TANAKA WORKS, Pietro Beretta Model 1934 Metal Finish

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イタリアが生んだ世界に誇る銘銃、ベレッタM1934である。

いつの時代でも、第二次大戦で活躍した銃をテーマにモデルガンをコレクションしようと思ったら、外せない一挺である。

どうなんだろう?日本人は本当にこの銃が好きだよね…。

海外の様に拳銃の所持が認められている国では、好きなら銃砲店で実銃の中古を買って、コレクションに加えればいいだけの事なのだが、日本に住む我々には叶わぬこと。

ゆえに、50年以上も前からモデルガンという心理的な代償を生み出して来たわけだが、この機種をモチーフにしたのは一度や二度ではない。

昭和46年(1971年)の第一次モデルガン規制を挟み、金色の亜鉛合金製の物だけでも、3社からモデルアップされている。

当時、上野御徒町界隈のモデルガン商の互助組織であった高級玩具協同組合を脱退し、波乱含みの製造販売一貫路線を歩みだした、小林 太三氏率いるMGC製、その製品の設計を丸パクリしたハドソン産業製、六研の六人部 登氏設計のCMC製といった具合である。

それらは、昭和52年の第二次モデルガン規制で、銃身分離の部品構成のオートマチック型の亜鉛合金製モデルガンに該当し製造販売が禁止となった。

その後、プラ素材のABS樹脂製モデルガン全盛の時代において、ウェスタン・アームズがモデル化しているが、モデルガンとしてのベレッタM1934はそれが最後のモデルとなる。

同社は2000年代に入ってから、動作完璧なご自慢のマグナ・ブローバックシステム搭載の外観も刻印考証も完璧な、『完全版ベレッタM1934ガスブロ』をリリースしたのだが、残念ながら…未だ、手にする機会は得ていない。

【モデルガン産業衰退の救世主としてのガスガン製造】

1989年頃の銃玩具を取り巻く環境というと、20年前の空前のモデルガンブームの余波は跡形も無く、モデルガン購買層の減少が問題となる。次第に一般ユーザーの間にも、MGCやコクサイの倒産話が聞こえ始める。

各社生残りをかけて、自社の保有する過去作のモデルガンの金型を転用したガスガンや、新規設計のガスガン製造に活路を求め始めた…そんな時期である。

トイガンメーカーとしては新規参入のタナカ・ワークスが、昭和64年というか、平成元年(1989年)に、久方ぶりにベレッタM1934をガスガンでモデル化した。

このタナカという会社…どういう会社かというと、トイガンメーカーとしては新参であるが、前身の田中木工製作所としては、老舗モデルガンメーカーCMCのM1ガーランドなど長物の木製ストックを製造していた。

モデルガンの木工パートの下請けとしては、浅からぬ関りと実績を持った会社のようである。

1980年代も終盤、設計に六研の伝説的モデルガンデザイナー六人部 登氏を招聘し、S&W M10、コルトSAA、コルト・ディテクティヴ3rd、コルト.380、軍用ガバ、ベレッタM1934など、矢継ぎ早に一連の売れ筋機種のガス・ハンドガンシリーズをリリースし、トイガン本体のメーカーとして名乗りを挙げた。

この製品についても触れておこうと思う。

ムウさんらしい繊細で"らしさ"を感じさせる造形は、かつての真鍮製高級モデルガンや、CMC製金属モデルを手掛けた経験が活かされ、手馴れた感じで巧くガスガン仕様にまとめられている。

スライドの後退ストロークは若干足りないが、スライドのセレーション部分を掴んで勢いよくスライドを引くと、「ガチャキン!」という、ガスブロギミックの澄んだ音色の金属音を発するのが楽しい。

画像6のスライド/ フレームの右面、シリアル№風に刻印されている6桁の数字、"198934"というのが、よくあるモデルガンの慣例に従った設計年度月日の1989年3月4日を指すのか、あるいは、モデル名の"1934"の真ん中に発売年度の西暦下二桁"89"を割り込ませただけなのか…いま一つ判然とはしない。

また、この当時、銃玩具の世界では新工法だったホットスタンプで、スライド刻印を後加工したことへの意欲は感じるが、戦前期の実銃の刻印が太く力強いフォントであったことを考えると、些か、インパクトの弱い仕上がりになってしまったのは誤算だった(画像4)。

メタルメッキの仕上げについては、マルシンのメッキに近い感じのちょっと茶色味がかったメタルカラーだが、このメッキ…指紋とかを着けたまま拭き取らないで長年放置していると、そこからメッキが褪せていき、指紋の跡がくっきりと下地のニッケルメッキの色で残ってしまう。HWモデルガンのブルーイング品並みに結構気を遣う。

この商品、願わくば割りばしマガジンでなかったら、どんなに良かったろうと思う。後の改良品ベレッタM935でマガジンにガスタンクを搭載する、いわゆるWA方式の先駆けのフルサイズマガジンの物が出るのだが、メッキ仕上げの物は無い。

できれば…M1934でやって欲しかったが、これはこれで一つのスタイルとして完成はしていると思う。

画像5の木製グリップには、"PB"の花文字の彫られた大ぶりなアルミ製メダリオンが付いていて、西欧の優美さを感じさせる。

このグリップ下部にメダリオンの付くタイプの木グリは実銃デザインに倣い、かつてのMGC製でも商品化されたが、時代を経た本作でも…往年のガンマニアも納得の正統派なドレスアップ手法をとるところが、ムウさんらしい演出だ。

BB弾を飛ばす事はもう無いだろうが…たまに手に取ってメッキの手入れをして外観を眺め、スライドをガチャガチャいじるだけで結構楽しめる…齢50をすぎたオヤジの手遊びには最適の味わい深いトイガンだ。

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