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スコッチ・ウイスキー『グレン・マレイ』(Gren Moray)“ハイランド連隊シリーズ”
スコットランド北部の町、エルギンにあるグレン・マレイ蒸留所のシングルモルトで、歴代の“ハイランド連隊シリーズ”のボトルコレクションです。 真ん中の茶色い缶カンのが古い12年もの、左が以前の16年もの、右の筒缶のが新しい16年ものです。 いずれの缶にも歴代の各“ハイランド連隊”の姿、名前、戦歴などが細かく描かれており、この外装を仔細に細かく見ていけばハイランド各連隊の歴史がわかるようになっているわけです。 古い四角い缶のシリーズでは、茶色い缶の12年は正面に『ハイランド軽歩兵連隊』(Highland Light Infantry Regiment)が主役として描かれており、側面には連隊の戦歴がずらっと書き込まれています。 “CORUNNA”とはナポレオン戦争のイベリア半島の苦しい撤退戦ですし、“SEVASTOPOL”とも書いてあるので、この連隊がクリミア戦争のセバストポリ攻略戦に参加したことも分かります。 反対の側面は、赤い制服にタータン柄のズボンを履く第71ハイランド軽歩兵連隊の兵隊がアイルランドにおいて演習をしている1885年の光景が描かれています。 この連隊は、現在のロイヤル・スコットランド連隊の第2大隊、ロイヤル・ハイランド・フュージリアーズ(Royal Highland Fusiliers)の母体となりました。 もう一つの四角い青い缶カンの主役は『クイーンズ・オウン・キャメロン・ハイランダーズ連隊』(The Queen’s Own Cameron Highlanders Regiment)です。 こちらも同様に、側面には連隊の戦歴が…、コルーナ、ワーテルロー、セバストポリ、ハルツーム(スーダン戦役ですね)、そして、マルヌ1914、イープルス1914とあるのは、WW1の凄惨な毒ガス戦で有名なイープルス会戦でしょう…。シディ・バラニ、エルアラメインはWW2の北アフリカ戦線ですし、さらにマンダレー、コヒマとあるのは日本軍とたたかったビルマ、インパール戦線ですね。さらにゴシックラインとくればドイツ軍とたたかったイタリア戦線ですから、著名な戦役、会戦のほとんどに参加したことが分かります。 本連隊も、大英帝国の歴史とともに歩んできたわけです。 反対側面には1852年の閲兵式の様子の絵が描かれています。 キャメロン・ハイランダーズは、1994年にゴードン・ハイランダーズ連隊と統合し『ハイランダーズ連隊』(Highlanders (Seaforth, Gordons and Camerons))の第1大隊となり、さらに2006年の大統合で『王立スコットランド連隊』の第4大隊である『ハイランダーズ』大隊として、現在に至ります。 いちばん新しい筒型の缶カンは、上段の大きな絵のほうで最近の統合されたハイランド連隊、すなわち『王立スコットランド連隊』(Royal Scotland Regiment)の現代の姿を描いています。 下段は、統合前の各連隊の歴代の姿(18世紀~WW1頃の時代)を描いており、各連隊の制服の違いなどを図鑑のように見比べることができますので、大変興味深い絵になっています。 こちらはお酒ですので、コレクションと言いつつ、一部はもう飲んじゃってます(笑) ライトかつソフトな、どちらかというと特徴の薄いモルトウイスキーだと思いますが、そのクセの無さがこのおサケのイイところなのかもしれませんね。 2000年にスコットランドを巡ったのですが、その際、レンタカーでこの蒸留所の“前”を通りました。 確か「あぁ、ここがグレンマレイか。」と素通りしつつ思ったように記憶してますが…、あまり印象がありません。(中を見せてくれるようなビジター設備が無かったから、素通りだったと思います…。それでも降りて様子くらい見てくれば良かったな、と反省。。。)
ウイスキー あちこちT. S
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スコッチ・ウイスキー『スコッツ・グレイ』(Scots Grey)
伝統あるスコッツ・グレイ騎兵連隊の名を冠したブレンデッド・スコッチ・ウイスキー『SCOTS GREY』です。 ラベルには葦毛の騎馬にまたがりラッパを吹いている騎兵(trooper)の姿が描かれています。(※ちなみに、スコッツ・グレイ連隊は、全員が統一して”葦毛の馬”に乗っていました) 土屋守先生著『ブレンデッド・ウイスキー大全』によると、タリバーディン等をキーモルトに使っているそうです。 飲んでみましたが、マイルドでソフトな味わいの、おそらくブレンドしているグレーン・ウイスキーが最近のつくりと違うのでしょう、一昔前の”懐かしい感じ”がするウイスキーです。 私は最初、珍品としてコレクションのつもりで買ってみたのですが、どうしても飲んでみたくなり…、1本開けて飲んだところ、ロックでもソーダ割でも水割りでもいずれも”良い味”だったので、ついつい気づいたら1本、2本と消費してしまい…、慌てて追加を探して何とか数本を確保できました。(もう終売品なのでネットオークション等で探さないと手に入りません) 持っているボトルはいずれも『特級』表示のあるボトルなので、酒税法改正前の1989年前に市場に出回っていたボトルということになります。 年数表示のない「スコッツ・グレイ・ブラックラベル」と、「スコッツ・グレイ12年」と2種類を持っていますが、あと、確か赤いラベルの「スコッツ・グレイ15年」も持っていたはずなのですが、15年は行方不明…倉庫かな? ※スコッツ・グレイ連隊の詳細については、展示中の「チャレンジャー2戦車」(1/72、ドラゴン)の解説文をご参照ください。
ウイスキーT. S
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スコッチ・ウイスキー『ホワイト・ヘザー』(White Heather)ブラックウォッチ連隊陶器ボトル
この陶器の“ブラックウォッチ”のハイランド兵は、実はスコッチ・ウイスキーの変わり種ボトルです。中にはちゃんとウイスキーが入っています。 ホワイト・ヘザーというのは“白いヒースの花”、ヒースはスコットランドの象徴的な花として知られています。 だいぶ前に中身のテイスティングをしたので、正直言ってどんな味だったか忘れてしまいました…。土屋守先生の『ブレンデッド・ウイスキー大全』によると、キーモルトはアベラワーやグレンアラヒ等だそうで…。 ボトルは、スコットランドのブラックウォッチ連隊のバグパイパー(バグパイプ奏者)を再現したものです。 伝統的な赤い制服にブラックウォッチ・タータン柄のキルトのスカートをはいた正装と、熊毛の帽子の左側の赤い羽根飾り(Red Huckle)が歴史ある“ブラックウォッチ”のシンボルです。 スコットランドの部隊には、一般部隊のラッパ手の代わりにバグパイパーが配属されており、前進する際などにバグパイプの音色を響かせるのです。 その様子は映画「史上最大の作戦」の劇中でも、ロバット卿の部隊がバグパイパーを先頭に最前線に増援として到着するシーンで再現されていました。 飾っておくのになかなか見栄えのいいウイスキー・ボトルだと思います。 1999年の「世界の銘酒辞典」を見ると、当時の定価がナ、ナント¥96,450!…、私は10年ほど前にヤフオクにて¥1万くらいで買いました。 “ブラックウォッチ”の由来は、紺色系のキルトが遠くから見ると黒っぽく見えたこと、ウォッチというのは“見張り(監視兵)”です。 英陸軍でも長い歴史を持つ部隊のひとつで、起源は1710年台にジャコバイトの乱に備えるためにイングランドがスコットランドで監視兵(watch)を募兵したのが最初で、その後にハイランド連隊として部隊は拡大された後、1748年に第43連隊として編成、その後、第42連隊に改称され、アメリカ独立戦争からナポレオン戦争、クリミア戦争など、著名な戦役に参戦しています。 なかでも、ナポレオン戦争時、ウォータールーの戦いの前哨戦である“キャトル・ブラの戦い”における活躍が有名です。 1881年、第42(ロイヤル・ハイランド)ブラックウォッチ歩兵連隊(42nd (Royal Highland) Regiment of Foot (The Black Watch))は、第73パースシャー歩兵連隊(73rd (Perthshire) Regiment of Foot)と統合され、『ブラックウォッチ(ロイヤル・ハイランダーズ)連隊』となり(元第42連隊が第1大隊に、元第73連隊が第2大隊に)、エジプト戦役やボーア戦争、そして第1次世界大戦に従軍、1931年に『ブラックウォッチ(ロイヤル・ハイランド連隊)』(The Black Watch (Royal Highland Regiment))に名称が変わり、第2次大戦を戦い抜きます。ダンケルク撤退、北アフリカ、シシリー島、ノルマンディ、バルジの戦い、イタリア戦線等…ほぼ全ての主要な戦いに関わっています。 戦後も、朝鮮戦争に従軍、20世紀末には香港返還に際し、最後に香港から撤退したイギリス軍部隊がこのブラックウォッチ連隊でした。 イラク戦争に従軍した後、イギリス陸軍の再々編のなかで、2006年、スコットランドの他の5つの連隊(ロイヤル・スコッツ連隊、キングス・オウン・スコティッシュ・ボーダラーズ連隊、ロイヤル・ハイランド・フュージリアーズ連隊、ハイランダーズ連隊、アーガイル・アンド・サザーランド・ハイランダーズ連隊)と大統合し、現在の『王立スコットランド連隊』(Royal Regiment of Scotland)を構成、ブラックウォッチはその第3大隊(軽歩兵大隊編成)としてその名を残して現在に至ります。(近年では、アフガニスタンのタリバン討伐に参戦) スコットランドの歩兵部隊は、よく“ハイランド連隊”と単純に呼ばれることも多いのですが、実は以上のように度重なる統合を経ており、なかなか複雑で難しいのです…。
ウイスキー ヤフオクT. S