みんなのコレクションが集まるミュージアム

Dsc03274

組紐工房 廣澤徳三郎

取材日:2015年6月29日

記事:井本貴明

写真:齋藤創太

  • 伊賀地方に伝統的に受け継がれてきた組紐。過去と未来をつなぐ3代目

    Dsc03292 伊賀上野観光協会の会長も務める廣澤浩一さん。

    「これが自分の天職。」

    そう語るのは、伊賀市にある「組紐工房 廣澤徳三郎」の店主であり、組紐(くみひも)の職人でもある廣澤浩一さんである。
    明治35年から続く組紐工房の3代目として、40年以上、組紐を作り続けてきた人物だ。

    まず、組紐に関して解説をしておきたい。
    組紐とは糸を組み合わせて作る紐である。古くは奈良時代には存在していた言われ、戦国時代には、武士の甲冑や刀に使われていた。そして着物文化の発展と共に、着物の帯締めとして使われてきた。東京、京都と共に、三重県伊賀市も昔から組紐の伝統があり、生産地として有名である。
    「300年ほど前、伊賀地方の当主であった藤堂藩の敷地で、自給自足で組紐を作る習慣があったのは、文献で残っている。当時は、おそらく刀の紐や鎧の紐を組んでいたと思う。その伝統が伊賀市には残っている」

    「組紐工房 廣澤徳三郎」が開業したのは明治35年。廣澤さんの祖父にあたる徳三郎さんが、江戸で組紐を9年学んだ後に、伊賀の土地にお店を構えた。

    「組紐を作る家庭に生まれて、自然のように組紐と触れ合ってきた。私は商業高校を出たこともあり、銀行員になりたい気持ちもあったが、家族を養い、伝統を守るために組紐の職人になることを決意しました。」

    そう語る廣澤さんは、伊賀にある組紐工房にて2年半の修行を重ね、「組紐工房 廣澤徳三郎」の後を継ぐことになった。その後は、組紐の技術向上だけではなく、時代に合わせたデザインを考える、組紐の販売数を増やすなど、試行錯誤の連続だったと言う。

    「伝統ある組紐だが、時代の流れに合わせて変化をさせることが重要です。最近は、着物を着る人が減ってきており、組紐で作ったネクタイなどがよく売れています。」

    店内を見渡すと、組紐で作られた帯締めの他に、ネクタイや携帯ストラップ、ブレスレットなど、伝統を守りながらも、新しい挑戦をしていることが伺える。

  • 10年先の未来に、組紐が存在する為に出来ること。やならければいけないこと。

    Dsc03335 高台に座り糸を組み合わせて紐を作っていく。組紐は地方によって作り方が異なる

    廣澤さんは、ある危機感を抱えている。
    「伊賀にいる組紐の職人は、60代、70代の人が多い。10年後にはほとんどが引退していると思う。組紐の伝統を途絶えさせない為にも、後継者を育てる必要がある。自分が習得した技術を継承したい」
    廣澤さんは、京都の工芸繊維大学の市民講座で、組紐を趣味で作りたいという人に作り方を教えている。その講座には、京都だけでなく東京からも参加者がいるほどだ。そして、伊賀市が提案する着地型観光「いがぶら」では積極的に参加し、組紐を知らない世代が気軽に触れられるように、いろいろな組紐体験を開催している。
    もちろん、こちらの組紐工房でも組紐を作る体験ができる。20分ほどで簡単な組紐を自分で作ることが出来るのだ。組紐に興味がある方は、ぜひ体験して欲しい。
    また、店内には組紐の歴史を紹介するコーナーも常設されている。昔の組紐作品や文献などが綺麗に展示されているので、組紐の歴史を学ぶことも出来るのである。

  • 組紐が結んだ嬉しい出会いとは?

    Dsc03250 廣澤さんが作る組紐にはファンが多い。遠くはドイツからノーベル賞の学者までもら訪ねてきた

    長い間、組紐を作り続けると、嬉しい出会いがあると言う。
    「以前、東京にある出版社と共同で、英語で組紐を紹介する本を出版しました。ある日、その本を片手に、イギリスから女性がお店を訪ねてくれました。彼女自身がアクセサリーを作る職人であり、組紐に興味を持っており、わざわざ遊びにくれたのです。嬉しかったですね。本にサインをお願いされたので、快く書きました」

    また、長年技術を向上させてきた廣澤さんの組紐には、皇族の方にもファンが多いという。
    「皇族の方から、帯締めを買っていただく機会があります。皇太子妃の雅子様へは、うさぎ柄の帯び締めを購入して頂きました」
    皇族の方は、式典などで着物を着る機会が多い。その際には、廣澤さんの帯び締めが使われているのかもしれない。

  • 廣澤さんが作る帯締めは、その他の帯締めよりも、帯が緩まないカラクリとは。

    Dsc03280 皇族の方にも献上された最上級の帯締

    着物の帯締めを買う際のポイントを聞いてみた。
    「着物を来ている方に伝えたいのですが、帯締めは本来、帯びを緩めさせない為に利用します。私が高台(組紐を組む際に利用する台)で作る帯締めは、伸縮性があります。緩まない帯締めを作るには伸縮する必要があり、帯びを締めた後に、さらに締まって帯びが緩みません。
    最近のデザインを重視した海外製の帯締めは、伸縮が弱いので帯びが緩んでくることがある。おそらく、着物を着た経験がない人が作っているのでしょう。デザインの見た目だけでなく、帯締め本来の機能も考慮して購入してもらうといいと思います。」

    最後に、読者の方にメッセージを頂いた。
    「組紐を体験しに伊賀へ来てください。10月、11月には『いがぶら』にて伊賀焼きとコラボした企画を考えています。その時にしか体験できないことをやる予定です。ぜひ、遊びに来てください。」

    昔ながらの伝統を守りつつも、さらに時代に合わせて発展をしている組紐。
    ひょっとしたら組紐は、日本の伝統と現代の若者を結ぶ可能性があるのかもしれない。

  • Dsc03264 組紐で作られたネクタイ
    Dsc03272 組紐は時代に合わせて、いろいろな形に進化している

  • Dsc03340
    Dsc03314

  • Dsc03393 お店の一角には、歴史ある組紐を資料的に展示している

  • Dsc03406 伊賀の街並みにピッタリな、お店の外観

【住 所】伊賀市上野西大手町3635-1
【館長名】廣澤徳三郎
【電 話】0595-21-1127
【開館・予約】年中無休
要予約:組紐体験(キーホルダー・ブレス 1人1,000円)
【交 通】伊賀鉄道西大手駅下車徒歩1分
【URL】http://www.ict.ne.jp/~toku-3/
【E-mail】toku-3@ict.ne.jp

<伊賀まちかど博物館の紹介ページ>
http://www.iga.ne.jp/~matikado-hakubutukan/kensaku/area_ueno1.html#07