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Longines マスターコレクション190周年記念モデル L2.793.4.73.2
スイス・サンティミエにて1832年に創業し、以来航空時計やスポーツ計器等幅広い成果よって時計の歴史に名を残してきたロンジン。その190周年を記念して発売されたのが本品である。 同社の代表的なモデルである「マスターコレクション」をベースに、アーカイブから発掘された懐中時計等のフォントの意匠を取り入れた。 文字盤はシルバーカラーだが、サンドブラスト仕上げのために光の受け具合でグレーにもブルーにも移ろう。そこに刻まれる数字は手彫りではなく、なんと80分をかけて機械彫りされるというのだから驚きである。 ロンジンのロゴは筆記体の復刻ロゴで、手元の懐中時計(ムーヴメント1934年製)と比しても同じであることがわかる。青焼き針も非常に美しい。 裏はシースルーバックで、美しい仕事が見られる。 ケース直径40ミリ、厚さ9.35ミリと取り回しがよいのも素晴らしい。 これだけの仕事を詰め込んで、50万円を超えない価格というのは信じられないことである。 過去の模倣でもなく、いたずらに流行に流されることもない、ロンジンの確かな哲学を感じられる1本である。
腕時計(自動巻) ロンジン 2023年蒼樹たけ
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Dents The Heritage Collection ペッカリーグローブ
1777年に英国ウースターで創業したDentsは、永年にわたり美しく機能的な手袋を作り続けてきた。 「シークレットフィット」と呼ばれる極上の着け心地は「グローブのロールスロイス」と称される。 本品はそのうち、同社の代名詞ともいえるペッカリーグローブである。ペッカリーは和名を臍豚といい、その実は南米に生息する猪豚のような生き物であるが、この革が非常に柔らかく柔軟性に富み、かつ水汚れにも強く、乾燥しにくいという性質を持つ、まさに手袋にぴったりの素材である。現在はワシントン条約で取引が規制される貴重な素材を熟練の技で裁断し、手仕事によって野趣あふれる中に繊細な着け心地を併せ持つ造形に縫い上げる。本品はさらに、英国のジョンストン・オヴ・エルガン社のカシミヤの生地をライナーとしている。 実際に着けてみると、まずカシミヤの非常なる柔らかさと暖かさに驚く。そして次にはペッカリーの柔らかいながらも適度なグリップに驚嘆するのである。まさに「グローブのロールスロイス」と称されるのも納得である。 但し、これは日本人のDentsユーザーなら誰しもが経験することだが、親指が余るのである。この悩みを解消する術はただひとつ、オーダーメイドの沼に浸かるしかない。
手袋 Dents 2022年蒼樹たけ
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Turnbull&Asser 黒蝶貝カフリンクス
Turnbull&Asserの黒蝶貝付きのボタン型のカフリンクス。 マザーオブパール仕様の同型を所有していたが、夜の礼装用に黒蝶貝仕様の物も入手。台座はスターリングシルバーで、留め部には「T&A」の文字が彫られてある。 付属のケースは仕様変更があったのか、前に買ったマザーオブパールの黒地の大きなものから、紺色のコンパクトなものになった。 煌びやかなタキシードの手元を艶やかに彩ってくれる逸品。
カフリンクス Turnbull & Asser 35000円蒼樹たけ
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Turnbull&Asser チャーチルドット ネクタイ
Turnbull&Asserのチャーチルドットを用いたネクタイ。 英国首相ウィンストン=チャーチルは紺地に白のドットが入ったボウタイを愛好していたことで知られるが、そのボウタイの生産元がこの英国Turnbull&Asserであった。同社はその記念すべきドット模様を、なんと豪華なネクタイに仕立ててしまった。本品がそれである。 ポップでありながらもどこかクラシカルな印象を併せ持つドット模様の生地を、なんと7回も折り込んだこのタイは、分厚くどっしりとした締め心地。当然ネクタイピンはその厚さに対応しきれず、ジャケットの無いシーズンは手洗い時などにぶらつかないよう十全の警戒を要することとなる。
ネクタイ,蝶ネクタイ Turnbull & Asser 2020年蒼樹たけ
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Tricker's 「Regent」
Tricker'sの誇る内羽根ストレートチップの傑作、「Regent」。 どっしりとした革を使い質実剛健なつくりながら、たいへん繊細に縫い上げてあるのは見事。かんぬき部のハーフムーンもクラシカルな雰囲気でとてもよい。 底部はヒドゥンチャネルの艶やかな面が美しく、履いて傷物にするのが惜しく感じる。 ラスト6140は甲が高く外側のカーブが急なため履く者の足を選ぶが、幸い私の足はこのラストにピタリと嵌まった。通例7を履いているが、これについては6.5を選択した。
革靴 Tricker's 約85000円蒼樹たけ
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万双 ダレスバッグ
知る人ぞ知る上野御徒町の革製品の店「万双」。 店名は残っていた前の店の看板の店名をそのまま採用。「人様の物に自分の店の名前を入れるのはおかしい」という信条から、製品にはブランド名すら入れないという高潔な職人魂が生きる名店である。 そしてその名店の看板商品といえばこのダレスバッグ。 質実剛健で知られる英国のブライドルレザーを、信じられない技術によって柔らかな曲線に仕上げてしまった。金属部品は全て真鍮削り出し。錠前も町工場で手旋盤によって削り出されているという職人技の結晶である。 しかも高品質な逸品でありながら、「鞄に20万も30万も出して欲しくない」という信条から、その値段は10万円以下という破格さであるから恐れ入る。 中は3マチのものを選んだ。手帳からペンケース、水筒や弁当箱までぐんぐん呑み込んでくれる。 手に入れたばかりでブルームが残っているが、このブルームが取れて革がその艶を増していく頃には、この鞄が似合う人間になっていたいものである。
鞄 万双 約100000円蒼樹たけ
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勾玉
お守りとして身につけているブレスレットを構成する勾玉たち。 左端は糸魚川翡翠で、先ごろ「国石」に指定された。古くから玉の材料として珍重されたことで知られるが、実は翡翠より青の濃い「出雲石」の登場とともに歴史から姿を消した。昭和初期になって「再発見」されたことがこんにちの隆盛の源である。 右2個は所謂「出雲石」で、島根県玉造温泉近郊の花仙山から産出される碧玉(瑪瑙)である。出雲石は生命を象徴する深い緑をたたえ、その色味などから大和政権に珍重されて古墳時代以降、玉の主要な原料となった。 左から2番目は隠岐島黒曜石のもの。石器の材料として隠岐島も一大山地として知られ、出雲大社の御神鏡になったとも言われる。 それぞれ製造元が異なり、右端のものは「出雲勾玉」の唯一の製造工房として知られる めのや製。同社は皇室や出雲大社宮司千家氏への献上品も調製している。形状もこれぞ「正統」という形である。20ミリ。 真ん中2つは松江の瑪瑙細工の老舗めのう川島の手による物。同社の物はぷっくりとした柔らかな膨らみが特徴で、確かな素材で豊かな品を作っておられる。川島の出雲石は色が濃く、非常によい作りである。18ミリ。また黒曜石のものはクラックなど一切無く、艶やかな深い黒(厳密には濃い珈琲のような色)をたたえている。 左端の翡翠のものは一般流通品で、上記3つに比べると造形の差は歴然である。
勾玉 めのや、めのう川島ほか 約50000円蒼樹たけ
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大倉陶園 瑠璃片葉金蝕 ティーセット
大倉陶園の代表作「瑠璃片葉金蝕」シリーズのティーセット。 ティーカップも見事だが、クリーマーの口先のくびれ、ポットの注ぎ口、シュガーポットのハンドルの優雅な曲線など、どれをとっても非常に美しい仕事が見える。 ティーカップが瑠璃片葉金蝕なら、テーブルに華を添えるティーセットもまた、瑠璃片葉金蝕で揃えたい。
ティーポット 大倉陶園 2020年蒼樹たけ
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大倉陶園 瑠璃片葉金蝕カップ&ソーサー
1919年創業の大倉陶園は、ヨーロッパに負けない素晴らしい技術で日本の洋食器界を牽引してきた。 大倉を代表するシリーズは「ブルーローズ」と、もう一つは「片葉金蝕」であろう。葉っぱを重ねるシンプルな文様は1925年頃に誕生し、以来こんにちまで様々な人々を魅了し続けてきた。 本品はその片葉金蝕に瑠璃を合わせた「瑠璃片葉金蝕」と呼ばれるシリーズである。白生地の上にコバルト質顔料を付けて焼成する「瑠璃釉」と呼ばれる技法により、白地に美しい紺青色、金のラインという優美な色づかいの逸品に仕上がっている。 使ってみれば飲み口は薄く、持ち手も非常にバランス良く整っており、紅茶がするりと口の中に流れ込んでくる。 静かに一杯の紅茶と向き合う時、傍らにあるのはこのカップが最も良いように思う。
カップ&ソーサー 大倉陶園 2019年蒼樹たけ
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深川製磁「軍艦矢矧進水記念杯」(復刻品)
近年の艦これブームにより復刻された逸品。 2015年に「佐世保鎮守府実行委員会」がワンダーフェスティバル2015年夏に合わせて限定300個で販売した。 軽巡洋艦「矢矧」は1942年に進水したが、折しも戦時下にあたり、「進水を秘匿するために矢と萩の模様の杯を記念品とした」とする逸話が残る。 実物と比べると絵柄にブルーの塗りが入っていたりとアレンジが為されていることがわかるが、それでもオリジナル同様に深川製磁が製作したため品質は折り紙付き。電灯に翳すと透き通る程に薄い。 飾るのみならず、海軍にゆかりの深い日本酒である「賀茂鶴」や「千福」を頂くのにもよいだろう。
酒器 深川製磁 13000円蒼樹たけ
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深川製磁「菊花紋酒器」
深川製磁は1894年に深川忠次によって設立され、以来皇室や軍などの食器や記念品を作り続けてきた。 本品は1994年1月、明治神宮が神楽殿竣工の記念として、明治天皇所用の「酒器」を深川製磁で復刻したものである。720mlほど入りそうな容量であり、複数人で飲むのが適当な使い方か。 底には「深川製」の文字とは別に3つの点が打たれているが、これは宮中に納める物に特に打たれるという。
酒器 深川製磁 5000円蒼樹たけ
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Tricker's APPLETON プレーントゥシューズ
トリッカーズは1829年創業のノーザンプトンの老舗で、カントリーブーツが有名だが、実に美しいドレスシューズも手がけている。 ご多聞に漏れず履き始めがとても硬く、最初こそ普段使いに難儀したが、入手後1年を経てすっぽりと包み込むような履き心地となった。 今や日々の頼もしい相棒だが、レザーソールの宿命か、駅や仕事場の廊下で転びそうになることしばしば。また雨の日がお休みとなるのは当然ながら、靴底にチャールズ皇太子殿下の御紋章が付いているので、それを踏みつけて歩くのに若干の抵抗感がないこともない。 願わくば御紋章は側面に付けてくれませんかトリッカーズさん…。
革靴 Tricker's 2020年蒼樹たけ
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CHRISTYS' LONDON パナマハット
1776年創業のイギリスを代表する帽子メーカー。 そのパナマハットである。 産地はエクアドルで、グレードはSUPERFINE。きめ細かく編まれたハットは、恰もソフトハットのようである。 暑さのあまり、ついついYシャツにチノパンというスタイルになりがちな季節、このパナマを被るだけで華やかさを添えてくれるのがありがたい。
帽子 クリスティーズ 約20000円蒼樹たけ
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丸善 ストリームライン オノトモデル
その昔 夏目漱石が愛用していたオノト万年筆を、1996年に丸善が1000本限定で復刻したもの。 製造はパイロット。 ペン先は18金で、漱石の特注原稿用紙に見られる愛らしい龍が刻まれている。同じくクリップには丸善の方位磁石マークが刻まれており、随所にこだわりが感じられる。 インクは両用式だが、コンバーターが付属したのでそれを使っている。ニブはMで、ふわふわとした柔らかい書き心地が味わえる。 私はこれを手に入れてすぐに、原稿用紙100枚を超える卒業論文を書くのに酷使してしまったが、ペン先が開くこともなく良い仕事をしてくれた。 このペンの為した仕事はその後、教授の決裁を受けて私を卒業に導き、卒業論文は今、私の本棚に静かに眠っている。
万年筆 丸善 約25000円蒼樹たけ
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JAMES LOCK & Co. Hatters コークハット(ボウラーハット)
1676年創業、数多の人々の頭を飾ってきたロックアンドコーの最も有名な逸品。 世界中の「ボウラーハット(=山高帽)」は、同社がウィリアム・コークの注文を受けて作った「コークハット」から始まっている。 ハードハットの異名をとり、非常な硬さを持ちながら、丸みを帯びた優美な曲線は非常にエレガントである。 内側は当然ながらしっかりと作り込まれ、ホワイトのシルク地に金色のロゴマークが輝く。 王道のブラックは礼装によく合うが、ステッキと共に用いたい。
帽子 JAMES LOCK & Co. Hatters 2024年蒼樹たけ