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第二回 これをやらなきゃ始まらない。靴のデザインを考える

なんとなく靴作りを始めてみた、いち素人です。この連載では、履ける靴を一足仕上げるまでをドキュメントスタイルでお伝えしていきます。靴制作の過程を見てもらう中で、靴マニアじゃなくても「なぜ、いい靴はこんなにも高いのか?」の疑問、さらには靴を愛したくなるヒミツがわかってもらえるのではないかと思います。靴の裏側(というと大げさですが)がわかると、靴を見るのが楽しくなる!(購入に至るか否かはまた別の話…) 今回から靴作りをスタートします。

取材日: 2015年7月9日

文/オダマキミホコ

作業に入る前に、簡単ですが靴作りの工程を書き出してみました

いつできるんだよ!という突っ込みを受けそうなので、工程を書き出してみました。

1.木型を選んでデザインを決める ◀️今ココ
2.型紙を作る
3.革を選んで裁断する
4.アッパーを作る(甲、側面、かかとを縫い合わせる
5.釣り込み(アッパーを木型に固定する
6.底付け
7.仕上げ


書き出してみたものの実際はこんなに単純にはいかず…。6は「底付け」とひとことですませていますが、細かく追うとたくさんの工程があります。底付けの方法、コバの形、かかとの種類…、決めなくちゃいけないことは山ほどあったりします。

個人的には1が一番しんどく、6が一番好きな作業です。底付けの方法もいくつかあるのであわせて紹介していけたらと思っています。今回のウィングチップシューズはパーツの数が多いのと大量の穴開けをしなければいけないので、4の工程もなかなかしんどいことになるかと思っています。
ウィングチップシューズにしたのは、基本的な形をおさらいしたかったのと、大変な穴開けを避け続け一度も作ったことがなかったため、この辺りで挑戦してみようと思ったからです。デザインの前に色だけは白と決めていました。(良い革に出会ってしまったら心変わりするかもしれませんが…)

ウィングチップシューズはどんなものか改めて調べてみました

普段ルーツやいわれなどをあまり気にしないのですが、せっかくの連載なので改めて調べてみました。ウィングチップシューズは、つま先の切り替え部分が翼のような形をしています。翼(=ウィング)型のチップ(=革片)、が付いている靴ということでウィングチップシューズ。つま先を始め、アッパー(足を包み込む甲部分)にあけられた穴飾りも特徴です。もともとはアイルランドやスコットランド地方で作業靴として履かれていたもので、細かな穴飾りは装飾ではなく、濡れてしまった靴が乾きやすいようにとあけられた通気孔だったとか。見た目はドレッシーなのに、作業靴というカジュアル靴扱いなのが意外。ちなみに冠婚葬祭には向かない種類の靴とのことです。(靴は装飾のないシンプルな靴ほどフォーマル度が高い)

基本的なウィングチップシューズ。デザインは内羽根式、外羽根式の両方のタイプがある。写真は外羽根式。つま先以外のパーツの形はブランドによってさまざま。

基本的なウィングチップシューズ。デザインは内羽根式、外羽根式の両方のタイプがある。写真は外羽根式。つま先以外のパーツの形はブランドによってさまざま。

ウィングチップの両端がかかとまで延びたデザインで、外羽根式+ダブルソールの短靴はロングウィングチップと呼ばれる。これは米国独自のデザインで、アメリカンブローグとも呼ばれる。

ウィングチップの両端がかかとまで延びたデザインで、外羽根式+ダブルソールの短靴はロングウィングチップと呼ばれる。これは米国独自のデザインで、アメリカンブローグとも呼ばれる。

つま先の穴飾り模様はメダリオン、おかめ飾りとも呼ばれていて、その靴の個性が出る部分です。切り替え部分の「:●:●:●」という模様がつながっている部分はブローグパーフォレーション)と呼びます。ギザギザになっているところはピンキングと呼びます。余談ですが、メダリオンとパーフォレーションがあしらわれたストレートチップ(つま先の部分に横に一文字の縫い目のラインがある靴)のことをセミブローグと呼ぶそうで(ウイングチップはフルブローグ)、さらにメダリオンなしでパーフォレーションのみのストレートチップをクォーターブローグ、パーフォレーションもメダリオンもないウィングチップはブラインドフルブローグと呼ぶそうです。今回フルブローグなので穴飾りが多いのと、ウィングチップシューはそもそもパーツ数が多いので苦戦すること間違いなしですが、今回はフルブローグの外羽根式で進めていこうと思っています。

MuuseoSquareイメージ

MuuseoSquareイメージ

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有名シューズのメダリオン。ブランドごとに違うのはもちろん、同じブランドでも違うデザインもあります。

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私のメダリオンのスケッチ画。いろいろこねくりまわしてみましたが、できるだけあけないデザインを考えました(笑)。

ものすごく原始的な方法でデザインを考える

前置きが長くなりましたが、作業に入りたいと思います。そもそも靴作りは職人の数だけ方法があって、これが正解!というものがありません。基本的にはそれが心地よかったりするのですが、指標とか目安というのはなければないで不安になることもあるので困りものです…。この連載では、私が師匠に教えてもらった方法なので(しかも私流のアレンジもあり)、みなさんが知っている方法とは違う場合もありますが、そこはサラリと流してください。

木型の上に紙を貼り、そこにデザインを描いてパーツごとに切り出して型紙の元型を作る。そこに縫いしろ(パーツとパーツをつなぐ部分)を足して型紙が完成します。まずは木型(片方だけ)にマスキングテープをすき間なく貼っていきます。あとで剥がすので、重なり分もそれなりに作っておきます。貼り終えたらマスキングテープの上から鉛筆で作りたい靴のデザインを描いていきます。ガイドとしてセンターのラインをひいてから、好きな形を描いていくのですが、描いては消し、描いては消し…の繰り返し。個人的にはこの作業が一番ツライです(笑)。作りたい靴の見本があるとラクですね。前から後ろから横から。いろいろな角度から見てみて修正を繰り返します。
こんなことをしなくても平面から型紙を起こす方法もありますが、それにはいろいろな計算やら、経験も必要です。今回の方法は手間は掛かりますが、完成品をイメージしやすい一番簡単な方法と言えると思います。

MuuseoSquareイメージ

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マスキングテープをすき間なく貼っていきます。木型が立体なのでシワなくぴっちり貼るのが難しい…

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鉛筆で描いては消していく…。最終的にラインを決めなくてはいけないので、マジックでしっかりマーキング、このライン!と決めました。

立体から切り出したパーツを平面に落とし込んで型紙を作ってみる

これだというデザインが決まったら、描いた線に沿ってマスキングテープをパーツごとに切り出します。つま先、サイド、かかと、ベロ、甲部分。甲部分は重なり合った最下部なのでテープがありません。のでここは適宜足していきます。切り出したテープはその都度厚紙に貼っていきます。これが型紙の原型になります。当然立体を平面に貼るのでうまく貼れない箇所も出てきます。そういう場合は外側や内側から切り込みを入れて広げていきます。片足だけで6パーツ。革を裁断するときは左右対称にして使うので基本的には片足分だけあれば大丈夫です。切り出したテープから1cm外側にラインを引いていきます。これが裁断するためのラインです。なんで1cmかというと、各パーツ同士をくっつける張りしろ部分を1cmとしているので、ぐるりと1cm外側を囲みます。
人の足は左右の大きさ・形が違うと言われています。フルオーダーの靴の場合は両足を計測して木型の調整を行うことが多いです。木型を削ったり盛ったりして左右の形が変わってくるので、型紙も左右それぞれになります。木型も既製のものを加工するのと一から自分専用を作るのでも値段が変わってきます。

MuuseoSquareイメージ

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パーツごとに剥がして厚紙に貼っていきます。パーツ同士はくっつきすぎないように余裕をもって厚紙をケチらず使っていきます。詰めすぎると足らなくなるので…(何度が経験あり)

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かかとの丸みを作るには、真ん中にV字の切り込みを入れる必要があります。つま先も外側から切り込みを入れながら貼っていきます。

MuuseoSquareイメージ

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貼りしろ部分を1cmとって、裁断していきます。

MuuseoSquareイメージ

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かかとに切り込みを入れておくとこのようになります。

型紙(仮)を作ってみる

ここまででできた型紙も仮のものです。ここからまた微調整を行います。まずは厚紙を切ってパーツに分けてみます。各パーツをセロハンテープなどでくっつけて木型にかぶせてみます。ここで何となくあっていればOK。穴飾りを開ける前に、試しに仮の革で裁断してザザッと縫い合わせて木型に合うかどうかの調整をしていこうと思います。
それから手作り靴ならではの穴あけ地獄が始まる…。

MuuseoSquareイメージ

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6つのパーツに分かれました。不思議な形をしたパーツも、木型に合わせてみるとこんな感じに。次回は仮靴用の革で試しに作ってみます。

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