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Dsc02801

宇流冨志禰(うるふしね)神社

取材日:2015年6月29日

記事:井本貴明

写真:齋藤創太

  • 蔵に眠っていたお宝は、45面の歴史ある能狂言面だった!

    Dsc02947 宮司の中森孝栄さん。言葉を選びながら話されていたのが印象的でした

    歴史がある昔ながらの家には、”蔵” が存在することが多い。
    その蔵の中には、歴代引き継がれてきたお宝が眠っている、というのはよく聞く話だ。
    今回紹介する、「宇流冨志禰(うるふしね)神社」の宮司である中森孝栄さんの場合、蔵にあったお宝とは「能狂言面」だった。

    宇流冨志禰神社の歴史は古く、1580年の天正伊賀の乱で、社殿、宝物、古文書などが、すべて焼き討ちにあい消失され、確かな事は分からないが、1200年前後には既に存在していたとされ、長い歴史がある神社である。

    中森さんが宮司に就いたきっかけは、祖父の他界だった。元々は祖父が宮司として長年努めてきた。後継者として中森さんが宮司を引き継いだ時には、能狂言面の存在は知らなかったと言う。
    「祖父の時代には、一時期、能狂言面をお祭りや行事の際に利用していたらしいです。しかし、お酒の席などで乱暴に使われ破損する事があり、保存という意味で蔵に仕舞い込んで、それ以降、人目に晒される事はなかったらしいです。」

    蔵に仕舞い込まれた能狂言面は、中森さんが宮司を引き継いだ後、蔵を整理している時に昔のタンスの中から発見した。その能狂言面の扱い方に関して悩んだが、
    「どんなに貴重な物でも、蔵の中にあるだけでは価値が朽ちるので、文化財として広くみなさんに知ってもらったほうが後世に残しやすいと思った」
    中森さんは、能狂言を一般の方に公開することを決めた。

  • 「たくさんの方に来てもらい、自分たち自身で後世に残すんだという強い気持ちになりました」

    Ddddddd 部屋中に飾られている能狂言面は、修復を行い綺麗な状態で保存されている

    宇流冨志禰神社が展示している能狂言面は全部で45面。能面が31面、狂言面が14面である。
    説明が残されている面の中では、一番古いもので室町時代に作られたと記されている。
    これらの能狂言面は、名張の当主である藤堂家が所有していたものであったが、明治4年の廃藩置県によって、藤堂家の家を縮小する際に、宇流冨志禰神社に寄贈されたと伝えられている。寄進状などは残っていないので、正確な月日は不明である。

    この45面の能狂言面を一般公開した事で、様々な恩恵があった。
    能狂言面に関心がある人、面を作っている彫り師の人などが訪れるようになった。その数は三重県内に限らず、遠いところではアメリカ、ドイツなどの海外から、能狂言面を見に来る。
    そして、中森さんの中でも心の変化が生まれたと言う。

    「たくさんの方に来てもらい、能狂言面を広く知ってもらい、自分たち自身で後世に残すんだという強い気持ちになりました。そして、能狂言面を通して、名張市に観光に来て頂きたい」

    ちなみに、能狂言面を一般公開しているが、常に観覧が可能なわけではない。
    「いつも神社にいるわけではないので、突然来られても観覧できない事がある。観覧を希望する方は、当神社に事前に連絡をして頂きたいです。できる限り閲覧をできるようにして、説明もしてあげたい」

  • 蔵から出てきたは能狂言面は、今では名張地域のお宝になっている

    Dsc02810 桃山時代の能面。

    中森さんに、能狂言面を見る際にポイントを聞いてみた。
    「面をよく見ると、左右の作りが微妙に異なります。片方の目が下がっていたり、鼻の大きさが違っていたりします。その面を違う角度から見ると、表情が変わって見え、喜怒哀楽を感じる事ができます。そこが飾り面とは大きな違いですね。」
    さらにこう続ける。
    「女性の面である小面(こおもて)は、その時代の美しい女性を表現しています。時代によって美の意識が異なるので、比較してみると面白いです。お歯黒の女性が美しいとは、今の時代とは異なる感覚ですね」

    最後に、中森さんに読者の方へメッセージを頂いた。
    「見に来て良かったと思ってもらいたい。なので事前に神社に連絡を頂いて、お互いの時間が合うときに来て欲しい。そうすれば、いろいろと説明ができます。そして、見終わった後に、自分でも面を打ってみたいと思うぐらいの気持ちになって頂けたらありがたい。」

    中森さんは将来、能狂言面をまとめた本を出したいと考えている。そして、全国の人に能狂言面の素晴らしさを伝えたいと思っている。

    蔵から出てきたお宝は、神社の宝になり、今では名張市の宝になっている。
    そんなお宝を眺めに、ぜひ宇流冨志禰神社に足を運んでいただきたい。

  • Dsc02927 小面は10代の女性の顔を模写して作られている
    Dsc02938 増女は20代の女性の顔を模写して作られている

  • Dsc02866 江戸末期に作られた橋姫の面。名張に立ち寄った人形師、安本亀八の作品

  • Dsc02904 比較的珍しい動物の面。江戸中期に作られた狐の狂言面

  • Dsc02965 うるふしね神社の境内

  • Dsc02975 中央には能を踊るスペースがある。現在も、金剛流の能の先生が練習で使用することもある

  • Dsc02980

【住 所】名張市平尾3319
【館長名】中森孝栄(宮司)
【電 話】
 0595-63-0486(社務所)
 0595-64-0659(宮司宅)
【開館・予約】9:00~15:00 要予約
【交 通】近鉄名張駅下車徒歩5分

<伊賀まちかど博物館の紹介ページ>
http://www.iga.ne.jp/~matikado-hakubutukan/kensaku/area_nabari1.html#06