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おはじき
子供の玩具として、代表的なものの一つに「おはじき」がある。おはじきは、古くは奈良時代に中国より渡来し、平安時代の宮中遊戯から時代を経て庶民の遊戯として定着したものらしい。現在見るようなガラス製で扁平なおはじきは明治時代後期に普及したものである。 この品は、飛騨高山の古道具店から入手したもので、京都土産と思しき紙製の舞妓をデザインした小箱に収まっていたものである。時代はやはり明治時代後期から大正のものであろう。一つ一つ見ていくと、個性があり、まるで宝石を見るがごとく大変美しい。古い時代のガラスは玩具といえど馬鹿にできない。そんなおはじきであるが、いくつか種類があるのでご紹介する。 ・「型押しおはじき」(2枚目写真) 簡単なプレス加工のもので、栗、ひょっとこ、紅葉、茅葺の家などを象っている。赤色ガラスは当時高価であったためか、塗装による彩色となっている。残念ながら、ここでは赤と透明のもの以外ないが、青や緑、茶色、乳白、紫などの色ガラスを用いたものもあり、現在では高値で取引されている。 また、型押しの中でも表に花、裏に平仮名を押したものがあり、これは「花はじき」とよばれている。(3枚目写真) ・「ヘソおはじき」(4枚目写真) ガラス種を切り、扁平になるように押しつぶした簡単なものの中に、片側にヘソのような窪みを持つもの。 ・その他 個々の名称は不明ながら、片面に菊水紋や三ツ丸文(5枚目写真)、格子文を押したもの(大きいものは石蹴りか?)や、飴のように両端を切り離しただけのもの(6枚目写真)、碁石のように両面を凸形にしたもの(ガラス製碁石の可能性あり)(7枚目写真)、無紋で単にガラスを扁平に潰しただけのものがある。(8枚目写真)
明治後期〜大正 日本M.S
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型吹き剣先ゴブレット
杯は型吹きによる成形で非常に薄手である。 省力化であろうか、本来カットであるべき部分を型で表現している。 この種の足付きグラスはイギリスのものをを手本として国内でも多く作られたようで、大小さまざまなものを見ることができる。 特にリキュールグラスと思われる小さなものにはカット・型吹き・型吹き後にカットなどいろいろな技法のものがあり楽しい。 これは比較的大きなゴブレットで、型吹きによるものはそれなりに少ないと思われる。
明治後期〜大正 日本M.S
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型押し梅コップ(大)
H90㎜、W77㎜ほどの型押し梅コップ。 ガラス生地は黒みがかってずしりと重い。 ドロリとした肉厚なガラスの官能的なコップである。 画像三枚目は先に紹介した型押し梅コップとの比較。 よく立ち寄るリサイクルショップのグラスコーナーにいた場違いな双子。安く連れ帰ってきたもの。
明治後期〜大正 日本M.S
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エナメル彩八重桜文コップ
コップの胴部にエナメル彩によって帯状に八重桜が描かれている。ガラス素地の色調は黒く鉛色である。 平凡社「別冊太陽 明治大正のガラス」(1994)には胴部がくびれた同形状のコップを「大正形コップ」と紹介している。 淡く光を透過する白いエナメル彩の花弁が桜の質感を見事に表している。
明治後期〜大正 日本M.S
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『山形千本切子』文様型吹きコップ
このコップは昨年入手したものであるが、和ガラス関連の書籍にも掲載がなく、類品を見たことがないので珍品であろう。 細い線状のカットを長さを変えながら山形になるように連続させて施した「山形千本切子」のコップは、当時よく製造された人気商品であったようで類品を見る。しかし、本来切子で表現されるべきところを型吹きで表現したものが本品である。木型を用いたようで、ガラスには縦方向の揺らぎが見られる。型吹きであるが故に、通常カットで表現される文様の凹部分は凸状に表現されている。 当時は切子を施す専門工の人件費を削減した廉価普及品的製品であったであろうが、見た目や触感から凸状の文様であるとは気づき難く、完成度が高い。また、端正な切子による文様よりもガラスに揺らぎやムラが出る型吹きの方が、味わいがあり好ましい。
明治後期〜大正 日本M.S
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乳白青暈し置ランプ
三分平芯四ツ手の置きランプ。 置きランプとは台や机の上に置いて使用するべきランプという意味合いで、通常笠を用いず火屋のみのものを指す。 台から油壺にかけて乳白に青を暈した気泡の多いガラスを用いている。明治大正期のランプは数多く残っているが、仕上げが丁寧でバランスよく美しいものは少ない。 入手時から清掃、手入れを行い使用することができる状態である。 このランプを入手してから約1年後、このランプに合うラッキョウ形の替火屋を入手した。(三枚目の画像) 火屋の上半は磨りガラス加工されており口縁がヒダ状で青緑色のガラスで縁取りされている。 なかなかに洒落た火屋である。【2020.6.23追記】
明治後期〜大正 日本M.S
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梅に鶯文小皿
機械による型押し(プレス)技法で製作された皿である。宙吹きや型吹きの皿にくらべ、均一かつ大量に生産可能である型押し技法は明治末にはガラス器生産の主流となった。 型吹きのようにガラスの滑らかな美しさは少ないが、それでも現代のプレスによるガラス器と比べると随分不均一であり、面白さがある。模様も多種多様で、日本的な意匠もあれば西洋を模したもの、軍事色の強いものなど色々ある。
明治後期〜大正 日本M.S
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ノベルティコップ「金線サイダー」
1899年横浜の秋元巳之助が発売した金線サイダーのノベルティコップ。エナメル彩を用い《金線サイダー CHAMPAGNE CIDER 芳香馥郁風味佳良》の文字がある。ガラス質は黒味がかる。
日本 明治後期〜大正M.S
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型吹き 梅コップ
梅コップの名称は胴部に7つの凸部があり、梅の花の様に見えることに由来する。剣先コップ同様、当時の雑器で型吹きとプレスの二種が存在する。型には木型や金型など種類があり、このコップの表面にはは木型特有の木目や削り目が微細な凹凸となって現れている。
明治後期〜大正 日本M.S
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型吹き 剣先コップ
剣先コップの剣先とは、コップに施された意匠に由来する。型に入れてガラスを吹き込み成形する『型吹き』と、機械によるプレス成形の二種がある。当然機械によるプレスよりも、型吹きの方が不均一な仕上がりとなる。 当時は雑器で価格も安かったであろう、何の変哲も無い無色のコップであるが、現代のガラス製品には無い不均一さが『味』であり『魅力』である。 また、2枚目の画像の様にゆらぎのある印影の美しさも無色ガラスの魅力と言える。
明治後期〜大正 日本M.S