- Mahaltaji Museum
- 2F 銅鉱物
- 鉱物標本 マラカイト(Malachite)
鉱物標本 マラカイト(Malachite)
別名:孔雀石、岩緑青
産地:Democratic Republic of the Congo
緑色の顔料として、そして宝飾品としても紀元前から利用されてきた銅の二次鉱物。銅の青錆(緑青)と同じ化合物である。名前の由来はゼニアオイ"μαλαχή"の葉の緑色に例えられて古代ローマの大プリニウスに記述された所まで遡る。仏頭状に産することの多い本鉱は研磨すると同心円状の孔雀の羽のようなな模様が現れるため、日本語では孔雀石と呼称される。
研磨品は紀元前2000年頃の古代エジプトで既にラピスラズリ(青)や紅玉髄(赤)などと共に装身具に用いられた。また、その防虫性からクレオパトラがアイシャドーとして利用していたエピソードも有名である。
また、緑色顔料としても古代から利用されてきたこの緑青だが、実は粉砕して粒度を細かくすると鮮やかさが失われ白っぽくなってしまう欠点が広く知られていた。そのため良品は水で何度もデカンテーションして粗めの粒度のものに揃える等の手間が必要であったそうだ。
よく緑青は猛毒だという迷信があるが、国内の大学や国の研究機関も調査しており、緑青そのものの毒性は他の金属と同程度(もちろん人体にはあまり良ない)という結論が得られている。迷信の理由は選鉱技術が未熟だった昔、銅ヒ酸塩鉱物の混入によってヒ素中毒が発生したためだとする説が有る。
本標本が採掘されたコンゴ民主共和国(DRC、旧ザイール)は東部国境地帯を大地溝帯に接しており、金、銀、銅、鉄、マンガン、コバルト、石炭、その他貴金属から放射性元素まであらゆる鉱物資源の産出量が世界トップレベルの資源大国である。これらは同時に紛争鉱物として国内の政情不安定化を招いたり、採掘されたウランが広島原爆に用いられたり等、人間社会に負の影響も与えてきたのだが。
閑話休題、大地溝帯という特殊な環境も相まってDRC南部には隣国のザンビアにまたがるカッパーベルトと呼ばれる広大な銅鉱山地帯が広がっている。このカッパーベルトの起源は今から38億~25億年前の太古代まで遡る。当時の海はまだ60~120℃と煮えたぎっており、陸地もほとんど存在ぜす、ようやく地殻がプレートとして別れ始めて原初の生命が細菌や古細菌等に分化し始める時期でもあった。カッパーベルトはそんな原初の地球にあった数少ない陸地の海岸線沿いに銅鉱物が堆積していったことで出来たらしい。DRCのマラカイト含む銅鉱物はそんなカッパーベルト産のものが多いのだが、本標本はDRC産としか記載されていないため実際にDRCの何処で採れたかは不明である。
2010年前後、科博にて購入。記憶が正しければ鉱物標本という形で私が初めて購入したものだったはず。