少女終末旅行・コミック

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「少女終末旅行」。これほど過酷な設定の漫画を私は知りません。あ、長くなります。

西暦3200年代。地球上の動植物は“ほぼ”絶滅し、地上には永遠に連なっているのではないかというパイプや機械の群れ、コンビナート群のような無機質な巨大都市が広がるのみ。

何層にもなった巨大都市を、「生きるために」旅するチトとユーリの二人の少女。転がっている缶詰やレーションなどの携帯食・非常食を見つけて糧とするしか生き延びる方法はない。見つけられなければアウト、即ちそれは「死」に直結する。それでも二人に悲壮感はない。状況を受け入れ、時にはそれを楽しむかのような描写も見受けられる。

チトとユーリが出会うたった二人の生き残り、カナザワという青年とイシイという女性。この二人にも悲壮感はない。足であるバイクが壊れ、徒歩で移動するカナザワが唯一心の拠り所にしている「地図作り」、その苦労して作成した地図を空中にバラ撒いてしまい、一度は「死んでしまいたい」と地図と運命を共にする気だったけれど、チトとユーリによって「また地図を作るさ」と、前向きに生きる決心をする。空軍基地に住んだが故に「飛行機で対岸の都市まで脱出する」事を夢見たイシイも、飛び立った飛行機が空中分解して最下層までパラシュートで降下する際、達観したかのような微笑みを浮かべる。ユーリいわく、「絶望と仲良くなった」。

何もない、からこそそれを認め、受け入れる。物で溢れた現代社会に生きる我々にはその覚悟があるでしょうかね?

カナザワから託されたデジカメ。その中に保存されていた女性。何も説明はないけれど、それがカナザワの彼女であり、一緒に行動していたというのが窺える。そしておそらく彼女はもう…。

切ない。説明なしですべて理解出来るから余計に切ない。そして「地球を終わらせる」ために活動する通称「エリンギ」と言われる生命体。エリンギから他に生き残った人間を知らないと言われ、「どうでもいい」とすんなり受け入れる二人。

アニメ化された本作、アニメでは丁度良い所で終わったけれど、アニメで描かれなかったその後はもう、正視に堪えないハードな展開となります。読んでいて胸が張り裂けそう。

二人の足であったケッテンクラートが遂に壊れ、徒歩で移動せねばならなくなる。もうこの時点で「終わりの始まり」。

辿り着いた最上階には「何も」なく、二人は残った最後の食糧を食べ、「少し寝て…それから考えよう」

寄り添って眠る二人の上に降り積もって行く雪…。

ああ…、こういうラストを迎えるのは分かっていたけれど、実際に「それ」を実感してしまうともうダメ、立ち直れません…。せめて、せめて、二人が眠る場所にあるモノリスのような立方体、あれがどうにかしてくれる…そう願うのは読者に委ねられた最後の「望み」なのかも知れません。

そして二人の、原作で描かれなかった話を自由に描いた公式アンソロジーでも読んで、気分を落ち着かせることにします。

 #マンガ #アニメ

https://youtu.be/yP8PF-erVt8

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