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ゴールデンバット(10本入)-その2
物資統制の影響は「ゴールデンバット」の装いにも及ぶこととなりました。 まず、1906年の発売以来添えられていたパイプがわりの「口紙」の挿入が廃止されました。他の銘柄でも、不足物資の補填計画の一環として、金属原料を用いたインクは順次同系色に改められるか省略されました。「ゴールデンバット」でも、従来金色であった部分を褐色に変更し、次いで黄色に改められたといわれていますが、パッケージ表記の変遷を追う限りでは、製造拠点ごとの違いのようで年代的な違いではないようです。 1938年9月頃~ ☆金色部分を褐色に変更【画像1】 ・挿入されていた口紙。【画像2】 1938年10月頃~ ☆口紙挿入廃止、箱は幅細になる。刷色に褐色と黄色の2種あるが、文字に微妙な相違が見られる。【画像3・4】 1938年10月頃~ ☆側面の「10Cigarettes」が省略される。刷色に褐色と黄色の2種。【画像5・6】 1939年11月16日~ 9銭へ価格改正 ☆刷色に褐色と黄色の2種。「九」の字に相違が見られる【画像7・8】 *口紙について、画像の品物は平たく潰してあるが、実際は円錐型を保ち、紙コップを重ねたような形態で収納されていた。側面の「& Mouthpieces」は口紙挿入廃止とともに削除。専売創始時の両切3品種「スター・チェリー・リリー」にもこの口紙は添付されていた。
シェルアンドスライド(小箱) 1940年11月 宮下 孝雄 1938年10月頃shirotanino
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ゴールデンバット(10本入)―その1
日本の紙巻たばこは、専売制度の開始以前から輸出・輸入を積極的に行う先進的なものでした。 専売制度開始後はその販路を十分に活かせず、また海外の有力会社進出による売り上げ低迷、商標の抵触など様々な障壁もあって、市場撤退を余儀なくされる銘柄も多く存在しました。 この「ゴールデンバット」もそうした銘柄の一つで、「ほまれ」同様、当初は清国向け輸出銘柄の一つでした。コウモリが選ばれた理由は、コウモリの漢字表記「蝙蝠」(biānfú)の音よみが、「福が偏り来る」を意味する「偏福」(piānfú)に似ており、コウモリの図案は縁起の良いものとして古くから喜ばれていたことによるものです。上海ブリティッシュ・シガレット・カンパニー製品に抵触するということで、国内販売銘柄に転換されました。 発売当初から永らくは、低価格品の地位に甘んじていましたが、昭和恐慌時に多くの銘柄が整理されたことと、その価格の安さが人気を呼んで、1930年には売上ベスト1を記録するトップ銘柄に躍り出ることとなりました。著名な愛好者が多かったことで「バット党」という言葉も生まれ、また発売期間の長いことなどもあいまって、多くの逸話に事欠かない銘柄でもあります。 1906年9月1日~ 4銭で発売開始 1907年12月28日~ 5銭へ価格改正【画像1】 1917年12月1日~ 6銭へ価格改正【画像2】 1919年8月6日~ 7銭へ価格改正【画像3】 1922年10月1日 6銭へ価格改正 ☆物価政策の一環で値下げ ☆外箱の形態変更により、証票の位置変更。 1925年11月7日~ 7銭へ価格改正【画像4】 1932年ごろ ☆「賣」字体修正【画像5】 1936年11月11日~ 8銭へ価格改正 【画像6】 1938年9月~ 意匠改正 ☆真鍮粉節約の目的で金色部分が褐色に変更される。 【画像7】1930年代初期まで使用された内小箱。専売創始当時の姿を伝える 【画像8】続いて使用された内小箱。英文表記だがのちに和文表記に変更される。 [1972 日本専売公社]
シェルアンドスライド(小箱) 宮下 孝雄 1938年9月(印刷色の減色) 1906年9月1日shirotanino