メタルフィギュア “第7クイーンズ・オウン軽騎兵連隊”(7th Queen's Own Hussars)

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このコレクションルームの第1弾は、英国King & Country社の素晴らしいメタルフィギュア『第7クイーンズ・オウン軽騎兵連隊』(7th Queen's Own Hussars)のナポレオン戦争期の騎兵フィギュアです。(※フサーズ=軽騎兵)

このフィギュアは、いまから26年前の1992年8月に祖父母と英国に旅行に行った際、ロンドンの専門店で購入したものです。なぜ覚えているかというと、今回見てみたら台座の裏に購入日が書いてありました…。
職人の手による素晴らしい彩色が施された逸品で、当時の軽騎兵=フサーズ特有の派手な肋骨服を綺麗に再現したモデルです。

ナポレオン戦争の頃は”7th (The Queen's Own) Regiment of Light Dragoons”(第7クイーンズ・オウン軽竜騎兵)という名称だったため、このフィギュアの腰の後ろにあるバッグ(毛布を巻いたもの?)の側面に、そのイニシャルの『7 LD』(ライト・ドラグーン)と極めて細かい字で描かれています。

第7クイーンズ・オウン軽騎兵連隊は、今から約330年前の1690年にスコットランドで編成され、1715年のジャコバイトの乱の鎮圧をはじめ、1750年代~の7年戦争、ナポレオン戦争に従軍します。
ナポレオン戦争においては各地を転戦、とくにイベリア半島において有名な「コルーナへの撤退戦」の殿軍を務めて多くの犠牲を出しますが、本隊が英本国へ脱出するチャンスを稼ぎました。

その後再編成された第7軽騎兵連隊は、かの有名な「ワーテルローの戦い」に参加します。
英軍戦線の最右翼を担当した連隊は、この戦いで最も激しい戦闘の一つであったウーグモン城館を巡る戦いに参加、合計で14回の突撃を敢行しナポレオン率いるフランス軍と激闘を繰り広げ、戦いの前には120騎だった兵力は最後は19騎にまで減りながらも、最終的な英軍の勝利に貢献したのでした。

その後、インドの大反乱(セポイの乱)等の数々の戦歴を重ね、第1次大戦では中東戦線でトルコ軍と戦い、戦後は第2次大戦の直前の1935年、遂に騎兵たちは馬から降りて“機械の馬”である戦車に乗り換え、部隊は戦車連隊に改編されました。
連隊が最初に装備した戦車はマークⅡ歩兵戦車です。

1940年、第2次世界大戦が始まると第7軽騎兵連隊は北アフリカに派遣されます。緒戦のフォート・カプッツオの戦いにおいてイタリア軍に圧勝しましたが(戦車112両撃破/2万名の捕虜を得る→オークニーの捕虜収容所へ送られた連中でしょうか?)、後に“砂漠の狐”の異名を取るロンメル将軍率いるドイツ・アフリカ軍団が北アフリカ戦線に登場するや、形勢は逆転します。
ロンメルが指揮するドイツ軍の反撃により、今度は逆にイギリス軍がエジプト方面に押し返され、すっかり戦力を消耗して手持ちの戦車がたった2両にまで減少して壊滅状態となった第7軽騎兵連隊は、再び第一線から下げられて再建されることになったのです。

しかし、逼迫する情勢は連隊に休息を与えることはありませんでした。
アジア方面において破竹の進撃を続ける日本軍により、ビルマ方面の英軍が危急を迎えていたのです。そこで連隊は、アメリカからの戦略支援物資として提供された「M3ハニー軽戦車」により再編成されるや、今度はジャングルと泥沼のビルマ戦線に送り込まれたのでした。

連隊が投入された頃には既に戦線は崩壊しつつありました。
イギリス・ビルマ方面軍はインドに向けて総退却を始め、このなかで第7軽騎兵連隊は、ナポレオン戦役以来の殿軍を務めて味方の撤退を助け、最後には退却路をさえぎるチンドゥイン河を前に全ての戦車を放棄して兵のみが渡河、残る150マイルを徒歩で撤退を続けて無事にインパールまで撤退することが出来たのですが、またもや壊滅状態となった連隊は第一線から後方に下げられ、エジプトにおいて2年間かけて再編成にはいります。

その後、新たな兵と戦車で再建された連隊は、ドイツ軍と対峙するイタリア戦線に送り込まれ、1945年5月の欧州戦役の終結まで戦い続けたのです。

このように、第7軽騎兵連隊の戦歴を振り返ると、毎回のように苦しい戦いに送り込まれ、その度に全滅状態となりながらも新たな兵員により再編成を繰り返しては激戦に送り込まれています。故郷を遠く離れた異郷の地で命を落とした多くのスコットランド軽騎兵達…。
数多い英陸軍の戦車(騎兵)連隊のなかでも、最も過酷な戦歴を誇る連隊のひとつではないかと思います。

戦後は香港に駐留したのち、1958年の軍縮再編の波により“キングス・オウン第3軽騎兵連隊”と統合して“クイーンズ・オウン軽騎兵連隊”となり、さらに冷戦崩壊後の陸軍の大改編により、1993年に“王立クイーンズ・アイリッシュ軽騎兵連隊”と統合して“王立クイーンズ軽騎兵連隊”(Royal Queen's Own Hussars)として改編され、現在に至ります。
近年では、歴戦の戦車連隊として最新の“チャレンジャー2戦車”を装備し、イラク、アフガニスタンにも派遣されています。

重戦車を装備している現在でも、”軽騎兵=Hussars”を名乗っているあたりが、伝統を重んじるイギリス軍らしくていいですね。

いつか、アフリカ戦線でのクルセーダー巡航戦車、ビルマ戦線のM3ハニー軽戦車、香港駐留のコメット巡航戦車、そして現代のチャレンジャー2戦車など、7th Hussarsの歴史を1/35模型でも再現して、この騎兵フィギュアと並べてみたいものです…。(一部のキットを買ってはあるのですが、時間が…。←言い訳)

※2020.5.11追記
軽騎兵の原語“Hussars”ですが、以前は“ハッサーズ”だと思っていたのですが、映画「遥かなる戦場」(The Charge of the Light Brigade)を観たら、発音としては『フッサーズ』とか『ッフサーズ』のように、最初の『Hu』に力を込めない発音でした。日本語的に書けば『フサーズ』が最も近いかと。
ですので、上記本文もそのように書き直しました。

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    Chikatetu-Kanji

    2018/06/16

    こういう本当に存在した兵士のフィギアって精巧な作りになってますよね~。なんか高貴さが漂ってありがたいものを見せていただいたような気分です(^^;

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    T. S

    2018/06/16

    26年経った今でも、いまだに同じものが売ってますから、職人技が受け継がれているのだろうな、と思います。

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    realminiature

    2018/06/16

    これぞ”大人のコレクション”という感じです!背景の書籍がまた良いですね。

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    T. S

    2018/06/16

    このジャンルはそれほど沢山は蒐集出来ていないのですが、これからあといくつかを掲載させて頂きます。

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    dropupppu

    2021/09/07 - 編集済み

    子供の頃(といっても70年代ですが)に模型雑誌(ホビージャパンやモデルアート)を買うと載っていたフィギュアは、こういうタイプのホワイトメタルのヒストリー物かメデューサや指輪物語に出てきそうな怪物ものが多かった気がします。

    ただ凄く精巧で独特の世界観で、子供心に大人な雰囲気が漂っておりました。キットだけでも高価でしたしね・・。完成品は絵画的な塗装で惹きつけられました。

    今でも見ると「上品で格好いいなぁ」と憧れます。

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      T. S

      2021/09/07

      コメントありがとうございます。
      たしかに、子供の頃の模型誌には海外もののメタルフィギュアとかも出ていましたね。あとはバーリンデンとかシェパード・ペインとか、、、当時の日本では誰も真似できないような作風の数々にため息モンでした。

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