジタルリマスター処理によって色鮮やかに生まれ変わり、日本語版音声も松たか子と段田安則があらたに吹き込んだため、同じ作品にもかかわらずかなり雰囲気のことなるものとなった。

日本では2015年2月に公開された『劇場版ムーミン 南の海で楽しいバカンス』。ムーミンたちがセレブの集うリゾート地に繰り出すというコミックスのエピソードを元に本国フィンランドで初めて作られた長編アニメ作品で、大人っぽいキャラ造形と美しい色づかい、風刺の効いたストーリーが見どころ。写真の豪華版DVD(バップから発売中)は特典目当てで購入。特典付きはDVDだけだったため、Blu-ray通常版も買った。右上の非買品のプレス資料は原稿を書かせてもらった自慢の一品。

日本では2015年2月に公開された『劇場版ムーミン 南の海で楽しいバカンス』。ムーミンたちがセレブの集うリゾート地に繰り出すというコミックスのエピソードを元に本国フィンランドで初めて作られた長編アニメ作品で、大人っぽいキャラ造形と美しい色づかい、風刺の効いたストーリーが見どころ。写真の豪華版DVD(バップから発売中)は特典目当てで購入。特典付きはDVDだけだったため、Blu-ray通常版も買った。右上の非買品のプレス資料は原稿を書かせてもらった自慢の一品。

ムーミンが紙の世界を飛び出して初めて舞台化されたのは1949年のこと。トーベ・ヤンソン自身が舞台美術と衣装を担当した。その後もムーミンの物語は何度も舞台化され、オペラにもなり、2015年にはムーミンバレエが話題を呼ぶなど、実はさまざまな形態で表現されている。右は1978年にソビエト連邦で作られたパペットアニメのDVD。左は日本の劇団飛行船によるマスクプレイミュージカルのビデオ。どちらも独自の解釈がユニーク。オークションとフリマで見つけた貴重なお宝。

ムーミンが紙の世界を飛び出して初めて舞台化されたのは1949年のこと。トーベ・ヤンソン自身が舞台美術と衣装を担当した。その後もムーミンの物語は何度も舞台化され、オペラにもなり、2015年にはムーミンバレエが話題を呼ぶなど、実はさまざまな形態で表現されている。右は1978年にソビエト連邦で作られたパペットアニメのDVD。左は日本の劇団飛行船によるマスクプレイミュージカルのビデオ。どちらも独自の解釈がユニーク。オークションとフリマで見つけた貴重なお宝。

2014年、トーベ・ヤンソンの生誕100周年を記念して作られたフィンランドの記念切手、コイン、「TOVE100」のロゴ入りTシャツなど。トーベが文章や挿絵を手がけたムーミン以外の書籍も大好きで、カレンダーなどのトーベグッズも集めている。自伝的小説『彫刻家の娘』は昭和48年発行の講談社文庫版(絶版)。右手前の決定版評伝『トーベ・ヤンソン 仕事、愛、ムーミン』(講談社)は原作者の生きざまが伝わる600頁超の力作。左手前は2014年にスウェーデンで発行された豪華本。

2014年、トーベ・ヤンソンの生誕100周年を記念して作られたフィンランドの記念切手、コイン、「TOVE100」のロゴ入りTシャツなど。トーベが文章や挿絵を手がけたムーミン以外の書籍も大好きで、カレンダーなどのトーベグッズも集めている。自伝的小説『彫刻家の娘』は昭和48年発行の講談社文庫版(絶版)。右手前の決定版評伝『トーベ・ヤンソン 仕事、愛、ムーミン』(講談社)は原作者の生きざまが伝わる600頁超の力作。左手前は2014年にスウェーデンで発行された豪華本。

日々を楽しく彩ってくれるムーミングッズたち

 コレクションを始めた当初は店頭のものを全種買い占めることができるぐらいアイテムの少なかったムーミングッズだが、今では新たに発売される数が多すぎて、収納スペース的にも経済的にもそんなことはとても不可能になってしまった。最近の私の購入基準は、飾るという用途も含め、実用ができるもの。実際には一生かかっても使い切れないほどのグッズがすでに手元にあるのだが、「使いたい!」「素敵」と思えるかどうかがポイントだ。
 ムーミンやフィンランド好きな友人たちを招いてのホームパーティのときは、ここぞ!とばかりにグッズをフル活用。今回は講談社から発売されたばかりの『ムーミンカフェ おもてなしごはん』のメニューを再現してみた。

MuuseoSquareイメージ

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MuuseoSquareイメージ

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 ここまで集めておいてなんだが、私にとってムーミングッズは“人生に欠かせない!”とかではなく、生活に彩りを添え、より豊かにしてくれるもの。ムーミンつながりの友人もたくさんいるし、フィンランドへは4回行ってムーミン関連スポット巡りの取材もした。最近はムーミンに関するお仕事もいただけるようになってきたが、これからもファン、ユーザーとしての立場を忘れず、楽しめる範囲でムーミンとつきあっていきたいと思っている。

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ムーミンたちが暮らすハウスのグッズもずらり

ムーミン谷にある、ムーミンパパが建てた家(ムーミンやしき、ムーミンハウス)。ムーミントロール、ムーミンパパ、ムーミンママのムーミン一家が、いつも誰かしら訪れている友達やお客さんたちと楽しく暮らしている。キャラクターだけでなく、ムーミンムーミンハウスも秘かな人気グッズで、こんなにたくさんの種類がある。キャンディポット、キーラック、お菓子缶、ペンポーチ、ポット、マグなどなど。特にレアなのは後列左から3つめの陶器のキャンドルホルダー。初めて行ったフィンランドで衝動買い、慎重に持ち帰ったお宝。変わったデザインのもの、マイナーなキャラクターの商品はついつい買わずにいられない。

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貴重なマグカップコレクション65点を眺められる一冊

コレクションのなかでいちばんわかりやすく自慢できるのはフィンランドの老舗陶器ブランド、アラビア(輸入元:スキャンデックス)のマグカップ。現在73種類存在するうちの70種類を所有していて、予備も含めるとおそらく200個は持っているはずだ(怖くて数えていない)。入手困難な廃番品や限定品のなかには1個何万円の値がつくものも珍しくない。2014年発行の『ムーミンマグ物語』(講談社)では、当時発売されていた全65種のマグすべてを写真入りで紹介。マグに使われている絵の出典を解説する文章を担当させてもらった。
http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062189187

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