鉱物標本 オートゥナイト(Autunite)

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別名:燐灰ウラン石、Calco-uranite
産出地:Streuberg Quarry, Bergen, Vogtlandkreis, Sachsen, Germany

蛍光鉱物の中でも特に強力な蛍光性を示すことから認知度は高めであろうウランの鉱物。

フランスのAutun近郊のSaint Symphorienで採掘されたことに因んで1854年にHennry J. BrookeとWilliam H. Millerによって命名された。

熱水脈や花崗岩ペグマタイト中のウラン鉱物の酸化による二次鉱物として産出し、長方形または八角形の平板状の結晶として葉片状または鱗状のクラスターを形成する。その見た目が雲母に似ていることから燐銅ウラン石を含めてウラン雲母とも呼ばれる。元々は10~12水和物の黄緑色の鉱物であるが、空気中では徐々に脱水することで6~8水和物で黄色のメタオートゥナイトへと変化していく。

ウラン鉱物として放射性を有するために体への影響が気になるが、全国宝石学協会(株)のweb情報では国の安全性基準が0.11μSv/h(1時間辺りのシーベルト)に対してオートゥナイト表面で最大3.2μSv/h、10cm離れることで0.12~0.13μSv/hとなる測定結果が示されており、宝飾品としては論外だが鉱物標本としてケースに入れて飾る分には問題ない。

話は変わり、本標本が採掘されたザクセン州フォクトランドはドイツとチェコの国境地帯またがって存在するエルツ山地(クルスナホリ)の外れに位置する。ここでは紀元前2500年頃の青銅器時代にはすでに錫が採掘され、各地に交易されていた。1168年に銀が採掘されると16世紀頃まで銀の産地として、その後も鉛、鉄、コバルト、ビスマス、ウラン、ニッケル、石灰、カオリン、石炭等が採掘されてザクセンをヨーロッパ有数の鉱業地帯へと発展させた。陶磁器で有名な同じザクセン州マイセンも一帯で採掘されたカオリンやコバルトブルーの存在が大きく影響している。これら20世紀までヨーロッパの鉱業や治金技術の発展に大きく寄与してきた歴史から『エルツ山地鉱業地域』として2019年にユネスコ世界遺産に登録された。

この鉱物資源豊富なエルツ山地の起源は今から4~2億年前の古生代石炭紀頃に存在したローレンシア大陸とゴンドワナ大陸の衝突によるパンゲア大陸の形成過程で起こったバリスカン造山運動まで遡る。後にエルツ山地と呼ばれることになる地では、当時の大陸どうしの衝突による変成作用で地下深くにスレートや千枚岩が形成され、そこに花崗岩質ペグマタイトが貫入した地層が形成された。この硬くて脆い岩塊は古生代後期には侵食作用で地表へと露出していき、新生代第三紀の終わりには断層運動および火山活動によって巨大断層岩塊としてウランを含む鉱物資源の鉱脈と共に地表に現れ、現在のエルツ山地となった。

本標本は2019年、ミネラルマルシェで購入。UVによる蛍光は肉眼で強い黄緑色だが、カメラ撮影だと輝度を下げてなお強い蛍光色のため白くなってしまった。

*ウラン元素の起源について
→トーバーナイト(Torbernite)参照

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