MARUZEN Fixed Slide Gas Gun, Smith &Wesson Mod. 4506

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マルゼンのS&W Mod.4506、固定スライドのガスガンである。発売されたのが1988年というから、かれこれ37年前の物なのだが、現在のモデルガン的見地で見ても、なかなかのルックスである。

実銃の世界では、サードジェネレーションと呼ばれるラインで、米軍の正式拳銃トライアルから脱落したM645の後継機種に位置するのだが、トリガーガードの形状変更やラップアラウンドの樹脂製ワンピースグリップに変更するなどの改良を施して発売し、2001年まで生産された。

このモデル以前のマルゼン製品の外観レベルは常に他社に出遅れており、商品開発にあたっては、どこかの既存のモデルガンを参考にしていたため、参考品が間違ったディテールがそのまま反映してたり、素材も安っぽく、全パーツが柔らかめの樹脂で出来ているため銃全体がヒケだらけで、強度不足もあって、買って幾らも経たないうちに破損故障が起きる…。

扱いとしては、他のモデルガンメーカーの繰り出す製品に比べクオリティの劣る、所詮…玩具メーカーの作る文字通り、トイガンだった。

だが、ある時を境に「ウチだって本当は良い物が作れない訳じゃない!その気になれば、(コストを掛けたクオリティ高い物を作る商品企画の決済を会社がくれれば)できない訳じゃない!本気の製品はこうだ‼」と、言わんばかりのマルゼン開発者の物凄い意気込みが伝わってくる。

今思えば、この目覚めこそが将来ワルサー社と提携し、実銃図面から起こした完全無比のWALTHER P.38ガスブローバックモデルへと繋がっていく第一歩のように思える。

時代はまだ、ガスブロが登場する少し前で、MGCやマルシン、コクサイ、WAなど…それからデジコンなんてのもあったな…も、固定スライドが当時のオート型ガスガンの主流だった。

本作の外観は当時にしてみれば、本職のモデルガンメーカーを軽く凌駕する出来栄えだった。

まず、スライドやフレームにヒケが無い。実銃をリサーチしたと思われる造形は、隅々までシャープでメリハリのあるラインで構成され、金型の質からして違うし、素材も標準的な硬質のABS樹脂製である。

同社の以前のメッキ物というと、ギラギラした青味のある安価な真空蒸着メッキだったのが、MGCの同時期の製品であるS&W M645と比べても全く遜色のない、ちゃんとしたステンレス調のメッキ。

スライドやフレームの刻印も、この頃からモデルガンメーカーで流行りだしたホットスタンプ刻印で、実銃刻印の文字フォントにまで気を配り、一部アレンジはあるものの非常に忠実で、ほぼリアル刻印という凝り様。シリアル刻印などは数字列の打刻ズレまで再現している(画像5)。

神は細部に宿る…とばかりに、セーフティーレバーのスライド側の溝には、機械加工の痕まで施されて、硬質な金属加工品らしい雰囲気を演出している。

ラップアラウンドのワンピースグリップにも、ちゃんとSmith & Wesson社のロゴ入りで実銃用と見紛うばかりだ。ただ…この頃までは本家の銃器メーカーの商標使用の許諾は受けていなかったと記憶している。今にして思うと、ビジネス・コンプライアンス的にも乱暴な時代だったことが偲ばれる。

それにしても、このガスガンは定価12,000円で採算が取れたのだろうかと思うほど、ステンレスやダイキャストの金属パーツがてんこ盛りに使用されている。

S&Wデザインの系譜、M439から脈々と受け継がれたリアサイトは解るが、フロントサイトも別体のダイカストパーツが奢られ、モデルガンメーカーだったら単なる一体成型のモールドで済ませる部分にまで…ややサービス過剰ではと思われるくらいだ。

ハンマー、トリガーも材質は不明だが、硬質な金属パーツのパーティングラインもすべて取り除かれ、エッジの立った丁寧な仕上げの上に品のある光沢のメッキが施され、実に美しい仕上がりだ。

また、エジェクションポートにも金属製の別体で、".45 AUTO"の刻印(画像4)があり、前方からちょっとだけ見えるアウターバレルにも、きちんとライフリングが再現されている。また、マガジンもMGCと同様、ステンレスのプレス物に残弾表示のカウンターまで刻印されている。

まだまだ挙げればキリが無いのだが…『細部にまで徹底してこだわる』という信念が生み出した、(コスト)オーバースペックな渾身の一作と言えるだろう。

もう、ガスを充填してBB弾を飛ばすことは無いだろうが、良く出来た無可動文鎮モデルとして見ていると、造りの良さから…つい、こいつをベースにマルシンのM39辺りの機関部を組み込んで、スライドの動くモデルガン化できないものかなぁ…とか、自分の工作技術も考えず、夢想してしまうものだ…。

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